さあ、実験と戦闘を始めよう
ここで冒頭に話は戻る。
「いまする事は、取り敢えず現在位置の把握だな。学園に入る事になっているらしいが、そもそも町らしきものが無いんだが……」
と、途方に暮れていると、
ヴン
『おう、忘れておった忘れておった』
頭に声が響いてきた。
『1日間だけミニマップを開放しておく。王都近くの平原に落としたからの。ひとまず王都へ向かえ。以上じゃ』
ヴン
「会話の暇すら与えられんのか………、随分勝手な……」
ブツブツ言っていると、視界の端にミニマップ(かなり詳しい)が現れた。
「なるほど、王都までは20キロ無いぐらいか………。歩けなくも無いがツライな………」
しかも俺は機動力に関してはこの世界の平均と同じ程度だから、そこまで速いわけでも無い。
「そうだ。魔法で………」
パチン
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
左 風都
17
HP:100
MP:50
AT:200
DF:200
SP:80
力魔法、氷結魔法、回復魔法、魔力回復(極)、再生能力(高)、痛覚遮断
力魔法の使い手、回復のコツ、獲得経験値倍加、武闘家
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「この力魔法ってのは何かに使えそうだな。斥力かなんかは発生させられないのかね?」
と、考えたその時、ハッと気がついた。記憶が無いハズなのに、知識はあるのだ。
奇妙な感覚だ。思い出の部分だけが靄がかかったかのように、思い出せないのだ。
「難しい事は考えてても仕方がない。取り敢えず諸々の魔法を実験しようか」
[氷魔法レベル2]
「おお、結構な威力だな。木が凍った。………この世界の平均がどんなもんか分からんが、結構なレベルじゃないか?」
次だな。
[力魔法、レベル5]
「ん?何も起きんぞ?失敗かね?」
体のあちこちを探ると、手が黒く光っているようだ。
「なんだこれ……。取り敢えず振ってみるか……」
ゴッッッ
適当に振っただけとは思えないほどの衝撃波が出た。
「なるほど……これはかなり使えそうだな」
その他のスキルは確かめようがないので、保留しておく。
「よし、王都へ行こうか」
ーーーーー
ゴッッッッッ ゴッッッッッ
今俺は、衝撃波を利用して移動している。ただ歩くよりも相当早い。
転移場所から出発して20分だが、全行程の2分の1を消化出来ている。
「これちゃんと利用したら相当有益だな…………」
と、言っていると。
ガツンッッ
「痛ってえええ!!」
木にぶつかった。この移動方法の弱点は、移動に目が追いつかない事だ。
足の裏から衝撃波を出しながら進むので、急に止まれないのだ。
頭を抑えながら少し休憩を取っていると、
ガアアアアアア!!!
腕と肩が異様に発達したクマが出た。
「出たな魔物。初めての実戦だな。かなりハイレベルだが………」
ブンッ
「おっと」
すんでの所で殴られるところだった。その上、空振った後の地面にちょっとしたクレーターができている。
「一発当たったら終わりっぽいな………取り敢えず………」
[氷魔法レベル2]
グア……ア……
クマの動きが鈍くなる。
「やったか………?」
ブルルルルルルルルル
突如、クマが震え出した。
「シバリングってやつか………。厄介な能力持ちだな」
※シバリング………寒い時に体を震わせる現象の事。体温を上げる効果があるが、体力を割と消耗する。
「魔法を用意しねえと………」
[力魔法レベル5]
ヴン
直後、
パキイイイイイイイン
魔法が破られた。
「織り込み済みだ!!オラ!」
動きの鈍いうちに懐に潜り込んでおいた俺は、拳をクマの腹にめり込ませた。
ドゴオ!
クマが遙か彼方へ吹っ飛んだ。
「うえ………!?」
ーーーーー
どうやら、あんなに高威力になったのは空手家スキルのせいらしい。
打撃系攻撃力の底上げがかなりの高倍率らしく、俺の力魔法とはかなり相性がいいようだ。
ちなみに、なんで俺がこんなにスキルについて解説できているかというと、ステータス画面のスキル部分に触れると、詳細が出てくる仕様になっていたからだ。
ーーーーー
「と、着いたな………」
クマとの戦闘から約20分、俺は王都の城門前にたどり着いた。
「こっからどうするかだな………。取り敢えず学園ってのを探すか」
周囲の人に場所を聞くことにした。