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若い男が出て来た
儂は雲を掴む様な訳の解らぬ儘
有楽町線の麹町駅を降りた。
最近麹町には来て居ない。
随分昔、仕事で駆けずり回った事はある。
市ヶ谷に近く、皇居にも近いが、
新宿や、池袋に比べて静かな清潔な街で
儂は好きじゃ。
向こうさんの言う通り○○銀行の角を曲がると、
有った有った。
地味な5階建てのビルじゃった。
エレベータで5階を押すと
静かにドアが開いた。
『いらっしゃいませ』
女子事務員が迎えに出た。
『どちら様で。』
『儂は呼ばれたんじゃ。小林じゃ。』
すると
『あ、小林様ですね。
少々こちらでお待ちください。』
応接室に通された。
しばらく待つと、
ドアを叩く音と同時に
若い男が出て来た。
『小林様ですね。
ZZZ機関の麹町事務所 町田と申します。』
『うん。儂は小林じゃ。』
『お忙しい中申し訳ございません。』
『いや、儂は暇じゃ。
どうやらオレオレじゃ無さそうだ。』
相手の町田という男は恐縮しながら
名刺を差し出した。