♯28 ソロンの力比べ
《魚人》
高い水泳能力を持つ、人と魚が合わさった様な種族。水を操り、水辺での戦闘は一騎当千の力を見せる。
『さてみんな、ソロンがパーティーに加わる事になった訳だが』
ソロンが俺達のパーティーに入る事が決まった翌日の朝。みんなが朝飯を食ってる中で俺は一人話を始める。
『パーティー人数が六人に増えた為、今一度基本戦略や立ち位置を確認していきたいと思います。はい拍手』
「ご主人様、朝食の後にお願いします」
『アッハイ』
って事で、メリノに怒られた俺はみんなが朝飯を食い終わるまで大人しくしておく。んで、みんなが食い終わったのを見計らってからもう一度話を始めた。
『んじゃあ今度こそ⋯⋯はい拍手』
「わ~わ~」
「ドンドンパフパフ」
「わ、わ~⋯⋯?」
うん。相変わらずアリスとレナはノリが良くて良いな! ソロンも慣れないながらもノってくれたし、将来有望だぜクォレハ⋯⋯。
『ノリ良いなぁお前ら。嬉しいから飴ちゃんあげちゃうもんね』
「やった~!」
「ん」
「ありがとう、ございます」
『んじゃあ取り敢えず、みんなのスキルやら何やらで戦略を考えますか』
って事で、中々出番が少ない鑑定眼を発動。ついでに俺のステータスも確認しとこ。
名称・ランヴェル
年齢・──
種族・聖王の鎧
職業・聖王
Lv・322
・装備
聖王の斧槍(霊体攻撃、血糊防止加工、重量軽量化、自動修復、破壊硬化)
聖王の大盾(損傷軽減・大、物理反撃、重量軽量化、自動修復、破壊硬化)
聖王の兜(視界広域化、重量軽量化、自動修復、破壊硬化)
聖王の鎧(耐久強化・大、重量軽量化、自動修復、破壊硬化)
聖王の鎖帷子(耐性強化・大、重量軽量化、自動修復、破壊硬化)
聖王の篭手(筋力強化・大、重量軽量化、自動修復、破壊硬化)
聖王の足甲(俊敏強化・大、重量軽量化、自動修復、破壊硬化)
聖王のマント(魔法無効化、重量軽量化、自動修復、破壊硬化)
聖王の首飾り(魔力強化・大、聖王の慈悲、自動修復)
・スキル
上級斧術10、上級槍術4、大盾術10
火炎魔法10、氷結魔法10、疾風魔法10、
大地魔法10、雷鳴魔法10、溶岩魔法10、
吹雪魔法10、凍土魔法10、砂塵魔法10、
閃光魔法10、暗黒魔法10、回復魔法10、
快復魔法10、強化魔法10、弱化魔法10、
異常魔法10、神経魔法10、精神魔法10、
時空魔法10、生活魔法
物理耐性10、魔力耐性10、状態異常無効、
神経異常無効、精神異常無効
怪力10、瞑想10、金剛10、防壁10、縮地10、
心眼10、軟体10、隠密10、消音10、擬態10、
覇気10、慈愛10、威嚇10、無詠唱、
高速並列10、陰分身10、鑑定遮断、空中浮遊10、
念話、悪魔の口付け10、魔力操作10、暗視10、
鷹の目10、集中10、予見10
生命感知10、危機察知10、強者察知10、
弱点察知10、急所察知10、罠察知10
解体10、軽業10、曲芸10、警戒10、採取3、
栽培1、指揮3、狩猟10、地図作成10、
地図記憶10、跳躍10、追跡10、投擲10、
伐採10、捕縛10、魔道具作成10、目利き10、
料理2、連携10、罠解除10、罠作成10
HP回復10、MP回復10、SP回復10、
