2.アルマとの出会い
風が吹く、頬に触れる草が少しくすぐったい。木々の隙間から零れる光が眩しい。
ゆっくりと目を開く。
「ここ、どこ…??」
俺はさっきまで電車に乗って、痴漢にあって…そして…
勢いよく起き上がった。
「あっ、あのクソ野郎!!!俺を突き飛ばしやがって!!」
「ひゃあ!?ご、ごめんなさいっ!」
声の先に視線を向ける。
ブラウンの長い髪を風に揺らしながら困ったような表情をこちらに向ける彼女は、様子を伺いながら喋り始めた。
「あの、大丈夫…ですか?中々目を覚まさなかったので。なにかあったんですか…?それに、洋服もも汚れてるみたい…」
「えっと、大丈夫、です。これはちょっと人に突き飛ばされて…ってあれ?ここ駅じゃない?え?森?」
困惑する俺を見て彼女もさらに困惑する。
「もしよかったら、私たちの村に来ませんか?この辺りに街もないですし、ここにずっと居るのもなんですし」
ちょうど私も山菜集めが終わったところですから、と。
俺も状況がよく分からないままこの場所にいるよりも、彼女について行く方が得策かと思いその提案を受け入れた。
「おれ…」
言いかけて気づく
(っと、まだ女装したままなんだよな)
「私はあきら、あなたは?」
「わ、わたしは、アルマ…です」
「そっか、アルマちゃんよろしくね!」
培った女性生活スキルは遺憾無く発揮させた。言葉の使い方や、所作、雰囲気まで。
問題はいつまでこの状態で居ないといけないのかということ。
俺、帰れるんだよね?
ふと疑問が過ぎるが、今はまずこのこの村へ案内してもらおう。その後のことはその時考えよう。
そう思い、歩みを進めていった。
◇
「アルマちゃん、ここから村まではどれくらいなの?」
「そうですね、そんなに遠くはないですよ」
「ふぅん、じゃあさ!着くまでおしゃべりしようよ!アルマちゃんのこと何にも知らないから教えてよ!」
「えぇ…私の事なんて知っても何も面白いことないですよっ…」
大きく首を振る。謙虚というか、自信が無いと言うか、ちょっと物事に対して臆病な子だな。
「そんなことないよ!うぅん、でもじゃあ他のことを教えてくれる?ここってどこになるのかな?」
「あ、はい!ルーシャ村の西の森ですよ」
「ルーシャ…?東京にそんな場所あったっけ?」
「トーキョー、ですか?」
「うん、東京」
「ごめんなさい、初めて聞きます…」
「ええっ!?」
嘘でしょ!?
こんな流暢に日本語が話せてて東京を知らない人っているの?
驚く俺を見て、心底申し訳ないという表情を浮かべるアルマ。
「ごめんなさいっ、トーキョーはわからないですが…ここはリンドルム国の南の方です。」
「リンドルム…?」
何が何だかわからないんだけど!
いつもの週末、いつもの日常、痴漢にあって突き飛ばされて、目が覚めたら溢れる新緑。
そこで出会った子に聞いたらここは東京じゃないなんて!
そうだ夢に違いない!
それかそれかそれか…俺はこういうの知ってる、かもしれない。最近よくアニメであるからね。あれでしょ?異世界に飛んでしまうってやつ。
恐る恐る聞いてみる。
「あのさ、アルマちゃんはさ、魔法とか使えるの?」
お願いだから、そんなものあるわけないと笑ってくれ!
え、と一言漏らし、ふふっと笑った。
「そんなもの、村娘の私に使えるわけないじゃないですか」
どうやら存在していたみたいだ。
俺はあのあと、本当に異世界に飛んできてしまったのか。
どうしたらいいかはやっぱり分からないけど、とりあえずは今はこの子について行こう。村に着いてゆっくり今後の方針を固めよう。
「あ、あきらさん、村に着きますよ!いらっしゃいませ、わたしたちのルーシャ村へ」
「うん、よろしくお願いします!」