♯7 祝! 冒険者になりました
“種族”
シルトナリアを代表する生命体。大まかに分けて十一種族が存在する。種族によって寿命や身体能力、ステータスの伸び代が違う。
『フフフッ⋯⋯アーク・ワイバーンの素材が丸々五匹分手に入るなんてな』
「随分と嬉しそうですね」
『そりゃあ当たり前だろ? こんだけあれば凄い量の金が手に入るんだぞ? 金に困る事はなくなるし、お前の装備、それに魔道具だって買えるからな』
そういや王国内を歩いてた時に露店で面白そうな道具が売ってたんだよな。買ってみるか。
「そういえばご主人様」
王国に入り、ギルドに向かっている途中でメリノが話し掛けてくる。
『ん?』
「私はご主人様に自分のステータスを見せた覚えは無いのですが⋯⋯何故私が強化魔法や弱化魔法を持っている事を知っていたのですか?」
『⋯⋯あっ』
そうだ、俺は鑑定眼でメリノのステータスを見ただけであってメリノから見せられた訳じゃない。やべえ、すっかり忘れてた。
『えっと、俺は鑑定眼持ってんだよ。それでメリノのステータスを⋯⋯』
そう答えるとメリノに盛大にため息を吐かれた。何これ凄い傷付く。
「ご主人様、鑑定眼は確かに便利ですが無闇矢鱈に使うのはやめた方が良いかと」
『何で?』
「私はもうしょうがないとして、中にはステータスを見られる事自体嫌う方もいます。もし鑑定眼の事がバレたら大変な事になりますよ?」
『あー、成る程』
そういやゲームでも秘匿主義で鑑定眼を嫌ってるプレイヤーがいたな。酷い奴だと鑑定眼使ったってだけで攻撃してくるのもいる。
『じゃあこれから気を付けるわ』
「そうして下さい」
そしてギルドに戻ってくると顔を青くしたガルスが近づいてきて肩を掴んだ。
「おい兄ちゃん達! 無事なのか!?」
『お、おう。大丈夫だけど』
「なら良かった! 帰ってくるのが早かったから逃げてきたんだろ? 大丈夫、ギルマスに連絡した。もう少ししたら─────」
『いや、倒してきたんだけど』
俺の言葉にガルス含めるギルドにいた奴らは「はっ?」という表情を浮かべる。
言葉で説明するのは面倒なのでストレージに入れていたワイバーンの首を取り出す。
「うぉおおお!?」
突然出された首に、目の前にいたガルスは尻餅をつく。
「お、おい⋯⋯あの鎧、マジで倒してきたぞ」
「あの二人、何者なんだ?」
おお、何か周りの視線が痛い。
まあ、ポッと出の変な奴がBランクの魔物を速攻で倒してくればそりゃあそんな目になるわ。
「さて、ガルスさん。ご主人様の宣言通りアーク・ワイバーンを討伐しました。登録の件、お願い出来ますか?」
「う、うむ⋯⋯」
冒険者達がザワザワと話してる中、不思議なくらい通る声でメリノが聞く。ガルスはどうしようか悩んでいるのか目をあっちこっちに逸らしている。
「私は別に良いよ~」
すると後ろから子供っぽい雰囲気の声が聞こえる。振り向くと、そこには灰色の髪の猫耳少女が立っていた。
「ぎ、ギルマス!」
あっ、この子がギルマスなのか。もっとゴリゴリのおっさんかと思ってた。
ギルマスと呼ばれた猫耳少女は軽い足取りで俺に近付いてくるとまじまじと見つめてくる。
『⋯⋯何か?』
「ん~? 何か不思議な人だな~って思ってさ。まあいいや。取り敢えず私の部屋に来てよ。ガルス達は仕事に戻ってね」
「わ、分かりました⋯⋯」
んで、ギルドの隅っこにあった扉からギルマスの部屋に来た訳だが⋯⋯椅子に座ったギルマスがジロジロ見てきて落ち着かない。
「で、君がワイバーンを倒してくれた英雄君? あ、私はネルシア。ここのギルマスをやってるよ」
『英雄って質じゃねえけどな。俺はランヴェルだ。で、コイツが⋯⋯』
「メリノです」
「ランヴェルにメリノねぇ⋯⋯」
自己紹介が終わるとネルシアは椅子から降りて近付いてくる。
「⋯⋯ランヴェルのLvは大体300。ステータスは平均的に高いけど、どちらかと言えば筋力に寄ってるね」
『なっ!?』
「メリノはLv90くらい。ステータスは⋯⋯暗殺者に近い? 羊族だし糸や暗器で戦うのかな?」
「っ⋯⋯!」
何だコイツ。俺達のステータスを殆ど当ててるぞ? 何かのスキルか?
