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いざ、学園へ

7時きっかりに校門前へ行くと、ローブを着た人が立っていた。



「来たか。お前がフートだな?」



「はい」



「今日は他の受験者は居ない。付いて来い」



くるりと踵を返して、歩いて行った。



試験場へ向かう最中、その人が話しかけてきた。



「昨日受付の奴から聞いたが、お前金が無いらしいな。どうやってここまで来た?」



「平原を歩いてきました」



「ほう。あそこにはかなり強めのモンスターが出る。出逢わなくて運が良かったな」



「いえ、クマには出くわしましたよ?あんまり強くはなかったですが」



「…………クマだと?特徴は?」



「腕がとても発達してましたね。氷魔法を食らわせてもシバリングで魔法を解かれちゃいました」



「腕が発達か………」



「?なにか?」



「いや、なんでもない」



その後何かボソっと呟いたようだが、俺には聞こえなかった。



「そうだ、忘れていた。この学園には奨学金の制度がある。一定以上の実力を持つ生徒には学園から支給金が出るようになってる」



「そりゃ有難いですね。条件は?」



「俺たち教官組を圧倒することだ」



その人………もとい教官は剣を抜き、言った。



「お前の実力はさっきの話から大体分かっている。俺は本気を出さんと勝てんようだ」



呟くが早いか、体を屈め、突進してきた。



「…ッ速っっ」



[力魔法レベル4]



踵から衝撃波を出し、ギリギリで回避する。



「お前、今のは身体強化か?ありゃ相当高度な魔法だ。お前の年で扱えるわけが無いんだがな」



教官は尚腰を低くし、剣をこちらに向けている。



「答える義理は無いな。なんでまた急に攻撃を?」



「不意打ちに対応できるかどうかも試験の内容だから………なッッッ!」



ゴッと近付いてくる。



「随分危険なしけんだな………っと」



またギリギリで剣をかわす。



「だったら俺も……」



[氷魔法レベル2]



ドオッ



大きく外れたところへ魔法が逸れる。



「ハッ、大外れだな!!」



「そうかね?」



[氷魔法レベル1][氷魔法レベル1][氷魔法レベル1]



「コントロール不足だな!それじゃあ特待生は無理だ!」



叫びながら、剣を薙ぎ払う。



「うるせえな」



左は真上に飛び、回避。さらに身体前方から衝撃波を発生、距離を取って着地した。



「お前、さっきから使ってるのは身体強化じゃないな?身体強化なら空中でベクトルは変えられんハズだ」



「ご名答。まあ、種明かしをする気は無いがな」



[氷魔法レベル2][氷魔法レベル2]



さらに2回発動。



「ちょっと待て………何故そんなに連発出来るんだ?」



言いながら、剣で連打を仕掛けるが、左はヒョイヒョイと躱す。



疲れているわけでもないのに教官の剣筋が鈍る。



「クソッ!!なんで当たらねえんだ!」



「気付かんのか?あんたの体の異変に」



「何………?」



「寒さで血液循環が滞り、運動能力が低下する。あんたほど強いと、微かな身体の誤差で一気に崩れる奴が多いからな。氷魔法の乱発でこの一帯の気温を低くした」



「さっきからの乱発はそのためか?ただ、それにしてもお前は決め手に欠けるぞ。氷魔法以外に魔法を持っていれば話は別だがな」



「持っているぞ」



[力魔法レベル5]



ヴン



「2属性持ちか………それがさっきからやってる魔法のタネか?」



「ああそうだぜ、っと」



一際大きな振りを避け、距離を取る。



「今度は俺から行くぞ!!」



低く腰を下げ、左手を手刀にして顔の前に立てる。



踵から踏み込み、急接近。



「チッ、速えな」



俺の拳を立てた剣でガードするものの、吹っ飛ぶ教官。



ドオッと校舎の壁まで飛んでいく。



「やったか………?」



瓦礫の中からガラァッと教官が出てくる。



「お前………摩訶不思議な魔法を使いやがるな………」



「うげ。まだ動けんのか」



ローブに付いた埃をパンパンと払いながら、教官は言った。



「こんなめちゃくちゃな魔法はウチでも使う奴は居ねえぞ。身体強化でもなく人を吹っ飛ばせるとは……」



「チッ、試験続行かよ………面倒だな………」



もう一度魔法を発動させ、体勢を作る。



「待て待て待て、終わりだ終わり。これ以上やると俺が死んじまう。一級特待生として推薦するから、試験はこれで終わりだ。不本意だがな」



教官は剣を鞘に戻し、さっさと学園へ歩き出し、懐から杖を取り出して紙を飛ばした。



「付いて来い」



教官は屋内に入っていく。



壁はレンガ造り、床は大理石風だが、あちこちに焼け焦げの跡や剣で切られたような痕が残っている。



天井はそれなりに高く、はるか上には巨大なシャンデリアがぶら下がっている。



そして、豪華な回廊。



そこを歩きながら、俺は教官へ話しかけた。



「そう言えばここは王都だと聞いていたんですが、王宮は何処にあるんですか?」



「何を言ってる。ここは王宮だ」



「へ?いやいや、ここは学園じゃ無いんですか?」



「お前、知らずに入学しようとしてたのか?ココはファレンノ学園王国。国王が学園を直接主導する、世界唯一の国家だ」



「てことは、今から俺が向かうのは国王の所って事ですか?」



「そうなるな」



「ちょっと!!俺、かなり粗末な衣服ですよ!?不敬罪で捕まったりしないですよね?」



この世界に来て、そのままの衣服だ。戦闘もしたし、そもそもかなり移動したからかなり薄汚れている。



「機嫌が悪かったら殺されるかもな。まあ、俺に勝った罰だ」



「ええ…………」



オイ、冗談じゃすまんぞこれは。



ーーーーー



「君がこの時期に入学すると言った変わり者か!よく来た!優秀な魔法使いを私は歓迎するぞ!!」



「は、はぁ………。ありがとうございます」



白髪、白髭で皺だらけの顔をしわくちゃにして手を引っ掴んでブンブン振った。



「ところで、君は未知の魔法を使うそうだな!!入学したら、研究に協力してくれ!!頼む!!な!」



紙をヒラヒラ振りながら、爺さんは元気たっぷりに言った。



「はあ………まあ、余裕ができれば協力します」



「よし、言ったな!!覚えておくぞ!」



「では、書類関係を用意する。少し時間がかかるから、隣室で待機しておいてくれ」



教官が横からスッと出てきて言った。



「分かりました」



ーーーーーー


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