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第74話 覗き見

「……にゃにゃ」


 談笑していると、キャスがふと顔をあげ、耳をピクピクさせ出した。

 そして一つの方向に視線を向け、警戒をしだす。

 その意味合いを、俺が分からないはずもなかった。


「おい、どうやら来たっぽいぞ。どうする?」


 とさりとさり、と人が近づいてくる音がする。

 比較的落ち着いた足音で、急いでいる気配はなかった。

 おそらくは目的の人物に違いない、とそれで察する。

 俺の質問に、カタリナとグレッグの二人はハッとしてから答える。


「まずは様子見をしましょう。ここに来た、それは事実だけれど、それこそただ確認しに来ただけだという話で終わってしまうでしょうから」


 すぐに捕まえましょう!

 とか言いかねないな、と危惧していたが、思っていたよりカタリナはずっと冷静なようだ。

 そんな彼女の答えに満足したようにグレッグも頷いて言う。


「その方がいいでしょうな……何か決定的な現場を押さえなければ、わざわざ来た意味もありませぬ」


 俺も納得し、そのために必要なことをしていく。


「いいだろう。じゃあ、結界はこのまま維持しておく。一応、隠匿系の技能も使っておくか……焚き火も消して、と」


 ぱっぱと色々なことを済ませる俺にカタリナは呆れたような視線を向ける。


「……ノアは本当に一人でなんでもできるのね」


「そういうわけでもない。足元にも及ばないような人が、この世界には一杯いるだろうしな」


 特に、教会には。 

 アトなんてどうあっても今の俺では及ばない。

 流石に聖女クラスと比べるのは問題だろうが、アトに及ばないまでも、近い力を持つような者を教会はそれなりに抱えているだろう。

 それに、冒険者にだって俺より強いやつは普通にいるはずだ。

 もちろん、ミドローグにも。

 しかしカタリナは胡乱な目つきで、


「そうとは思えないんだけど」


 そう言ってくる。俺はそんな彼女に言う。


「いるさ……ミドローグが田舎なだけだ。そのミドローグだって、俺より強いやつなんて普通にいるだろう」


 カタリナの周囲であまり見ないような気がするのは、護衛の騎士たちなどは彼女が父親から与えられたもので、実際のところは従騎士クラスの者が多かったからだ。

 また、冒険者などにしても、ミドローグに強い冒険者は居着きにくい。

 冒険者的にはあまり旨みのない土地柄だからな。

 ちらっとくることがあるくらいで、大半の冒険者はまぁ、強くて中堅どころ、と言ったところだろう。

 フレスコについては相当強いだろうが、せいぜいそれくらいだな。

 そんなことを俺が考えているのを分かっているかどうかは謎だが、カタリナは一応、と言った様子で、


「そうかもしれないけど……」


 そう言った。

 これ以上この話を続けても仕方がないし、人が近づいてくる。

 だから俺は話を切るべく、言う。


「ほら、近づいてくるぞ。口を閉じろ。結界でこっちの音も光も漏れないが、奴は魔術師だ。魔術自体に気付く可能性は十分ある。こっちに近づいてこない限りは大丈夫と思うが……過信はできない」


「あっ、そ、そうね……グライデル・ボー、やっぱり……」


「魔術師組合長で間違いない、か?」


「ええ、魔術師のよく身につけるローブと杖姿だけど、ぎらついた顔立ちに、身体中につけられた趣味の悪そうな宝飾品類、見間違いようがないわ」


 ひどい説明だが、まさに近づいてきているのはそのような人物で間違いなかった。

 ただし、俺の評価はカタリナが出したものとは異なるだろう。

 俺はそれを口にする。


「……確かに一見趣味が悪そうには見えるが、まずいな。あれらは全部魔道具だぞ。相当に用心深いやつのようだ」


「えっ? そうなの……でもそんな気配なんて」


「魔道具だってなんだって、気配くらい隠す技法はたくさんあるさ。俺たちの存在だって向こうにはまだ伝わっていないんだ。魔道具にだって、そういうことは出来る。やり方さえ分かっているのならな」


 それが分からない奴を腕が悪い、と言うのだ。

 あいつは腕のいい奴だと言うわけだな。


「……用心しないとならないってわけね」


 何かを察したカタリナがそう言ったので、俺は頷いて同意を示し、それから注目を魔術師組合長、グライデルの方へと戻した。


「もちろん……おっ、何かするみたいだぞ」


 ******


「……やはり、スケルトンは全て倒されていました。ええ、成長しきる前に発見されてしまったのがだいぶ痛かったようです……」


 グライデルが周囲を観察しながらそんなことを言っている。

 その気味悪げな様子を見ながら、カタリナが言う。


「……ぶつぶつと何か言っているわ。独り言、かしら?」


 そう取るのも仕方がないだろうが、俺はやんわりと否定する。


「いや……おそらく、遠距離通信系の魔道具を使っているのだろうさ。迷宮産出品の中でも滅多に出ないものだし、回数制限があるのが大半なんだが、惜しげもなく使うとは。いや、それだけ重要な相手と話しているのか……?」


 俺の推測が当たっているのか、言葉の内容はまさにそれを裏付けるようなものである。


「……いえ、それについては問題はありません。すでに目星はつけていますので。幸い、ここで戦いのあった影響で、怨念も集まっております。うまく使えば、さほどの苦労はないかと。ご迷惑はおかけしません。それどころか……良いご報告が出来るかもしれませぬ」


「一体なんの話を……っ!? まずい!」


 話の進み方に途中で違和感を感じた。

 しかし最後の一言を口にすると同時に、グライデルの注目がこちらに向いたのを理解する。

 その時には遅かった。


「さて、それでは狩りの時間と行こうか? 《我が名に従い、契約の真価を示せ。悪霊よ、成れーー髑髏王スケルトンキング現出!》」


 呪文と共に、魔力が集約する。

 奴は俺たちの存在に気づいていたのだ。

 やられた、とは思ったが、こうなったらこっちもやるしかない。

 それだけだった。

読んでいただきありがとうございます!

なんと6万ptに届きました!

皆さんのお陰です!

次は目指せ7万pt!

できれば下の☆☆☆☆☆を全て★★★★★にしていただければ感無量です!

ブクマ・感想・評価、全てお待ちしておりますのでよろしくお願いします。

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[良い点] 更新ありがとうございます。 [一言] ヒャッハー!お前ボスだろ!?首置いてけ!
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