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第75話 髑髏王

 そこに立っていたのは強力な魔物として知られている一体。

 髑髏王スケルトンキングそのものだった。

 通常のスケルトンとは異なり、その体を構成する骨は闇色で彩られ、くらいオーラを放っている。

 全てを飲み込みそうなその眼窩には、地獄を象徴するかのような青白い業火が燃え盛るように光り輝いており、その手には名剣と思しき武器すらも握られていた。

 また、体色とよく似た、重厚な黒鉄の鎧をも纏っていて、頭部には鋭く尖った刃のような角を象った飾りも見える。

 どう見ても通常の髑髏王とは異なる存在感。

 あれは、奴の切り札なのだろうということははっきりと分かった。

 

「二人とも、下がってくれ。あいつはヤバい……」


 俺がカタリナとグレッグを庇って前に立つが、ふと、向こう……魔術師組合長グライデルが何かに気づいたように声をかけてきた。


「……おや、私を嗅ぎ回るくだらないネズミかと思っていたのだが……これはこれは。トラン侯爵家の御令嬢ではありませんか。こんな何もない廃村で、何をしていらっしゃるのですか?」


 いっそ慇懃無礼が形をとったような声がけに、カタリナは怒気を立ち上らせかけたが、グレッグがその肩を軽く叩き落ち着くように伝える。

 そして、冷静さをわずかに取り戻したカタリナは、グライデルに言った。


「それはこちらの台詞ですわ、グライデル組合長。貴方のような方が、それこそこんなところへ来る用事など、何もないはず。何か後ろ暗いことでもありまして?」


 これを聴きながら、俺はさすが貴族令嬢だな、と思った。

 というのは、カタリナからはここまで、オラクルム王国の貴族令嬢たちのような嫌味で遠回しな、いわゆる貴族令嬢らしさを一切感じていなかった。

 けれど、そんな彼女でもそのような言い方ができるのだな、とここで分かったからだ。

 これは別に軽蔑したとか馬鹿にしてるわけじゃなく、演技としてそれが出来るというのは大事だからな。

 貴族社会では、虚勢を張れない者というのは叩き落とされやすい。

 カタリナにはそんな空気感があったが、どうやら余計な心配のようだったからだ。

 そんなカタリナに、グライデルはなお、穏やかな態度を崩さずに笑いかけ、


「まさかまさか。私は参事会で貴女様に聞かされた、この廃村での異変というのを自分の目で確かめにやってきただけ、ですよ。そうしたら、何か妙な気配が致しましたのでね……」


 そう言う。

 これにカタリナは頷き、


「……そう。そういうことなら、いいの。では、私たちには特段話はなさそうだから、これで失礼するわね」


 と意外なことを言った。

 だが、確かに特段戦わずにこの場から去れるのならその方がいいかもしれない。

 こうやって観察していたことがすでに露見しているのだから、ここは一旦立て直すのだ。

 そんな意図を理解してるのかしてないのかは謎だが、グライデルは恭しい様子で返答する。


「さようですか。どうぞどうぞ、私はもう少し、こちらで調査をして参りますので……」


 カタリナはそれに頷き、


「では、失礼することにするわ……グレッグ、それにノアたちも行くわよ」


 そう言って踵を返し、歩き出そうとした。

 けれど。


「……あぁ、でも、こいつを見られてしまいましたからね。やっぱり無しにしましょう。ここで死んでもらった方がいい」


 そんな声がグライデルの口から吐き出され、そして彼の横に立っていた髑髏王の纏う空気感が明確に変わった。

 先ほどまでは強大な威圧感があるだけだったが、それが今や指向性を持ち、俺たちに対して殺気として放たれたのだ。

 

 ーーガギィン!


 という音ともに、強力な衝撃が俺の手元に響く。

 目の前には、一瞬で距離を詰めてきた髑髏王が、俺に向かって剣を振り下ろす格好でいる。

 俺はそれを自らの剣で受けている状態だ。

 アトとの訓練がどうやらしっかり生きてくれたようだ。

 アトはあれだけ俺に忠誠を誓っているようでいながら、訓練の時はしっかりと殺気をぶつけてくる物騒な奴だからな。

 まぁ、もちろんそうでなければ訓練にならないからだろうが。

 その経験が今、役立っている。

 これだけの殺気をぶつけられれば、以前の俺だったら腰を抜かしていただろうから。

 けれど。


「今の俺ならっ!」


 ブンッ!


 と思い切り剣を振り切って、髑髏王を振り払う。

 かなり重いが、それでも対抗できないほどではなさそうだ。

 それが分かったので俺はさらに冷静になって、剣を構えた。

 それから、


「キャス、マタザ、リベル! やるぞ!」

 

 みんなに声をかけて髑髏王を囲んだ。

 なんとかやれそうなのは確かだけれども、一人で倒すのは、やはり厳しいところがある。

 しかし、四人でかかるなら……。

 そう思ってのことだった。

 けれど。


「私が魔術師であることをお忘れでは?」


 そう言って、髑髏王の後方に魔力が集約され、そこから巨大な火弾が放たれる。

 火属性魔術、《大火球》だ。

 止まっていてはあれに命中してしまうため、俺たちは仕方なく下がる。

 地面に命中し、炎を周囲に撒き散らすその様は、威力を物語っている。


 魔術師組合長と、髑髏王。

 忌々しいことに、後衛と前衛として、かなりバランスがいい組み合わせなのかもしれなかった。

 しかし俺たちは負けられない。

 

「……絶対に、倒す」


 そう心に決めて、再度俺たちは髑髏王に、そして魔術師組合長に向かっていく。


 

読んでいただきありがとうございます!

なんと6万ptに届きました!

皆さんのお陰です!

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できれば下の☆☆☆☆☆を全て★★★★★にしていただければ感無量です!

ブクマ・感想・評価、全てお待ちしておりますのでよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新ありがとうございます。 [一言] 経験値のくせに生意気な!※システム的に違うっぽいが
[良い点] 面白かったです! これからも頑張ってください!
[良い点] 緊迫の展開。 悪役が直接現れて主人公と戦う場面は、丘野先生の作品ではかなり久しぶりですね。 期待しています。
2021/07/08 18:12 退会済み
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