挨拶回りに出かけよう
「君は、一等特待生としてこの学園に入る。ほとんど資金関係は心配しなくていい。杖や教科書は全て学園が支給する。それに、追加の装備の購入資金も学園が負担する」
「かなり破格の条件ですね。何か裏でも?」
「特に無い。強いて言うなら、卒業までは半強制で拘束されるってぐらいだな」
「まあまあな制約じゃないですか」
思わず顔をしかめた。
「イヤイヤ、まだマシな方だと思うぞ?返金も何もなしでいいって話だからな」
「でも確か、学園って義務なんじゃ………?」
「一応そういう事になっているが、まともな職業に就きたいなら義務ってだけで強制じゃない」
「ああ、そういう事ですか。なら納得です」
「ところで、どうする?一等特待生はこの学園一の魔法使いって意味じゃし、この学園はかなり居心地が良いぞ」
「入学します。で、話は変わるんですが、装備を揃えたいので支度金を貰えますか?」
「良いじゃろう。1000ファリエーノが支度金じゃ。町に行けばそこそこの装備が揃えられるぞ」
ドジャラと金貨の入った袋を机に置きながら校長は言った。
「ありがとうございます。ところで寝泊まりはどこで?」
「寮だな。お前は今から挨拶回りだ。装備購入は明日以降になる」
「寮ですか。俺、過去関係はあんまり話したくないんですよね」
「ああ、それなら大丈夫じゃろう。この学園は事情ある人間も迎え入れておるからな。変わった人間も多い」
「ならよかった」
「さて、挨拶回りに行くか」
ーーーーー
通路を歩きながら教官が話しかけてきた。
「一等特待生はこの学園に8人存在する。実力はあるが性格に難のある者ばかりだ。かなりカラまれると思うが、耐えろ」
「はあ......。学園は対処しないんです?」
「無理だ。暫定一位と言われるやつに関しちゃ戦略兵器と言われてるほどだからな。俺達教師陣でも屈服させるのは時間がかかる」
「なんでまたそんなクソヤベー奴が学園で勉強してるんだ........」
思わず呟いた俺に、
「あっ、きょうかーん!!!」
とえらく元気な声が背後から聞こえた。
「ああ、マイケリウスか。ちょうどよかった。お前にコイツを紹介しておきたかったんだ」
「はい?誰です、教官の隣にいる人は?」
トトトトッとこちらに駆けてきたマイケリウスと呼ばれた少女は首を傾げた。
「新しい一等特待生だ。ホレ、自己紹介」
「あっ...えーっと新入生のフートです」
急に話を振られた俺はあっという間に自己紹介を終えてしまった。
「どうもー、学園3位の剣士マイケリウスです。よろしくおねがいしますね!!」
「よろしくおねがいします.......ってアレ?学園3位,,,,,,,?」
「コイツは剣術一本で学園3位にまで食い込んだ猛者だ。まあ俺よりかは弱いがな」
ニヤッと笑いながら教官が解説を挟んできた。
「この前は引き分けだったじゃないですかー、ズルいですよー」
「あん時は俺が連戦した後だったろうが、ノーカンだノーカン」
「負けず嫌いなんですから、もう〜」
「ほっとけ」
なんだかワイワイ話しているがまったくの蚊帳の外になってしまったフートだった。