「あー、ごめん。私は狩人の勘っていう、相手のステータスが何となく分かるユニークスキルを持ってるんだ。気になる相手にはどうしても使っちゃうんだよね」
『ほ~⋯⋯』
流石冒険者ギルド。その長はとんでもない奴みたいだ。ちょっと鑑定⋯⋯。
名称・ネルシア
年齢・28歳
種族・獣人〈灰猫族〉
職業・爪闘士
Lv・192
・装備
バインド・キャットの戦爪
ロック・キャットの革胸当て
シャドー・キャットの外套
ウィング・キャットの革ブーツ
・スキル
爪聖術3、蹴聖術2
火炎魔法2、疾風魔法3、雷鳴魔法1、強化魔法6、
生活魔法、魔闘魔法7
打撃耐性4、火炎耐性6、大地耐性3、猛毒耐性4、
石化耐性5、麻痺無効、激昂耐性6
怪力5、障壁6、縮地7、心眼2、軟体4、隠密6、
消音7、擬態4、威圧6、威嚇5、陰分身3、
鑑定遮断、魔力操作2、暗視10、鷹の目6、
集中2、予見4
気配感知4、振動感知6、音源感知8、熱源感知4、
魔力感知4、危機察知9、強者察知7、急所察知9
解体9、軽業7、曲芸6、警戒8、狩猟10、
地図記憶4、跳躍10、追跡6、投擲2、捕縛4、
目利き10、連携6
HP回復6、SP回復4、HP強化4、SP強化6、
筋力強化7、耐久強化5、俊敏強化8、五感強化8、
斬撃強化4、火炎強化3、ビーストハンター5
・ユニークスキル
狩人の勘
おお、中々に強い。殆どのスキルが上級に入ってるし、Lvも俺の半分以上だ。
因みにゲームだと最大Lvは999だ。ただそこまで到達した奴はいないし、プレイヤーの中で最も高いとされていたのが528だった。
「さて、冒険者登録の件だったね」
『お、おう。で、どうなんだ?』
「良いよ。Bランクの魔物を倒す程だ。こんな逸材を捨て置くのも勿体ない。私達冒険者ギルドは君達を歓迎するよ」
よっしゃ! これで取り敢えず目標の一つはクリアだ! 俺は小さくガッツポーズをする。
「じゃあ冒険者カードの発行、そして職業登録をしようか。着いてきて」
ネルシアの案内で部屋を出ると、すぐ近くの階段を下っていく。
階段の先には青白く光る巨大な水晶が置かれていて、辺りには魔力が多く漂っていた。
『ここは?』
「登録の間って呼んでるね。その魔水晶で冒険者登録、職業登録をするんだ」
『成る程。だけど俺は既に職業は持ってんだけど、どうすりゃ良いんだ?』
「その場合は冒険者登録だけで大丈夫だよ。メリノはどうするの?」
「⋯⋯職業の変更は出来るのでしょうか?」
メリノの問いにネルシアは頷く。
「では、職業の変更を」
「分かったよ。じゃあ楽な姿勢でその魔水晶に触れてくれる?」
ネルシアにそう言われるとメリノは魔水晶に触れる。するとポーン⋯⋯という音と共に魔水晶から魔力が湧き出てきた。
多分この魔力が職業に影響するんだろう。これで職業によるステータス補正が受けられるって事か?
