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第61話 魔道具

 その魔道具は見慣れない形をしていた。

 まず、長方形の箱がある。

 大体……両腕を軽く開いたくらいの大きさだろうか。

 それの横の部分に、細い切れ目があるのが見える。

 さらに、この長方形の箱の上には水晶玉が乗っかっていて、玉の中には不思議な光がぐるぐると回っていた。

 どこか神秘的な光で、見つめていると惹き寄せられるような妙な力を感じるが……。


「おい、あまり見つめすぎるなよ。結果に誤差が出るぞ」


 フレスコがそう言ったので慌てて下がる。

 そういえば、教会でも似たようなことを言われたな。

 根源技能が判明した後、触れた魔道具はこれよりもずっと大型のものだったが、似通っている部分もある。

 特に水晶玉の部分は同じだ。

 あの時は、技師の指示に従ってこれにしばらく触れていることを求められた覚えがある。

 今回もおそらく同じだろう。

 その周りの機械部分が小さいのは、まぁ、機能の多寡ということだろうな。

 やはり俺が持っているような完全版の《カード》を作るためには魔道具も大掛かりになる、というわけだろう。

 魔道具という存在は、その機構上、強力なものであればあるほど、大型になっていく。

 それは回路の複雑さや、魔力の必要量など様々な要素が巨大化を求めるからであって、これを解決するのは容易な話ではない。

 古代の魔道具とか、迷宮のそれとかは解決しているものもあるというか、現代の技術では解析できないような極度な小型化を可能にしてしまっているものもあるが、それらは例外だ。

 そしてだからこそ、発見すれば相当な高値になるため、冒険者などはそう言ったものを求めるのだ。

 それなりに金欠な俺も、いつの日にか見つけて大儲けしたいなぁ、とか思ってしまうが、今は無理だな。

 迷宮の有名どころは大抵が国が管理しているし、入れるものは結構限られている。

 冒険者だとランク的な縛りが生じてくるのだ。

 俺たちが一番最初に登録できるのは、冒険者ランクでも一番下の鉄級になるだろう。

 そこから上がっていくと、銅、銀、金、白金……と上がっていき、最後は神鉄オリハルコンとなるのだが、ここまで上がれるものなど滅多にいない。

 俺も公爵家の継嗣だったが、神鉄級の冒険者、なんてものにはあった事がない。

 まぁ、神鉄級までになるといくらもいないから、仕事は好きなだけどこでだって選べるために、一つの国に執着することなどない。

 ましてや、オラクルム王国なんて偏見と教会支配に満ちた国になど来たいと思う者などまずいなかったのだろうと想像がつく。

 冒険者とはそもそも自由を愛する者だ。

 自由を縛ることをその目的にしているかのように見える教会とは、その立場が大きく異なる。

 まぁ、表面上は仲良く振る舞っているのだけどな。

 それくらいの大人としての礼儀というか、面の皮の厚さはお互いに持っているのだった。

 だからこそ緊張関係にあるわけだが……。


 少し話がずれたか。

 魔道具のことだった。

 フレスコが引っ張り出したこれは……。


「さて、分かっての通り、これで《カード》を作っていくことになる。使い方はわかるか?」


 案の定、そう尋ねてきた。

 俺は分かっているが、他の者たちを見ると首を傾げている。

 そりゃそうだろう。

 コボルトたちなど、こんなものを見たことがあるはずがない。

 魔物の知識を馬鹿にしているわけではなく、あの《煉獄の森》にこんなものあるわけがないからな……。 

 俺だって、このひと月、文明的な道具にはほとんど触れないで暮らしてきたのだから。

 一生をほぼあの土地で暮らしてきただろうコボルトたちがわかるわけがなかった。

 そんな彼らの表情を見て、フレスコは察したらしく、頷いて、


「どうやらだいぶ田舎者ってわけらしい……おっと、馬鹿にしてるわけじゃねぇぞ? 結構そういう奴らも冒険者になろうとする者の中にはいるからな。そして、そういう奴らは意外に有望なんだ。田舎の過酷な環境に慣れてるからかな……都会の奴らよりも、ガッツがある。だからお前らにも期待してるぜ」


 そう言った。

 彼の言葉をコボルトたちに翻訳してやると、喜ぶ。

 その様子を見て、フレスコは続ける。


「で、だ。使い方なんだが、この水晶玉に一人ずつ手を当ててもらうことになる。すると、こっちに、《神の頭脳》から引っ張ってきた名前と技能……一般技能の方だぞ?が、表示される。根源技能の方はあえて非表示にしてあるから、こっちには見えん。で、他の項目、種族、性別、それに称号については口頭でこっちに教えてくれ。こっち側から入力することができるからな……」


 そうして、いくつかの必要事項を説明すると、フレスコはコボルトたちを見て、言った。


「じゃあ、誰からいく? 全員分作るんだ。誰からでも構わんが……」


 そう言った。

 これに初めに手を挙げたのは……。


「わふ!(私からお願い致す!)」


 コボルトソルジャー、その片方のマタザだった。

 正直、最初にやるのは俺がいい、と思っていた。

 俺はもう《カード》を持っているだろうって?

 あれはあれでいいのだが、冒険者組合のものの方が色々とうまく使い所があるというか、通常なら嘘を書けない部分も調整が効くからな。

 それに、俺がアトから譲り受けた技能《情報閲覧》も効果を発揮するはずだと思われた。

 あれは《カード》の記載を調整する力をも持つ。

 より厳密にいうなら《神の頭脳》に働きかける力だ。

 アトはそう言っていた。

 だから……。

 ただ、マタザがやりたいというのなら、あえて遮ることもないだろう。

 幸い、種族とかは表示されないというし。

 だから俺が頷いて見せると、フレスコはマタザに言った。


「よしわかった。じゃあ、お前からそこに手を乗せてくれ」


 そう言ったので、俺がマタザに通訳すると、頷いてそうしたのだった。

読んでいただきありがとうございます!

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