第68話 殲滅
数が多い、が、やってやれない相手ではないな。
スケルトンに剣を振るいつつ、俺はそう思う。
カタカタと動く、存在自体が奇妙な不死者、その最も低位なもの。
その動力源がどこにあるのかまず気になってくるが、それは凝った魔力であり、それが彼らの体内……頭蓋骨の中とか、体の中心部などに魔石となって存在している。
だから倒すためにはその部分を攻撃すればいい。
ただし、そう簡単ではないことは、スケルトンたちの動きを見れば察せられる。
不死者は死体などを元に発生することが多く、そのために、生前その死体が何を生業としていたか、で不死者になった後の能力なども影響されてくるからだ。
例えば、生前戦士だったものはそのように戦えることが少なくないし、魔術師だった場合は、魔術が扱えることもある。
まぁ、それでも、強力なものである場合には、ただのスケルトンではなく、それよりも高位のスケルトンナイトとか、スケルトンソーサラーとかになっているものなので、ノーマルスケルトンである時点でその力のほどは知れてはいる。
「……ハァッ!」
俺の剣が、三体目のスケルトンの頭部を叩き割った時、周囲を見ればすでにスケルトンたちの数は半分程度に減っていた。
キャスとマタザ、それにリベルたちも危なげなく戦えていることは先ほどから確認している。
キャスの戦い方には全く危険なところがなく、自らを魔力障壁で守りつつ、遠距離から風魔術を放ち続けるという、得意とするやり方だった。
スケルトンは機動力に問題があるというか、ノーマルスケルトンの動きは遅い。
それはその体が骨と魔力だけで構成されていて、ノーマル程度の魔力量では大した強化も自らにかけられないからである。
それでも腕力には人の頭を叩き割れるだけの力が割り振られているから、そうそう馬鹿にもできない。
こいつらに殺される新人冒険者というのは毎年、結構な数に上るのだとは、フレスコの言葉だ。
そして、そんな新人冒険者たちの死体こそが、誰にも弔われることなく放置されることによって、次のスケルトンになっていく……。
ある種の完結した連環がここにはあるが、だいぶ悲しいというか、そんなものはない方がいい。
少なくとも、この廃村については全てのスケルトンを排除してやる、そう思って俺はさらに剣を握る手に力を入れたのだった……。
******
「……これで最後の一体か」
七体目になるスケルトンを倒す。
先に足を潰せたので独り言を呟く余裕があった。
頭を叩き割ると、暗く輝いていた眼窩は空っぽになり、不死者、スケルトンは、ただの骨へと成り下がった。
魔力による強化で硬化していただろう表面もざらついた、風化しかけている骨へと変わる。
それを見て思ったのは、やはりこれは人の死体がスケルトン化したものだろうな、ということだった。
「にゃっ?」
周囲に敵の気配がなくなったので、キャスが定位置、つまりは俺の肩の上へと乗ってくる。
彼女の聞きたいのは、俺が今考えていたことだろう。
「なぜこれが人の死体だったと分かるかって? 簡単なことだ。不死者には、大きく分けて、魔力の凝りのよってのみ発生する純粋なものと、生き物の死体などに魔力が集約し、そこに魔石ができて発生するもののがあるんだが、後者の方はな、基本的に倒しても元になった死体が残ることが多いんだ。それも、不死者になる前の、風化した状態で」
「わう、わふ……?(それでは、純粋なものはどうなるのです?)」
俺がまだ説明していなかった部分について、リベルが気になったのか、そう尋ねる。
「あぁ、そっちも物理的な体自体は残ることもあるんだが……低位なものは、魔石だけ残して消えてしまうことが多いんだよ。特にスケルトンくらいだと、骨もその場で完全に風化したように砂か塵になって……終わりさ。迷宮の魔物に近いんだよな」
迷宮の魔物は、倒すと特定の素材や魔石だけ残して消えてしまうことで知られる。
だから迷宮の魔物は生きていない、この世に存在していない、そう言われることもある。
これもまた教会の主張だが、まぁ、これについてはいくら嫌いな教会であっても納得できる部分もあった。
実際、迷宮の外にいる魔物と、迷宮の中にいる魔物を比べてみると、違いが目につく部分が多いからだ。
外の魔物はなんというか、確かに生きているのだ。
例えば、外のゴブリンは人のように動き、ものを考えている。
しっかりとした戦略を自分で考えて、人を罠にかけたりもする。
しかし、迷宮内部のそれは……まるで道具のようというか。
連携を張ってきたりもしないわけではないのだが、初めから教え込まれた動きを、繰り返しているだけではないか。
そんな風に思ってしまうこともあるくらいのものなのだ。
あれは生きていない、道具だ、迷宮の。
そう言われると納得できる所以だな。
教会を信じるなんて、極めて癪だから、まぁ、間違いとは言い切れないだろう、くらいに思っておくが。
「わふ……わふわふ(そうなのですか……では、こちらのスケルトンたちは、この村の住人だったということでしょうか?)」
リベルが、つまりはそれらが不死者になったのか、という意味で尋ねてきた。
普通に考えればそうなる。
実際、村が滅びてスケルトンの巣窟になる場合は、そういうことが多い。
けれど……。
「いや、この村は廃村になったのはだいぶ前だ。けど、ここのスケルトンたちの被害が顕在化し始めたのは最近なんだよな。だからそう言い切るのは……」
難しい。
魔力の環境が変わって、元々問題がなかったところだったのが、最近スケルトンが発生し始めた、ということも考えられるが……。
断定はやはりできないな。
「ま、考えるのは後にして、まずは魔石を集めようか。これも金になるからさ」
俺がそうみんなに指示すると、リベルとマタザは、
「わふ!(はい!)」
「わふ!(承知!)」
と返事をして動き出した。
キャスはやる気がないらしく、俺の肩から動かない。
「……お前は。まぁ、でも、拾ったりは難しいから仕方ないか……」
「にゃっ」
その通り、といいたげだが、魔力障壁とか結界術、それに他の技能を使えばそれくらいの作業ができることは知っている。
ただ甘やかしているだけだが、急いでいるわけでもない。
別にいいか、と思うことにしたのだった。
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