1.須藤 あきら
可愛いは正義だ。
そう思って生きてきた24年間だった。
女の子が欲しかった母親は子供の頃から女の子物の服を俺に買い与えた。幸い、まつ毛は長く目は大きかったせいか子供の頃は可愛い可愛いと、本当に女の子のように育てられた。
小学生に上がる頃はさすがにスカートこそ履かなくなったが顔立ちのせいか、どんなに男らしい服を着てもボーイッシュな子だと思われることの方が多かった。
中学生、文化祭の時にされたメイクや女装。楽しくてこっそりと母親のメイク道具を借りたりもしていた。
さすがに高校生にもなったら成長期で、男らしくなったら潮時かと思っていたが、悲しいかな身長も伸びることなく大人になった。
誤算と言えばそうなのだけど、俺にとっては嬉しい誤算だった。
女性として生きるのは楽しい。
メイクも、洋服も、娯楽も、楽しむものは女性の方が圧倒的に多く思えるのだ。
中性的な顔立ちも、高いとは言えない身長も、俺にとってはステータスでしかない。
日々のスキンケアも、流行のリサーチも、週末を全力で楽しむための下準備。女装という趣味は俺の日々を彩ってくれた。
そう、俺にとって可愛く居られることは正義なのだ。