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第四の壁を破ることが出来る青年は、魔法世界に転生するものの...。無理だ、ということでもう一度タイトル決めから始めました。

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 主人公、前田太郎は心地よく目覚めた。いつの間にか寝ていたようだ。

 ここから俺は、死ななければならない。異世界転生ってそういうものだ。

 作者に「転移ではダメか?」と聞いたが、それは却下された。


 俺は朝飯も食わずに、家を飛び出した。家族の設定付けはされていない。父も母も、兄弟も姉妹もペットも居るのかどうかなんて知らない。俺ですら知らない。家の設定もされていない。これは読者の想像に任せる。

 作者が何を考えているか分からないが、少しくらい登場人物を増やしてほしいものだ。


 読者に飽きられる前に、早めに転生を行わなければ……。


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《死因はどうする?》


1. トラックに轢かれる。


2. 崖から飛び降りる。


3. 隕石が学校に落ちる。


4. 豆腐の角に頭をぶつける。


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 ご丁寧に、死因を選ばせてくれるようだ。痛みが少なめな……4番は迫力が足りないから却下で。そもそも死ぬことが出来るのか。

 3番は迫力はあるが、その場合『主人公だけを転生』させるのが難しい。クラス全員が異世界転生してしまうと、作者がキャラを書き分けるのが面倒になる。やめておこう。


 1番はよく使われるが、トラックの運転手の将来を考えるとやめておいた方がよい。


 2番にしたいところだが、崖は用意されるのだろうか……。


 ……された。何もなかったかのように、横断歩道の先に崖がある。


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 主人公は崖から落下死。ジュゲ〇の助けは来なかった。


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「ここは?」

 嘘くさい芝居も入れつつも、一応驚いておいた。


「私は神だ」

 最も神感ないセリフ、軽く殿堂入りはしているだろうが神が来た。見るからに分かる、本人も分かりやすくするためか、ご丁寧に天使の輪を付けている。


「君は何かの手違いで死んだ」

 神でも第四の壁を破ることは出来ない。俺からすると、『作者・俺・神』の三者面談だ。そうとも知らず、神は説明を続ける。


「君を現世に生き返させるようなことは出来ない。残念ながら、死の事実は既にあるのでな。そこで、君には『異世界転生』をしてもらう」


「世界線は違うが、全ての世界が同時に存在している。君はそのうちのどこかに転生してもらおう。もちろん、タダでとは言わない。地球では最強の《とある能力》を授けよう」


「こちらのミスで本当に申し訳ないが、向こうの世界で良き人生を楽しむんだ」


 こうして俺は、やっと異世界転生をした。トントン拍子で話が進んでいくが、問題はここからだ。急ピッチでタイトル回収をしなくてはならない。結末が分かっている故に、初期の裏切りの連続はしんどい。


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 ある魔法世界に転生した。

 人は皆、魔法を使う。


 設定を長ったらしく話すと、読者に飽きられるので早めに。


 この世界の住民は皆、17歳になると、1つ特殊な魔法を持つようになる。母親は家事魔法、父親はも筋力魔法、弟は時魔法。


 だが、俺は持っていない。


 俺は何とかパーティに入ることが出来た。そうしないと物語が始まらない。


 転生後の名前…マエダ・タロー。


 作者のミスが酷い。転生後の名前を用意することもなく、普通に話を進めようとしていたらしい。よりによって、日本と同じ名前だ。


「変わった名前だな」と早速いじられた。


「君の能力を見てみたが、ハッキリ言って使えない。魔法が何一つ使えないのに、何故君はこのパーティに入ってきた?」

 作者が決めた、なんて言えないのでスルー。


「新人が入ってきた。君はもう用済みだ。このパーティを出ていってくれ」


 物語が始まった。追放系あるあるの始まり方だが、悲壮感なんてものがない。未来がある程度分かるから……お芝居をしているような感覚でもある。


 ついでに俺が神から授かった能力は《眠らなくても疲れなくなる》だ。神曰く、「スーツ姿の人が疲れながらも作業する姿をよく見かけるから」らしい。

 魔法世界ではほぼ意味ない。というか現実世界でも意味ない。その能力あるなら、残業を無くせ。


 この能力が、どうやったら最強になるのだろうか。


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 俺は行く当てもなく、彷徨い続けた。ここは物語あるあるの《助けてくれる幼馴染いがち》も《少女襲われがち、実は王女がち》もない。幼馴染など作者が作ってもいないし、少女を守れるほど力も強くない。


 俺は気づいた。作者がこの後の展開に悩んでいることを。それもそうだ、魔法ジャンルは書いたことがない。そもそも新人だ、無理もない。


 俺と作者の考えは一致した。


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「何故また君がいる?」


 神でも困惑されることがあるようだ。また神のお世話になることにした。


「2回目の転生をさせてくれ……か。原則では出来ない。が、どうしてもやらないといけない気がする。神の予感は当たる」

 作者の圧は神でも分かるのか。


「次こそは本当にどこの世界でも使える能力にした。本当だ」


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 俺は2回目の転生をした。そして作者も、こっそりとタイトルを変えた。


【第四の壁を破ることが出来る青年は、異世界転生を駆使して作者と共に最強の物語を作ることを決意した 〜書籍化待ってますってタイトルに入れたら、書籍化されるかな〜】


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『最強の物語』とは。主人公が最強になって終わることでも、魔王討伐世界平和ハッピーエンドでもないはず。作者と読書が『最強の物語』と思えばそれで終わりだ。


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次こそは…

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