第37話 技能等の検証
まぁ、そんなこんなで結構厳しい生活なのだが、悪いことばかりでもない。
特にアトが来てからかなり色々と改善したことも多く、もう洗いざらい全てアトには話してしまって身を任せたくなるくらいだ。
しかしそれをなんとか自制心で抑える。
アトの技能を見ると分かるが、戦闘系は言わずもがなであるが、地味に家事系とかの普通の人間が持っている技能についても色々持っている。
これは意外なことで、例えば貴族令嬢などは《料理》とかはまず持っていない。
アトも貴族ではないとはいえ、聖女なのであるからまず料理などしない立場なんじゃないか、と思っていたのでこれは見るまでは意外だった。
ただ、考えてみれば彼女は傭兵団出身で、自分の身の回りのことは全て自ら出来なければ話にならない。
傭兵というのは過酷な仕事で、それこそ死ぬような環境に置き去りにされることだってありうる。
そういう時に、料理できないとか言ってたら話にならないだろう。
自らの衣服を繕うことも仕事の内だろうし。
まぁ、《裁縫》とか《刺繍》の技能については貴族令嬢が持っていることは珍しくないけれどな。
花嫁修行というやつで。
中には極端に高いレベルまで上がっていて、そういう者は講師として引っ張りだこになったりもする。
まぁそれはいいか。
ともかく、そういうことなのでアトが来たお陰で食事についてかなりよくなった。
元々、俺だって普通に焼くくらいはできたし、キャスも火加減にはなかなかのこだわりを持っていたから不味いわけではなかったのだが、それに加えてちゃんとしたスープとか炒め物とかそういうのが出せるようになったのだ。
加えて裁縫系もあるから、コボルトたちに人と同じような衣服を着させることも出来るようになった。
衣服の素材についてはアトが《魔工》技能でその辺の樹木とか魔物の素材から作り出していた。
本当、彼女一人でなんでも出来るな……便利すぎる。手放したくないが、やはり手元に居続けさせるのはいまだに怖かった。
コボルトたちはほぼ完全に懐いてしまっているところがあるけれどな。
それと、彼女が来て良かったことは他にもある。
色々と検証が進んだのだ。
何のか。
それはつまり、俺に固有の様々な技能などについてである。
具体的には《従属契約》系に基づく色々だ。
俺は《従属契約》に基づいて、契約の相手から技能を借りられる。
これはアトについても例外ではなく、もちろん、ずっと訓練してきた《飛舞剣》についても例外ではない。
にも関わらずなぜ地味できつい訓練をしていたかといえば、自ら取得しようとした場合の難易度と、借りた上で使い倒した場合の難易度を比べてみるためであった。
アトにはたくさんの技能があるから、《飛舞剣》以外にも同じランクの技能が色々とある。
だから、大まかにではあるが比較して検証してみた方がいいのではないかと思ったのだ。
簡単なものについてはキャスやコボルトたちのそれですでにしていたが、高ランクの技能をこれほどたくさん所有している者など、滅多にいるものでは無い。
いたとしても、今の俺に会いにいけるようなことはないからな。
この煉獄の森から出ることすら難しいのだ。
主に社会的地位の問題で。
いずれここを出たいものだが、もう少し、ここで様々な意味での実力をつける必要がある。
これはその一環だった。
そしてその結果分かったのは、技能はそのランクの高低関係なく、借用して訓練した方が遥かに楽、ということだ。
《飛舞剣》なんて結局、その下位互換である《飛剣》すら俺は身につけられる気配がなかったからな。
あれはマタザが身につけたあと、リベル、そしてキャスが身につけられたが、俺には結局無理だったのだ。
他のコボルトたちも無理だったが、ただ《剣術》技能については全員が2まで上がったので無駄だったということはないだろう。
俺の《剣術》は3であるから、ちょっと頑張らないとそろそろ追いつかれそうで怖い。
ちなみに、訓練で身につけられなかったから《飛舞剣》については借用し、練習しているところだ。
今はアトは俺たちの集落を少し離れ、危険な気配のする魔物のところに戦いに行っている。
だから彼女に俺の技能を見られる心配が無いため、出来ることだった。
剣を構え、集中し、そして振るう。
《飛舞剣》技能が、直感的に教えてくれる。
どう剣を振るえば、どう魔力を注げば、どう闘気を扱えば、《飛舞剣》を放てるのかを。
俺はその教えに忠実に、剣を振るった。
すると、剣の先から複数の、踊るような斬撃が発せられ、それらは少し離れた位置にある樹木を容易に切り倒した。
「……やっぱり、ものすごい威力だな……!」
これがあれば、あの巨人、スカテネも目じゃ無いんじゃないか?
そんなことを一瞬思うも、やっぱり無理だな、と首を振る。
確かにこれがあればダメージを負わせることは出来るかもしれないが、そもそもの基礎能力が違う。
俺がこれを放とうと集中している間に一瞬で距離を詰められて、そのまま殺されるのが関の山だろう。
出来るとすればどうにか隙を突く方法を探せば、ということになるだろうが、今のところそんな手段はないしな……。
そんなことをぼんやりと考えていると、
「……ノア様? 今のは……!」
と、驚いたような声が後ろから響いた。
振り返るとそこにはアトが立っていた。
何の気配もなかったので、まるで気づかなかった。
この状況は……まずいんじゃないか?
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