「職業は何にするの? 君だと魔術師、盗賊、暗器使いの三つだけど」
魔術師はまんま魔法を使う職業。盗賊は罠関連や窃盗。暗器使いは糸や投擲具で戦う職業だな。
職業には戦闘職と非戦闘職の二つがある。戦闘職に就くとステータスに補正が入るから自分に合った職業を選ぶのが一般だな。
ゲームだと最初のキャラメイキングで選び、その後は冒険者ギルド、または商業ギルドって所で大金払って変更出来るんだけど⋯⋯ここら辺も変わってるのかね?
「暗器使いでお願いします」
「はいよー」
ネルシアは魔水晶の横にある石版を指で叩く。すると魔水晶が光り、魔力がメリノに吸い込まれていった。
「はい、これで良い筈だよ」
メリノはウィンドウを開くとステータスを確認する。チラ見すると、職業は家政婦から暗器使いになっていた。
「⋯⋯大丈夫です」
「良かった良かった。じゃあこれ、冒険者カードね」
メリノは赤色のカードを受け取る。そこにはメリノの名前が書かれていた⋯⋯いつの間に作ったんだ、このカード。
「はい、次はランヴェルだよ」
『あいよ』
俺も魔水晶に触れる。先程と同じで魔力が溢れたが、メリノとは段違いの量だ。
「およ? 私が思っていたよりも魔力が多いね。Lvを考えてもう少し低いと思ってたけど⋯⋯」
ネルシアの言葉から推測するに、恐らくLvとかステータスが影響して魔力量が変わるんだろう。思っていたよりも魔力が多いという事は他の要素も影響するのか?
そう言えば俺の職業、聖王はゲームでは見なかった職業だ。王という名前が付くくらいだから結構高い場所に位置づけされる職業なんだろうな。補正もきっと凄いんだろう。
「まあいいや。職業変更はしないんだよね?」
『ああ』
「じゃあこのまま登録と⋯⋯はいどうぞ」
ネルシアから、メリノと同じ名前が書かれた赤いカードを渡される。
さっきはチラッと見ただけで分からなかったんだけど、このカードの材質は赤銅らしい。
「君達はEランクからのスタートだ。本当はCからでも良いんだけど、そこからは他のギルマスとも話し合わないといけないからね」
Gを飛ばしてEからか⋯⋯まあ、さっさとランクを上げたい俺にとっては嬉しい限りだ。
「さて、君達は冒険者になった。それによって何個か義務が発生するよ」
『義務?』
「うん。まず、怪我や病によって動けない限りは一週間に最低一回は依頼を受けてもらう。そうしなければ降格、ギルドからの追放もあり得るよ」
『ほうほう』
「他にはまあ⋯⋯報告の虚偽をしない。緊急収集が掛かったら必ず来ること。所属ギルドから離れる場合はちゃんと報告すること。こんくらいかな?」
結構縛りは無いみたいだ。まあ規則が多かったら自由に動けないからな。当たり前か?
