第8話 従属契約の詳細
さらに俺は《カード》の《従属契約》の部分をタップする。
そうすればより詳しい説明が望める……こともあるからだ。
全く何もわからない場合もあるが、それはそれだ。
やってみない理由にはならない。
果たして……。
「おっ? 一応説明が出てきた……何々、従属契約とは……」
そこにはこのように記載してあった。
従属契約:ノアが庇護下に入れる意思を示し、ノアの庇護下に入る意思が示された場合に成立する諾成契約。解除権はノアにのみ与えられ、庇護下に入ったものはノアに従属する……
「……なんかややこしい説明だな。まぁ……俺が守るって思って相手も俺に守られたいって思ったらそれで結ばれる契約ってことか? 俺だけが解除できるっていうのは、なんか不公平な気がするが……でも、テイマー系のスキルでもそれは同じだし、おかしくはない、のか……」
《聖王》スキルから派生した技能・スキルであるところの《従属契約》であるが、このスキル自体はテイマー系のスキルでも見られると言われる《従魔契約》とほとんど同じ内容と思っていいらしいとこれで分かる。
ただ、以前見たことのあるモンスターテイマーたちの行う《従魔契約》はもっと派手というか、複雑な工程があったというか……それを使うと、相手の魔物との間に魔力パスが繋がれ、魔物に《従魔》であることをはっきりと示す紋章が刻まれるはずだ。
けれど俺の庇護下に入ったらしい魔猫(幼)についてはそのような紋章はない……ような気がする。
見えないだけか?
「おい、ちょっとお前こっち来い」
そう言うと、少し離れた位置でゴロゴロと転がっていた子猫が素直にこっちにトコトコとやってきたので、俺は子猫を抱き上げる。
そしてひっくり返したりしながら身体中を観察してみた。
体毛で肌自体がはっきり見えないため、見にくいだけかと思ってよくよく毛並みを整えつつ確認したりもしてみたのだが……。
「……やっぱりないな。まぁ別に紋章があってもなくてもどうでもいいっちゃいいんだが……」
街などに入るとき、モンスターテイマーに連れられている魔物はしっかり紋章が刻まれているかどうか確認されるので、もし今後俺が街などに入る時、この子猫を連れて行けないと言うことになってしまうのだが……。
「にゃあ?」
首を傾げる猫。
かわいいが……いや、誰もこいつを見て魔物だ、とはならないか?
「普通に猫だと言い張ってれば、ペット扱いで入れるかな。別に魔物だと判別する魔導具とかがあるわけじゃないし」
「にゃっ」
「それもこれも大きさが普通の猫サイズの時までだぞ。魔猫ってやつは、成長すると人の背丈を優に超えてくるって言うからな……お前もどこまで大きくなるのやら」
そしてその時、俺に従ってくれるのかどうか。
と言うのも、一般的な話だが、こういったテイマー系のスキルというのは、その本人の技能よりも高位の魔物を従えることは出来ないからだ。
モンスターテイマーも色々と工夫して、強力な魔物を従えるために幼体から竜を育ててテイムしておけば、大人になっても従ってくれるのではないか、とかそういうことを歴史的にやってきたようだが、やはり本人のスキルを大きく超える強大な魔物というのは《従魔契約》の頸木を破壊して逃げてしまうようだ。
だからテイマー系の根源技能を持つ者たちは、自らの技能を鍛え続ける。
自分の魔物が、技能で抑えられる以上に強くなり、自分の元を去っていかないように。
去っていったからと言って全ての関係が精算される、というわけでもないらしいが、やはりずっと一緒にいたいだろうからな。従魔とは。
「……俺も頑張らないとならなそうだな」
「にゃ?」
「おっと、それよりも《従属契約》にはまだ先があったな……」
そう、基本的な部分の説明は《従魔契約》などと同じようだったが、それに続いてまだ説明があったのだ。
俺はそれを読む。
「ええと……」
従属契約:ノアが庇護下に入れる意思を示し、ノアの庇護下に入る意思が示された場合に成立する諾成契約。解除権はノアにのみ与えられ、庇護下に入ったものはノアに従属する。また、ノアは庇護下に入った存在の持つ《技能》を借り受けることが出来る。借り受けた技能は使い続けることにより、ノア本人の技能になる。その場合、元となった技能は失われない。
「……なんだこれ!?」
聞いたことのない話だった。
別のものの技能を借り受ける、とは……?
俺にこの魔猫(幼)の技能が借りられるということか?
そもそもどうやって………。
やり方がわからないが……とりあえず《カード》を弄ってみる。
すると、
従属契約:魔猫(幼)
の、魔猫(幼)の部分をタップすることができる事に気づく。
やってみると、
「おぉ、これはこの猫のステータスか……」
名前:
性別:雌
種族:魔猫
称号:ノアのペット
根源技能:《魔猫2》
派生技能:《火炎吐息2》
一般技能:《風属性魔術3》《水属性魔術2》《猫闘術3》
「……おい、お前実は俺より強いのか?」
「にゃ?」
可愛らしく首を傾げる魔猫であったが、派生技能も一般技能も俺に匹敵する熟練度を持っている。
しかも属性魔術に関しては俺の持っていない水属性魔術まで……。
これさえ使いこなせれば、水の心配はもういらなくなる。
加えて風属性魔術だが、先ほどゴキブリを切り裂いた何か、あれはこの子猫が使った風属性の《刃系》の魔術だったのではないだろうか。
一瞬のことだったが、僅かながらに魔力の動きは感じたし……俺は使えないけどな。
やはり、熟練度がこっちの方が高いから見抜けなかったということか……子猫より弱いのか俺。
悲しくなるな。
いや、子猫でもこれくらいでなければ生きていけないこの煉獄の森の恐ろしさを再確認すべきか。
それにしてもこんな脅威の猫をいじめていたあのゴブリンたち、実はすごい奴らだったのだろうか?
必死だったが、俺にも普通に倒せたわけだし、通常のゴブリンと変わった部分は特になかったんだけどな……。
まぁ、それはいいか。
「それより、お前、名前ないのか。当たり前っちゃ当たり前だが……いつまでも子猫とか魔猫とか言い続けるのもあれだしな……名前、欲しいか?」
話しかけてもわかってるのかわかってないのか謎だが、俺の言葉に魔猫は、
「にゃっにゃっ!」
と前足を何かを欲しがるようにシャカシャカ動かしたので、多分同意を示したのだろう、と思うことにする。
「よし、いいだろう。俺が何か考えてやるからな……」
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