♯6 飛龍の討伐
『冒険の王国・ゼルガルダル』
多種多様な種族が住み、冒険者ギルド本部や王国の周りに存在する多くの迷宮が特徴的な国。現在最も力を持っている国でもある。
統治している王は『ドルド・ゼルガルダル』。
『メリノ、お前は強化魔法で援護してくれ』
「承りました」
メリノはそう言って擬態を使って姿を消す。俺は魔眼の一種である呪法眼を使った。
《擬態》周りの風景と同化して姿を隠す。発動中はSPを持続的に消費する。
《呪法眼》視界に入っている相手のステータスを下げる魔眼。
呪法眼というのは魔眼スキルの一つだ。視界に長く入っている程ステータスを減少していくもので、高Lvの相手にはかなり重宝するスキルだな。
『さあ、お前らの相手は俺だっ! インサイト!』
俺はインサイトを発動してワイバーン共の敵意をこちらに向ける。ワイバーン共は俺に向かって炎を吐いてきた。
《インサイト》盾術Lv1の戦技。相手の敵意を自らに向け、攻撃を集中させる。
《盾術》盾を扱い戦う為のスキル。敵の意識を向けたり耐久を上げる戦技などを覚える。
どうでも良い話だが、スキルを発動する際は声に出さなくても良い。しかし出した方が威力や効果が上がったりするから、俺は声に出して発動する派だ。けっして厨二病ではないからな。
「フィジカルアップ、ガードアップ」
《フィジカルアップ》強化魔法Lv1の魔法。一定時間味方一人の筋力を強化する。
《ガードアップ》強化魔法Lv2の魔法。一定時間味方一人の耐久を強化する。
《強化魔法》援護系魔法の一つ。味方のステータスの強化を促す魔法を操るスキル。
それと同時にメリノからの援護が入る。鎧や盾の性能が高い事とメリノの援護のお陰で俺は傷一つ無く耐える事が出来た。
『縮地!』
そして俺は移動用スキルである縮地を発動した。
《縮地》ノーモーションで近くの距離を即座に移動するスキル。他のスキルを使用中でも発動出来る。
ワイバーンは突然目の前に俺が現れた事に驚いたのか変な鳴き声を出して硬直する。
『喰らえっ!』
その隙を見逃す訳がなく、斧槍を勢いよく叩きつけた。バキバキと音を立てて鱗が砕けて肉が裂け、真っ赤な鮮血が俺の鎧を赤く染める。
頭を砕かれたワイバーンは断末魔を上げる事なく地面に倒れた。
『っしゃオラァ! まず一匹!』
やっぱりLv差のお陰でワンパン出来るな。筋力も強化されてるし、あまり苦戦しなさそうだ。
すると残ったワイバーンは近くは危険だと判断したのか大きく上昇する。しまった、縮地の範囲外だ。
「マジック・エンチャント、クイック・スロー!」
《マジック・エンチャント》魔闘魔法Lv1の魔法。ほんの少しMPを消費し、武器に魔力属性を付与する。
《魔闘魔法》獣人の固有魔法。武器や身体を少量のMPを消費して強化するスキル。
《クイック・スロー》投擲術Lv1の戦技。無駄を省いた動きで素早くで武器を投擲する。威力は低い
《投擲術》投擲具を扱い戦う為のスキル。威力は低いが素早く発動する戦技などを覚える。
ワイバーン共を撃ち落とそうと魔法を放とうとするとメリノの声と共に青い魔力を纏った大きな針が高速で投擲された。それは吸い込まれる様に二匹の翼膜に穴を開け、ワイバーンを撃ち落とした。
「申し訳ありませんご主人様。二匹しか落とせませんでした」
『いや、十分だよ。ってか凄いなお前』
獣人の種族魔法である魔闘魔法で武器を強化、投擲術で投げた針で撃ち落としたか。Bランクの魔物を倒したってのも嘘じゃないかもな。
因みに種族魔法ってのは文字通り種族がそれぞれ持ってる魔法の事だ。獣人の魔闘魔法ってのは武器やステータスを魔力で強化する魔法だな。
俺は人間の固有魔法を持ってたんだけど鎧になったせいで無くなった。あまり使わなかったとは言え、スキルを無くしたのは痛手だなぁ⋯⋯。
『じゃあ片方はお前に任せるぜ』
「承りました」
俺は落ちてくるワイバーンの片方へ走る。そして斧を構えると
『チャージ・スラッシュ!』
上級斧術のスキル、チャージ・スラッシュを発動する。
《チャージ・スラッシュ》上級斧術Lv7の戦技。発生は遅いが、力を溜めて重く威力の高い斬撃を放つ。
《上級斧術》斧術を極めた者が習得するスキル。強力な一撃を放つ戦技を習得出来る。
そしてワイバーンの首が目の前に落ちてくると
『オラァアアアア!』
勢いよく斧槍を振る。力が溜まった斧槍の一撃はワイバーンの硬い鱗を豆腐の様に切り裂き、首を飛ばした。
良し、後はメリノだが⋯⋯。
「フィジカルアップ、ソード・ワイヤー」
メリノはワイバーンが落ちてくる前に自分の筋力を強化、更に糸の切れ味を大幅に上げるソード・ワイヤーを使った。
《ソード・ワイヤー》糸術Lv3の戦技。糸に斬撃属性を付与し、更に切れ味を大幅に上げる。
