主人公の知らない会話
左がドアから出て行った後、校長が真顔で教官に話しかけた。
「お前が負けるとはな、ドミナティウス。お前が試験教官になって以降、全く中期入学者が居なかったというのに、あの覇気のない子供がお前に勝つとは…………」
「…ええ………しかし、あの少年の魔法ははっきり言って異常です。これまでに発見されてきた魔法のどの理論にも当てはまりません」
「それは興味深い」
ドミナティウスが魔法で送った報告書をヒラヒラと振りながら、校長が言った。
「この報告書には裏の未発見魔法の可能性あり、と書いてある。だが、我が国最高峰の魔道研究者達が報告した、未発見魔法はこれ以上ない、という話に関してはどう考えている?彼等を疑うのか?」
「いえ、可能性がある、という話です」
ドミナティウスはジッと校長の目を見つめた。
「…そうか。………先ずは彼の魔法を調べさせてから話すべきだったな。なにしろ、我らは彼らなしにはありえぬのだから………」
「それともう一つ、懸念材料が」
眉根を寄せながらドミナティウスが告げた。
「彼は、軽めのディッド………いわゆる多重人格である可能性があります」
「ほう。具体的にはどのような症状が?」
「戦闘中に口調が終始コロコロ変わり、性格が変わった程度です」
「…………その程度だと、おそらくは人格が完全に形成される前か。発現する人格によっては要注意だな。それも戦闘時のみとなると、厄介なことになりかねん」
「ええ。それに、彼の戦闘能力は相当ですからね」
「その点に関しては大丈夫じゃろう。何しろこの学園には、ワシがおる」