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花街謳歌録  作者: 月光夜
1/1

警侍

前々から書きたかったお話です。

皆さんに読んでいただけたらありがたいです。


時は大正百二十年、日本、吉原にて



開国から五十年、大正五十年にここ吉原は外国人客を、もてなす為に横浜港の近くに移され、さらに絶えず起こるトラブルへの対策として吉原と横浜港には警侍と呼ばれる帯刀した幕府公認の警備が少数ながら置かれた。

それから更に時は経ち大正八十年には外海との流通の制限を完全に無くし、日本は更なる成長を遂げたのであった。





夜の潮風に頬をくすぐられひかりは軽く瞬きした。

一度三つ編みにしてからお団子にされた銀髪や銀朱の瞳、驚くほど白い肌、人形じみた端正な顔は夜更けだというのに煌々と灯る吉原の明かりに照らされキラキラと輝いていた。

今年で18になるその身体は細く出過ぎずでなさ過ぎずで平均より僅かばかり高い身の丈はひかりの美しさを引き立てている。


「ひかりちゃんこんな所にいたのかい。探したよ。」

振り返るとそこには四十代半ばの女性、澄川屋の女将、菝がいた。

息を切らし慌てた様子の彼女を見て何かあったのだろうと察する。

「お菝さんどうしましたか?」

「大変な事にかったよ!とにかく早く来ておくれ」



菝に連れてこられたのは吉原の中でも一、二を争う大見世、稲本楼だった。

菝から聞いた話では稲本楼の客である男が刃物を振り回し遊女を人質に立て篭もっているらしい。

ここ吉原ではあまり珍しくないが問題が場所が稲本楼だということだ。

稲本楼は五年程前に建物の老朽化を理由に建て替えており、その際に二階建てから五階建てになったのだ。

その為とてつもなく広いうえに部屋数も多い。

「臺護達はもう来てるにたいだね。」

吉原の警侍は一人ではない。

ひかりの他にも臺護と玲という警侍がいる。

「遅かったな。」

六尺三寸はあるであろう上背にゴツゴツした筋肉質な身体の大男、臺護がいた。

「臺護、中の様子は?」

「今のところ中の様子は分からない。だが、稲本楼のやり手が言うには桜花と涼秋とかいう遊女が取り残されているらしい。なんでもその遊女を殺して自分も死ぬ気らしい。」

「まぁ、ひとまずは玲も来ない限り対処は難しいかもな。」

「「!?」」

「玲、遅い。」

「臺護、そんなに睨まないでくれよ。俺は二人より先に此処に来てたんだよ?」

茶髪の小柄な男、玲はそう言って笑った。

小柄といっても臺護と比べてなので上背は五尺八寸はある。

「いやー。今までそこで綺麗なご婦人に捕まっちゃっててさ。」

「玲、そんな話はどうでもいいから。」

「えぇー。酷いなー。」

「酷いないだろ。まずは刃物を持った男をなんとかするべきだろ。」

「まぁ、それもそうか。」

その時だった

「キャァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」

自分達の遥か上、見上げると稲本楼の通りに面した四階部分の窓から一人の女性が胸ぐらを掴まれ宙吊りにされていた。

腹部を刺されているらしく、着物に血が付いている。

「テメェ、殺してやる!!」

続いて彼女の胸ぐらを掴んでいると思われる男の声が聞こえてくる。

その様子に野次馬や稲本楼のやり手も黙りんだ。

だが、男が女性を落とすことはなくさらに数秒が経過する。

「臺護」

ひかりは臺護と玲に目配せすると大きな声で叫んだ。

「おい、そこの其奴!どうせその女性を落とす勇気なんてないんだろ!サッサと出てこいこの弱虫!」

「あぁん!、なんだとこのクソ女!」

ひかりの言葉でさらに頭に血が上ったらしい男は掴んでいた女性の胸ぐらを離した。

女性は落下した。




すとん!!

建物の四階から落下した女性を受け止めたの臺護だった。

青ざめた顔の女性は自分は死ぬと思っていたらしく「わ、私死んだの?」と呟いている。

「喋れるなら死んでないよ。」

「ひかり、玲、俺はこの人を田村先生に見せてくる。後は頼んだ。」

「わかった。私と玲で中の男はなんとかする。」

臺護は女性を抱えて走り去った。

「んじゃ、俺達は中の男をシバきに行こうか。」

「わかった」

ひかりと玲は稲本楼の中に侵入した。


玄関を入って正面、上の階に続く階段を上がる。

先程の事も考え一階にいる可能性は低い。

素早く二階まで上がると玲は階段の見張り、私は部屋を確認してまわる。

三階、四階と確認しいよいよ五階に上がり一部屋一部屋確認する。

ひかりはこの階最後と思われる部屋の襖をそっと開けた。


部屋の襖を開けるとそこには此方に背を向け刃物を持った男と着飾った遊女がいた。

遊女は床にぺったりと座り込み男から逃げようとしているのか手足を動かしている。

男は遊女にじりじりと近づきながら何やらブツブツと呟いていた。

男は此方に背を向けている為ひかりに気付いていないが此方を向いている遊女はひかりに気づ付いたらしく助けてくれと顔で訴えている。

ひかりは遊女に向かって一度コクリと頷くと素早く男の右に回り込み突然現れたひかりに驚く男に遠慮なく飛び蹴りをくらわせた。



刃物を持った男を無事縄で縛り最寄りの詰所に引き渡す頃には空は薄らと明るくなり吉原の住人は寝床に帰っていく時刻であった。

ひかりと玲は臺護と合流し、揃って宿舎へと戻った。

続きは一週間後位に書きます。

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