第63話 カタリナの評価
「……さて、これで最後だな」
そう言ってフレスコが渡してきた《カード》、その最後の一枚は俺のものだった。
コボルト達のものはもうすでに全員分作ってもらったし、キャスのものも《従魔》用のものを作ってもらっている。
そういう種類のものもあるのだ。
記載されている内容は、キャスのものについても《従魔契約》からたぐれるものとはそこそこ変わっている。
まず種族なのだが、これについてはいわゆる魔猫だと問題になる可能性があるため、魔猫と非常に似ているものの、別種として明確に区別されている亜魔猫という種族にしている。
こちらは竜と亜竜くらい違っていると言われていて、魔猫は成長すればいずれはかなり強力な魔物となるが、亜魔猫はそこまでではない。
ペットとして飼っている限りは、それこそ一般家庭でも問題なく御せる程度でしかなく、危険性は高くないとみなされる。
技能に関しては隠しようがないが、これについてもフレスコが見ないようにしてくれたので特に問題は生じなかった。
勿論、称号については馬鹿正直に報告などせず、空欄となっている。
ちなみにキャスの《カード》は彼女自身が持ってはおけないので、俺が預かっている。
他のみんなには普通に自分で持ってもらっているな。
管理が若干不安な気もするが、持ち物の整理整頓についてもアトから叩き込まれているから多分大丈夫だろう。
それで、俺の《カード》の記載内容だが、
名前:ノア
種族:普人族
称号:
根源技能:《剣士5》《大剣士3》
派生技能:《斬撃2》……《飛舞剣1》……
一般技能:《剣術4》《風属性魔術3》《火属性魔術3》……
そんな感じだった。
これに俺は少し驚く。
どうしてか。
見れば分かるだろう。
俺の生命線、根源技能がそこには表示されていないからだ。
《聖王》は一体どこにいった!?
そう思って急いで懐に持っていた教会製の《カード》を確認してみると、そこにはしっかりと《聖王》の記載があった。
それで俺はやっとほっとするが、フレスコから見たらおかしな挙動だったのだろう。
「何か意外なことでもあったか?」
教会製の《カード》を見るところは見られないように気をつけて懐でちらっと見ただけなのでそれは気付かれていないはずだ。
だから俺は言い訳に、
「いえ……大したことじゃありませんよ。ただ、少し技能が成長してたので、少し驚いて」
そう言った。
言い訳とは言っても、別にこれは嘘でもなんでもない。
実際、いくつかの技能は以前確認した時より伸びているようだった。
斬撃なんかはこないだまで1だったしな。
剣術はかろうじて4あったのは見たが、属性魔術系が軒並み3に届いているのは地味に嬉しい。
これだけ使えれば、結構な相手であっても十分に通用するはずだからだ。
《煉獄の森》の魔物とか相手になってくるとまた話は違うけれど。
実際、キャスなんかは俺よりも属性魔術系が強いしな。
風属性なんて、4もある。
流石にそこからはだいぶ上がりにくくなるはずだが、キャスの才能というか、成長期はまだまだ続いているようだから……せめて引き離されないように頑張っていかなければならない。
「そうか? まぁ《カード》を持ってなきゃ、技能がいくらかなんてそうそう見る機会もねぇだろうしな。なくしたのかどうかは知らんが……」
このフレスコの言い方は、多分持ってるんだろうがそこんところは無視しておいてやる、という意味合いだろう。
まぁ、俺のようなのがわざわざ身分証が欲しい、なんて貴族に頼んでいるのだから、元のやつは使えない、もしくは使いにくい状況にある、というのは簡単に推測できることだ。
その上で協力してくれているのだろうし、わからないわけもなかった。
さっき俺が教会製の《カード》を確認したこともこの様子なら気づいているのだろうな。
その後に成長してる、とか言ってしまったし、尚のこと。
ま、無視してくれるつもりなら俺も同じように振る舞うしかないか。
「これからは逐一確認できますし、他人に身分証明もしやすくなります。本当にありがとうございました」
「いや、構わねぇよ。こっちとしてもトラン侯爵家に貸しができたしな」
「どちらかというと、カタリナ様個人に、ではないかと思いますが……?」
トラン侯爵家の人間であるのは間違いない。
ただ、この街において、カタリナは侯爵家本家からの助力を強力に得られる立場ではない。
だからこそ、俺たちに身分証を、と考えた時、こうして冒険者組合を頼るしかなかったわけだしな。
これにフレスコは少し感心した目をして、
「ほう、お前、よく分かっているな。平民には思えねぇな……まぁ、その通りだ。でもそれでいいのさ」
そう呟いた。
俺は首を傾げて尋ねる。
「それはどうして?」
「俺はそのうち、あのお嬢ちゃんがトラン侯爵家を継ぐ方に賭けてるからだ。中々、箱入りの貴族令嬢の割には面白そうなお人だろう?」
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