そしてワイバーンが落下すると同時に糸を鱗と肉の隙間に潜らせると滑らせる様に糸を操って鱗を剥いだ。
「チェックメイトです」
そう言ったメリノは露出した肉に糸を通す。まるでミスリル剣の様な切れ味を持ったその糸は綺麗に首を切り落とした。断面を見ると、どうやら首の骨の関節を狙って斬ったみたいだ。器用だなあ⋯⋯。
ってか本当にLv差が30も空いてるのか? ここまで戦えるとは思ってなかったんだが。
それに簡単そうに鱗を剥いだけど相当な、それも暗殺術に近い技術を持ってなきゃ難しい筈なんだが⋯⋯う~ん、メリノの謎が深まる。
「さあ、ご主人様。残りも落としてしまいましょう」
『お、おう』
まあ、いずれ分かる事だろう。今は目の前の敵に集中だ。
『で、また針で落とすのか?』
「いえ、流石に高すぎて届きませんよ」
『まあ、そうか』
残ったワイバーンは先程落とされた仲間を見て学習したのかめっちゃ高いところで旋回している。魔法も⋯⋯届きそうにないな。
暫くどうしようか悩んでいると一匹のワイバーンが空中で停止する。そして雷鳴魔法のサンダー・スピアを放ってきた。
『うぉおおお! 避けろ避けろ!』
《雷鳴魔法》混合魔法の一つ。火炎と疾風の混合魔法。雷鳴の魔法を操るスキル。
《サンダー・スピア》雷鳴魔法Lv7の魔法。雷鳴の槍を作り出し発射する。金属鎧を装備している敵や浮遊する敵に効果が高い。
雷を諸に喰らったら全身金属である俺では、命である魔石にダメージが通る。そんな魔法を盾で受ける訳にもいかず、なんとか避けた。
もう一匹のワイバーンもそれを見て魔法を放ってくる。クソっ、知恵がある分厄介だな!
『舐めんなよこの蜥蜴が! 空中浮遊!』
《空中浮遊》空中を浮遊して空を飛ぶスキル。発動中はSPを持続的に消費する。
このスキルなんだが、俺の大量のMPと最大LvのMP自動回復を持ってしても約五分程度しか飛べない大食いスキルだ。
《MP自動回復》時間経過でMPを少量ずつ回復するスキル。Lvが上がるごとに回復効果は上がっていく。
『お前ら相手なら十分だけどな!』
風を切る音を聞き、魔法を避けながらワイバーンとの距離を詰めていく。そしてある程度近付くと
『オーラ・アックス!』
SPを武器に纏わせ、それを斬撃として飛ばすオーラ・アックスを発動した。
《オーラ・アックス》斧術Lv5の戦技。SPを纏わせ、黄金の斬撃を飛ばす。
《斧術》戦斧を扱う為のスキル。範囲性のある戦技などを習得出来る。
黄金に光る斬撃はワイバーンの体を切断し、一匹を落とした。
『残るはお前だけだ!』
そう言って残った一匹に体を向けると目の前にメリノが現れた⋯⋯んんっ!?
『何でお前までいるんだよ!?』
メリノは何も答えず、糸を伸ばしてワイバーンの頭に巻き付けるとそのまま懐に潜り込む。そして喉元目掛けて
「アイス・ニードル」
氷魔法のアイス・ニードルを放った。
《アイス・ニードル》氷魔法Lv4の魔法。氷結属性の針を何本も作り出し、敵に向かって発射する。
《氷魔法》四属下級魔法の一つ。貫通性能の高い氷の魔法を操るスキル。
メリノが攻撃したあの場所は⋯⋯逆鱗か!
ワイバーンを含め、竜系統の魔物には喉元に逆鱗と呼ばれる弱点がある。そこは竜のどの部位よりも柔らかく、攻撃が入ればほぼ確実に倒せる場所だ。まあ、懐に入らなきゃいけないのとかなり小さいので狙う奴はあんまりいないが⋯⋯。
氷の針を逆鱗に刺されたワイバーンは断末魔を上げて落下していき、メリノは糸を外すと俺の足に再び巻き付けて移動し、そのまま背中に抱き着いてきた。おお、何か柔らかいものが⋯⋯鎧だからあんまり感じないけど。
『で、何でお前はここにいるんだよ』
「ご主人様が飛んだ際に足に糸を巻き付けて着いてきました」
ああ、通りで何か速度出ないなと思ったんだ。というか今の動き、完璧に蜘蛛男だったな。
「さあ、早く降りて素材を回収しましょう」
『お、おう。そうだな』
しかし、Bランク相手にも怯まず寧ろ適切な攻撃を出す。更には空を飛ぶ俺についてきて一匹を落とす、か。本当に何者なんだろうな、メリノは。
その後、俺とメリノは手分けして解体し、ワイバーンの鱗や爪、内臓を手に入れた。さてさて、ギルドの連中は何て言うかな。
はいどーも、作者の蛸夜鬼です。えー、実はですね。プロローグから今回の話の文章を複数編集しました。詳細は下記の通りです。
・一部の文章を編集、削除、追加。
・スキルの《》を取り外し。
・スキル名を漢字からカタカナのみに変更。
・アーク・ワイバーンのランクをBに変更。
突然編集してしまい、申し訳ありません。以降はこの様な事が無いようにしたいと思います。
あ、もしもスキルには《》を付けてほしいという方がいましたら考えたいと思います。
それでは今回はここまで、またお会いしましょう!