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天使、魔王に弓を放つ!

「それじゃあ、君の今後の振り方について概要を説明するね。」

突如、天使として生まれ変わった私はこれからまだ、会ったこともない主人公の補佐役を務めることになった。

正直、一生を終えて寝床に着いたところ、またすぐにおはようこんにちはしてるので、気持ちは若返ったといえど混乱はしている。


「君はキューピッドと言っても、万能な存在というわけじゃない!下界に着けば怪我もするし、ぱっと見じゃその辺に歩いてる人間となんら変わらない。君のいた地球でも天使は紛れていたんだからね?気づかなかったでしょ!」

ナナシ兼時の番人は少し誇らしげに言った。

「そもそも天使って人間に紛れる必要あるの?」

「あるも何も、実態がないときはサポートできないからね。霊体透き通る時の現象と同じで、同じ領界同志じゃないもの同士は触れることも、会話もできない。」

そういうと、ナナシは私の手をとり指の隙間にナナシの指を一本一本絡めて来た。

「僕とは、触れられるでしょ。」

なんとなく、天使とは生がない存在と思っていたから意外にも彼の暖かさに驚き、無意識に繋いだ手を開いたり握ったりを繰り返していた。しばらくして、正気になり硬直していると何故かニコニコしているナナシはするりと手を離した。

「だから実態のある状態で、主人公のお側で恋のお助けをして下さい。」

そう続けること数分、、。

彼が言ったことをまとめる。


〜天使の仕事〜

・主人公と同じ領界で過ごし、恋愛フラグをサポート。

・ピンチの時は、助けても助け過ぎない。

・天使の存在はバラしちゃだめ!絶対!

・天使の能力を行使する(天使レベルをあげないとスキルはもらえません)

・天使スキルは、主人公の恋愛フラグやサブミッションをクリアすることで獲得できる。

・また天使としての身分不相応な働きを禁ずる。

※ いざとなったら、力でものを言わせる(矢、その他)


などなど


頭を抱えている私をみて、ナナシはものは試しです!と雑なフォローをしてきた。どちらにせよ、天使としての経験がない私には、結局は状況判断の一言にすぎる。

わからないときは、もう主人公の判断か、難しそうな場合は私が助け舟を出す。

それでもわからない時は、その時考えればいい。

私はもともとそういう人間だった。そういうことにしておこう。

突然、天使にされたんだ。私から志願したわけじゃない。

私は考えることをやめた。



「では、少しだけ世界観を少しみてもらいたいので、主人公がおそらく進んでいく道をざっくり観こ、、ご案内します!」

今観光って言った?

全部を景色を見せると、今後の展開に大きな揺らぎが発生するらしく主人公、大舞台となる街、そして魔王の地をそれぞれ案内してくれるらしい。地球の時同様、指をパチンと鳴らすとそこは、中世のヨーロッパにも似た町で、その町一番大きな屋敷に彼はいた。

主人公はまだ幼く7〜8歳程度だったが、既に容姿は主人公らしさが溢れていた。

既に魔族からの襲撃を喰らい土地は荒れ果て、貧民街にいた主人公は、いわゆる奴隷のような形で屋敷に招かれた。そこでは、同じく働いていた使用人らの日常的な暴力により体はボロボロだった。そんな中でも一際美しい容貌はまさに主人公そのもの。彼の瞳は、烈火の如く未来に見据える目的しか見えていないようだった。

私はボロボロと涙を流しつつ、あまりの美しさにずっと眺めていた。早く助けてやりたい。


動きそうにない私を強引に引っ張り次は、大都市兼、主人公が学ぶ予定の大学校にやってきた。

先ほどの町も割と素敵で、広い土地だと思ったが、流石は大都市と言われるだけある。

先ほどとは、比べ物にならない建物の数、一軒一軒立ち並ぶ建物も大きく集合住宅なのか、それとも一軒家なのか疑うほどだ。街の外はいつまでも賑わっているように騒々しい。

「ここは、いろんな人が通る。別に特定の誰かをみてほしい訳じゃないからグルっとしたら次は魔界だね。」

きっと、この街にも将来主人公と結ばれる候補が何人もいるんだろうなと思うと、誰も彼もがそうに見えてくる。


街を一通りもはや観光したところで、最後に飛んだのはまさしく魔の世界。

さっきまで、市場やパレードのおような賑わいから一変し明らかに空気が澱んだ世界にきた。

天使の声は、天使同士にしか聞こえないがそれでもこの恐ろしいほどの静けさには、自然と口黙ってしまう。

着いた場合は魔界の中でも中心位置らしく、下に首を向けてもあまり建物はなさそうだ。ただ、禍々しく黒い雲の下にだけいかにも魔王様が住んでいるといわんばかりのご立派な城が建てられていた。


私がヒソヒソとナナシに話しかけると、彼は面白がってわざとらしく大声を上げた。

「怖がらなくても平気です!今の僕たちの存在は、視認できないんですから!」

そういうと、何おために存在するかわからないような、鋭利に突き出た山の先々を飛び回り、ひょいひょいとバク転を始めた。

私血相を変えて怯えている姿を見て、ケラケラと笑っていた時だった。


「何かいるのか」


「・・・・・」


突然、ナナシの背後が真っ黒に覆われた。


ひええええええ!!!!!

全身を覆い尽くす真っ黒な衣装に長い髪。垂れた前髪の隙間からは微かに瞳が感じられ、その視線はナナシのいる場所をしっかりと捉えていた。さっきまで人を小馬鹿にしていたのはどこへやら、唐突に起きた状態に流石に驚いたのか全く声が出ないという状態だ。ナナシの身長は多分170そこそこだと思うが、突如現れた者の存在感は凄まじくまるで赤子のように小さく見えた。

、、あれ、本当に小さくなってる?


恐怖のあまりか、なぜか幼体化したナナシは汗なのか涙なのか分からないほど滴らせながら口を開いた。

「これが、、いわゆる、魔王です、、。身長は190を超え、後に主人公と対等する予定の最強最悪の存在です。」

すごい!!この状況下でも、案内人としての役目を果たしてくれてる!ちょっと見直した!

でもごめんね!怖過ぎて、無理だ!!主人公やめとこ!!こんなの倒せないよ!!実態ある時に近づきたくない!!


恐怖のあまり気づいたら私は、にどこから出したかもわからない、弓を持ち魔王に向けて矢を放っていた。

トクンと魔王に当たった音と共に、、。


「「あ」」ナナシと私は一瞬で正気に戻った。


今私、何で攻撃した?

そもそも、天使に攻撃スキルなんて備わってるかな?

あれ?これやっちゃった?


今度は、私の汗が止まらない。

ちらりとナナシを見ると先ほどまでとはまた違うが顔つきで、今度は白目をむけていた。

やらかしたなと、一目で分かった。


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