第3話
翌朝、時計の針は5時半を指している
颯清『ん〜……』
カーテンの隙間から朝日がうっすらと差し込み、のっそりと起き上がりベッドの上で「ふわぁ……ぁ…」とあくびをしながら起き上がる。
颯清にとってはずっとこのサイクルで生活してきた為か、特に目覚ましが無くても自然とこの時間に目が覚める。
だが本人にとっては早起きでは無いが、早起きした所で講義までの時間はまだまだ先のため朝はのびのびと出来る。
一方美澪はと言うと、少しは親の融通が効くが7時までには社の方に行かなければいけない。
朝の時間帯、双子達は別々に行動する。
颯清の朝の日課としては30分くらいの散歩からだった、顔をさっと洗い着替えてとりあえず適当に髪を一つにまとめる。
颯清『今日はどこに行こうかなぁ…』
なんて呟きながらぶらぶら散歩する。
歩いていてもまだ時間が時間なのか中々人に出会う事はなかった、歩いていると突然後ろから『わっ!!』と大声を出された。
思わずビクッと身体を硬直させ誰だと警戒をしたがその声の主が直ぐに誰だか分かると警戒を解いた。
颯清『はぁ…何してるの、蓮璻?』
蓮璻『なーんだぁ、バレてたんだ』
今の空模様と同じような夜明け空の色の様な長い髪にあまり面白くなさそうな声と表情、そして人間ではないと分かるような後ろに生えている黒い羽、おまけに空中に浮かんで颯清の周りを飛んでいる。
颯清『早くどこかに行って、人間に見つかったらどうするの』
蓮璻『はいはーい、後でね、颯清』
そう言って姿を消す。
彼の名は蓮璻。人間ではなく、妖であり、天狗だ。
蓮璻とは幼少期の頃、惰殺に襲われそうになっている所助けてくれた天狗のうちの1人だ。うちの1人、と言っているからもう1人いるだろう、という推測は正解だ。
蓮璻がいるという事は、その例のもう1人の妖もきっと家にいる。
颯清『……美澪機嫌悪くなってないと良いな…、家もぐちゃぐちゃになってないと良いな…』
どこか半分諦め状態だ。
「…今日はもう帰ろう。」
そう思った颯清は、帰る為に元来た道を戻って行った。
颯清『ただいま』
扉を開けそう言いながら家の中に入るとやはり何やらギャーギャー揉めてる声が聞こえてきた。
やっぱりか……と軽くため息つきながら声のするリビングの方へと向かう
颯清『…美澪、時間を考えて、近所迷惑だよ』
そう言っても自分の片割れは聞く耳を持たない。
いや、聞こえてないのだろう。
美澪『ほんっっとうに毎日毎日毎日ウザい!斬るよ、ねぇ!刀ならまた鍛刀する、だから良いよね、嫌ならやめてよ!』
刀を構えて威嚇しまくってる。その相手は天狗だ。え、さっきの人かって?違う違う、ほら、もう1人いるって言ったよね、そっちの方。
名を、明楽。
妖であり、大天狗だ。