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天使に任命されました。

私は、天使になったらしい。

先に言っておくと、容姿の話ではない。自分で言うのも悲しい話だが、これまで特別容姿を褒められた経験はない。いわゆる冴えない娘だったんだろう。

生前は、冴えない私と釣り合ったおそらく冴えなかった(愛してたよ)夫と生涯を共にした。子供も2人こさえ、サクサクと育ち冴えない夫婦には勿体無いくらい可愛い息子たちは立派に自立した。

老後は、定年退職した夫と2人で小高い山と湖が見える場所に家を建て、少し贅沢をした。そして旦那が先にいってから私も後を追うように一生の幕を閉じた。


はずなのだが、今先程閉じたはずの目は開き、傍にはおいおいと親族や知り合いたちが泣いている。

「生きてたみたい」と手を振ってみるが返事はない。

よく考えたら、足腰も痛くないし、ぶんぶんと振る手も軽い。

これは死んでんなー。と思った。

幽体離脱か?いや、淳風満帆だった気がするけど、未練を残したのか?ふむふむと少し考え込んでいると、初めて聞く声がした。


「人生お疲れ様でした。こちらの勝手ながら貴方は、抽選により天使として新たに生まれる事に決定いたしました。」

名前も名乗らない愚か者ナナシは、抽選で天使になったと告げてきた。

天使も意味がわからないが、抽選で神聖なものを選ぶどなた様か存じ上げない者はもっとヤバい。

おお、死んでから初めてヤバいって言った。初ヤバいだ。


「天使ってどう言うことでしょうか。」

とりあえず、自分の置かれた状況が分からなかったのでナナシに合わせて返事をした。

「天使は人々を幸せに導く存在です。」

幸せ、なんとも抽象的な表現に若干の苛立ちを示したが話が進まないと思いそのまま頷いた。

「幸せと言っても、基本的に人の心をこちらで誘導するのはあまり良いものではありません。もちろん、幸せに導くための目的なので、絶対禁止というわけではないですが。」

「結局、私は何をするんですか?」

簡潔に言うのが苦手なのか、ナナシは少し考え込んだあと眉を立たせ言った。

「つまり恋のキューピッドになって欲しいんです!」

恋のキューピッド。なんとも懐かしい響き。

この時代に恋のキューピッドなんて、あんまり聞かないんじゃないかな。

少々の羞恥心を感じながら、よくわからんが私は今から人の恋を応援するキューピッドになるんだと思った。

…というか、今お通夜の真っ最中なんですが?

「あのナナ…事情は半ば分かった気がします。とりあえずここだと気まずいのでどこか別の場所でその話をさせて下さい。」

今更、ハッと気づいたようにナナシはパチンと指を鳴らすとあたりは少し山吹色めいた雲以外何もない空間へ移動した。

凄い!私は少しナナシを見直した。

「では、詳細を少し。恋のキューピッドと言っても基本的には例の矢を射ることはしません。イレギュラーな事もありますが、基本はしません。万が一矢を射ってしまったからといって、必ずくっつくわけではありません。ただその場は、天使の責任を持って必ずくっつけらことが原則設けられます。」

随分と矢についての言及だけ多い。さっきは天使は幸せにする事だとか随分適当な言い方だったのに。

つまり、運命の相手は基本的に繋げられており天使は、繋げられるように陰からアシストするということだ。

「ちなみに、あなたが担当するところはココではありませんよ。」

ココと言うのはつまり?と聞くと「アクドルです。」と答えた。

アクドルってどこですか。

ポカンとしているとナナシは続けて「アクドルとは、貴方の生前生きていた世界のことです。まあ地球というべきかこの惑星太陽系というべきか。いわゆる別の世界で天使の役目を果たしてもらいます。」

なるほど、異世界ってやつか!!と、年の功とは大分かけ離れた発言を心の中でした。

アクドルというのはイマイチピンと来なかったが考えても仕方のないことはもう生前に置いていこう。

ナナシはクスッと笑い「貴方は、先程一生を終えたというのに、受け入れるのがとても早いですね。」と何か含み混じりのある言い方で、嬉しそうに言った。

私は、ナナシが言いたい事が理解できずにいた。

「気づいていないと思いますが、天使として命をあらたに生を受けているあなたの肉体は、10代のそれになっています。まあ、今後の行動を考えても、その方が動き回りやすいですからね。なので、知恵はそのまま引き継がれていますが、その他は肉体も精神力も若々しくなっております!」

