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7-6

 一対一で戦うはずない。か。


 単身でとはいえ攻めているのは出城なのだ。卑怯なんていうほど私も間抜けじゃないし、この事態を想定できないほどバカでもない。

 駆け抜けた事で多少は息があがっていたけれど、ようやく剣で戦える状況になり、今さら逃げる事も。


 加えて城門という侵入を制限する為に作られた場所は、後ろ、左右、上からの攻撃がない。

 だからこそ敵兵も城門の上に立つ男の攻撃をかわして私に対して出てきたところで戦いたいのかもしれない。城門上の男の攻撃をかわした事が、相手に警戒心を与えたらしくその迷いで立ち止まる姿こそ私の付け入れる隙であった。


「見つけた」


 城門を潜り、兵を見渡しながら階段の位置を見つけるなり走りだし、斬りかかる敵の攻撃も受け流して階段を登る。

 そこには城門上で待つ男がおり、予想通り戦いに巻き込まれる事を恐れたらしい敵兵は追いかけてこなかった。


「愚かな。配下が背後を突くとは思わなかった」

「その連携ができないからこそあなたは一人で攻撃し、ココに一人で居るのでしょ」

「なぁ、一緒に戦わないか。きっと良いパートナーになれる」

「なら貴方が降伏しなさい」

「…………」


 無言で私に笑みを見せたのは、図星からなのか裏をかくつもりなのか。

 初めて出会う相手の考えなどわかるはずもなく、ましてや『世界を破滅させる悪魔の女を倒すため』になぜココにいるかもわからない。


 ただ、私の役目は愚者を演じ、リナ衛長の目的を果たすだけ。

 それは、おそらく目の前のこの男を倒す事で達成される。


 目前となった勝利の予感を確かなものにしようと身構え、その笑みに反して震えだす彼の不意打ちを警戒しつつ隙を見ていたときだった。


「オートスキル発動」

「え?」


 直後、彼の両手両足、そして胴から頭に至るまでの全身が濃い紫色の霧に包まみ、彼の握る剣までも包み込む。


 ……嫌な予感がする。


 直感的に変化が終わる前に倒すべきと判断し走りだす。

 けれども、その判断は遅すぎた。


「コロス」


 先ほどまでとは違う寒気を感じるほどの殺気。その一言と共に動いたキレ良く上から振り下ろされた初撃をかわし、迷わず濃い紫色に包まれた男を斬り。


 カチンッ!


「なっ!?」


 隙を突いた完璧と思えた全体重をかけた一撃は、包み込み柔らかく動く何かが鉄板のように防ぎ、平然と私を振り払って再び一撃を加えてきた。


「っ!?」


 寸でかわして距離をとる。


 …………クリス並のセンスのない鎧。


 そう思えるほどに全身を濃い紫色で身を包んで剣までも同色にした姿は異様であり、その姿からは禍々しい気配が立ち込め、血が逆流するような溢れる苛立ちの感情にかき乱されそうな感覚に戸惑う。

 しかも異様すぎる姿を笑えないほどに鎧は鉄壁であり、振るわれた剣の初撃、二撃目は城門に亀裂が生じる跡をつけている。

 

「失敗した」


 その私を殺す一点に集中した攻撃は交渉決裂を後悔するには十分すぎるものであった。

 そして、その後悔すらも見透かすように今度は向こうから間合いを詰めて斬りかかってきた。


 一撃、二撃。


 敵の攻撃をかわし、確かに斬る。けれども感情が乱れて集中は続かず、与えた一撃もすべて鎧に防がれる。

 そして、かわしきなかった三撃目を受け流しきれず弾きとばされた。


「……つっ」


 痛い。などと認識する余裕もないまま上からの一撃を横に転がって避ける。

 その直後、五度目の破壊を受けた事で崩れ出す城門。


 無茶苦茶だ!


 なんて心の叫びに何の意味もなく、慌てて崩れる城門から離れ、階段へと飛び出る。

 その際、待ち構えていた敵兵とも鉢合わせとなったものの、みんなが巻き込まれた男の方に注目した。


 そして、


 崩れ落ちた城門から何事もなかったかのように立ち上がる濃い紫色の鎧姿はまるで無敵であり、私では倒せない相手である事を悟らせ恐怖を感じさせるには十分すぎるものであった。


時間切れ。

修正は後日。後半戦:前半

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