「最近は三界大戦とかでピリピリしてるから、それ関連の依頼も来るかもね」
三界大戦? 何だそれ。今度メリノに聞いてみるか。
その後、冒険者登録を終えた俺達はギルドを出て商業ギルドを探した。ネルシアに教えてもらったお陰で迷わず来られたな。
因みにこの世界のギルドは四つある。
一つは俺達が登録した冒険者ギルド。魔物の討伐や迷宮の攻略を主に行っている。
二つ目は商業ギルド。冒険者が持ち込んだ素材や武具を買ったり、冒険に便利な道具の類いを売っている。勿論普通の人達が必要とする道具も売ってるな。調理器具とか。
三つ目は魔法ギルド。魔法の研究や魔道具の開発を行っている。ゲームだと冒険者ギルドや迷宮のせいであまり目立ってなかった。
最後は闇ギルド。暗殺や奴隷の売買を行っている。闇という名前の通り、多くのプレイヤーに存在を知られてなかった。攻略サイトに掲載したり人に教えるするのもタブーとなってたな。
ゲームと同じならこんな感じだけど⋯⋯この世界は所々違うのもあるから確信は無い。もしかしたらかなり似てるだけで違う世界なのかもしれない。いや、異世界だから違うも何もかもないんだけどさ⋯⋯。
「ご主人様、着きましたよ」
『はいよ』
商業ギルドに入ると、冒険者ギルドとは違った会話が聞こえてくる。メリノを見ると即座に耳栓を付けていた。
『えーっと、買い取りしてくれる所はどこだ?』
辺りを見渡すと何人かの冒険者が並んでいる所を見つけた。看板には買い取りと書かれている。
っていうか王国の危機が迫ってたのにみんなはもう通常営業か。流石冒険の国、強かですなあ。
「次の方ー」
暫く並んでいると俺達の番になる。カウンターの前に行くと、ストレージからワイバーンの素材を出した。
「わわっ!?」
「買い取りをお願いします」
「は、はい! 暫くお待ちください!」
カウンターで接客していた店員は素材を何度も往復して奥の方に持って行く。
『何フィールくらいになるんだろうな』
「丁寧に解体したのでそこそこな金額手には入るかと」
そうそう、元の世界でもそうなんだろうが解体の出来によって値段が変わる。
例えば、ウルフの素材の値段が千フィールとしたら、解体の出来が良ければ千五百フィール。良くなければ八百フィールにまで落ちる。
俺の解体スキルは最大Lvの10。メリノは5。確実に値段は上がるだろう。
十数分後、でっかい金袋を持ってきた店員が戻ってきた。
「お待たせしましたぁ! 全部で百万フィール、解体が丁寧だったので上乗せで十万フィール。合計で百十万フィールです!」
中身を確認すると、眩い光を放つ銀貨が金袋の中に大量に入っていた。
どうして金貨じゃないのかと言うと、他の店では金貨を渡しても釣りが出せないからだ。
普通の人達は銅貨から銀貨を使って生活する。それ以上になると貴族とか稼ぎが良い者がレア素材のオークションとか、大きな金が動く所くらいだ。冒険者ギルドや商業ギルドはそこら辺を考えて、多少重くなっても銀貨で渡すんだろう。
っていうか俺の全財産以上の金って⋯⋯この世界、結構稼げるな。いや、ゲームの時に色んな物を買ってて金遣いが荒かったせいで貯金してなかったからな⋯⋯。
俺は金袋を受け取るとその半分をメリノに渡す。
「これは?」
『暫くパーティーでやるんだろ? 手に入れた金は分け合わなきゃな』
「⋯⋯私は」
『私は要らないとかナシ。俺一人で手に入れた金じゃないからな』
メリノは最初渋っていたが、俺が折れないと分かったのか受け取ってストレージに入れる。
『おっし。じゃあ夜中だし宿でも探すか。明日は買い物して早速冒険に出よう』
「はい」
結構時間が経ってたみたいだ。まあ、この王国に来る頃には既に日も暮れてたからな。
人通りの少なくなった大通りを歩いていく。開いていた露店も店仕舞いを始め、今度は酒場や宿屋が盛り上がり始めた。
「⋯⋯夜中でも賑やかですね」
『そうだな。それくらい居心地が良いんだろうなあ』
俺達が来た時は初っ端ワイバーンで王国が壊滅しかけたけど。
「あ、あの宿屋などはどうでしょうか」
『ん? おっ、良い感じだな。あそこにするか』
「⋯⋯ご主人様」
『ん?』
振り向くと、メリノが丁寧に頭を下げていた。
「これからも、よろしくお願いします」
『⋯⋯おう。よろしくな』
その後、俺達は宿屋でチェックインすると明日に備えてしっかりと休んだ。
まあ、俺は生き物じゃないから飯も睡眠も必要無かったけどな。決して宿屋の食事が美味しそうとか思ってない。
はいどーも、作者の蛸夜鬼です。前回の変更点で記載するのを忘れていた物を書いておきます。
・英語が通じないというのを消去。
これの理由としては、魔法や魔物が英発音なのと、今後考えてる展開的に英語が通じないのは難しかったからです。
さて、今度こそ変更点は終わりです。それではまた次回お会いしましょう!