なんというご都合主義だろう。天使だからと言ってやっていい事と悪いことの分別はつかないのか。

悶々としているとナナシは腕を胸の前で円を描くように回し始め、「これが今のあなたです」と鏡面のようなものを腕の内から作った。

まじまじと見た後、私は何も言わずに指示を待った。

再び笑顔を振りまいたナナシは「それでは、貴方の担当世界へ移動します。」と言うと今度は2度爪先で空を突いた。そして私の手を握り、浮いていた私たちの足元に光の陣が現れた。

陣と共に強風が立ち昇りあぎゃあと変な声を出しながら、吹き飛ばされそうな風圧をなんとか堪えていると陣と共に私たちはそこからまた姿を消した。


次に見えた景色は、着地に失敗してうつ伏せ状態で、緑草花が広がる草原だった。一見茶畑にでも放り込まれたのかと思っったが立ち上がった景色には、茶畑とは全く異なる光景が包んでいた。

「ここは地球で言うところのサルティファという星です。貴方の住んでいた世界と違い、空には龍などが飛び交い、魔法や魔王と言った存在がいる世界です。」

百聞は一見に如かず。こんなところで、使う言葉になると思わなかったが、いわゆる空想世界と思っていた世界が実際に目の前に広がると言うのは、自分が天使になったということよりよっぽど目を惹き美しかった。

「あなたには、これからこの星で主人公のサポートを行ってもらいます。」

「主人公・・・?」

私は主人公じゃ無かったのか。


「伝え忘れていましたが、私は天界では時の番を担っております。この世界では、後に魔界の王が世界を脅かす予定です。その際、魔王に立ち向かう青年こそ、あなたがサポートする主人公なのです。」

お決まりとはいえ、私は生前滅法冒険RPGが大好きだったので、とても興奮していた。

「でも、その流れだとどこかで素敵な子と出会えるんじゃないの?」

「ここに関しては難しいのです。青年の精神面に大きく影響が生じるので、魔王討伐が念頭にある中なので一人でも胸中を射止めることができれば上々なのです。」

「その言い方だと、主人公には複数の運命候補がいるってこと?」

時の番さんは、キョトンとした顔で答えた。

「何を言っているんです?主人公に、好意を寄せる人が今後どれだけいるか想像できないんですか?英雄の称号を与えられる人ですよ。もし討伐後、彼が複数の女性を求めれば国中の女性だって伴侶にできるでしょう。その中で一人を導く力も見極める力は天使にありません。あくまで支援が目的なので。」

天使っての必要性を欠く表現ではないのか。

「それに剣の道を極め、情欲に関心を示さず英雄譚の幕を下ろした人もいるんです。そうならないためにも、愛を持った主人公へ導いてほしいのです。」

確かにそれはありそうだなと少し納得した。しかし同時に、少しこの役目に懸念が生じた。

恋のキューピッドって、何となく”願い”から存在すると思っていた。人様の敷居で勝手にルートを引くってなんか気が引ける。

「幸せって、そういうことなのかな」

少し時の番は黙り込んだ後、少し口を開いた。

「天使の中にも色々な考えの者はいます。あなたは確かに恋のキューピッドとして誕生したけど、彼が進みたいと思った道へ進ませることだってあなたには出来る。そんなに嫌がらないで下さい。」

さっきまで、葬式の最中ですらヘラヘラしていた時の番さんは、急にしんみりしている。

「勝手に天使とかにしてるんですから、私にどうこう言われて悲しまないで下さい!一応この若さは気に入ってるんですから、役目は、がんばってみますよ。」

そういうと、またヘラァとして元気を取り戻したようだ。

多分、私の方が年齢は低いよね・・・?と内心感じながらも、まるで少年のような様相に少し息子達を重ねてしまった。

「それでは!気合いを入れ直して、概要を説明します!」

いよいよ天使の活動が始まる。





ここまで読んでいただきありがとうございます!

少しでもご興味いただけたら、評価いただけると励みになります!

また、誤字や間違った表現などなど知恵が足りない部分もあるかと思いますので、教えていただけると嬉しいです!

今後も、う○この隙間時間や鼻くそほじるついででもいいので読んでくれると嬉しいな!!

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