HP強化10、MP強化10、SP強化10、
筋力強化10、魔力強化10、耐久強化10、
耐性強化10、俊敏強化10、五感強化10、
物理強化10、魔法強化10、魔物の殲滅者10
・ユニークスキル
聖王の瞳、聖王の加護
名称・メリノ
年齢・21歳
種族・獣人《羊族》
職業・暗器使い
Lv・107
・装備
魔鉄の鋼糸(暗殺時即死効果)
魔鉄の大針(命中率強化・小)
魔鉄糸のメイド服(防御力強化・小、魔力強化・小)
フォレスト・ウルフの革ブーツ(俊敏強化・小)
・スキル
投擲術5、糸術9
火魔法4、氷魔法4、土魔法6、光魔法3、
強化魔法5、弱化魔法3、時空魔法4、
生活魔法、魔闘魔法5
打撃耐性6、火炎耐性6、氷結耐性4、閃光耐性2、
魔封耐性3、睡眠無効、激昂耐性6、痛覚無効、
精神異常耐性4
障壁4、瞬発4、柔軟5、隠密8、消音8、擬態7、
詠唱短縮2、並列思考4、魔力操作7、集中5、
予見3、睡眠攻撃6、痛倍攻撃3
悪意感知7、気配感知8、振動感知6、音源感知6、
魔力感知7、危機察知7、強者察知8、弱点察知8、
急所察知9、罠察知5
鑑定眼
解体6、軽業4、欺瞞10、宮廷作法8、教導5、
曲芸6、御者7、警戒4、裁縫10、社交5、
狩猟5、窃盗1、地図作成3、跳躍5、追跡5、
逃走6、投擲6、捕縛4、目利き4、料理8、
連携5、罠解除3、罠作成5
MP回復4、SP回復3、MP強化5、SP強化3、
魔力強化5、耐性強化4、五感強化4、氷結強化4、
イビルスレイヤー3、ビーストハンター4
・ユニークスキル
なし
名称・カルマ
年齢・17歳
種族・蟲人《蟷螂族》
職業・戦士
Lv・42
・装備
魔鉄の大鎌『大破』
鉄蟲の軽鎧『破損』(重量軽減加工、衝撃耐性・小)
鉄蟲の篭手『破損』(重量軽減加工、筋力上昇・小)
鉄蟲の足甲『破損』(重量軽減加工、俊敏上昇・小)
蟲人の魔蟲籠(蟲国の秘法)
・スキル
鎌術7
風魔法2、異常魔法3、魔蟲魔法3、生活魔法
打撃耐性3、猛毒耐性4
剛力6、瞬発4、隠密4、消音2、擬態3、威圧4、
威嚇2、狂化7、魔力操作4、起死回生4、
予見3、猛毒攻撃4
悪意感知4、気配感知4、魔力感知3、危機察知5、
弱点察知3
運搬2、演技6、解体5、欺瞞7、軽業6、警戒6、
採取3、指揮3、狩猟6、窃盗6、跳躍5、
逃走5、料理3、連携6
HP回復4、SP回復4、HP強化4、SP強化3、
筋力強化3、俊敏強化3、五感強化4、イビルスレイヤー2、ビーストハンター3、インセクトキラー5
・ユニークスキル
なし
名称・レナ
年齢・162歳
種族・エルフ
職業・弓使い
Lv・40
・装備
氷花の弓『破損』(属性攻撃・氷結)
魔鉄の短剣(血糊防止加工)
魔狼の革鎧『破損』(衝撃耐性・小)
隠密樹の外套(気配遮断・小)
魔狼の革手袋『破損』(腕力上昇・小)
魔狼の革ブーツ『破損』(俊敏上昇・小、跳躍上昇・小)
・スキル
短剣術3、弓術5
風魔法5、土魔法2、回復魔法3、弱化魔法3、
生活魔法、精霊魔法4
斬撃耐性1、打撃耐性2、疾風耐性4
瞬発3、柔軟4、隠密4、消音4、擬態5、詠唱短縮4、
魔力操作5、鷹の目3、集中4、予見4
悪意感知3、気配感知4、振動感知3、気流感知5、
魔力感知4、危機察知3、強者察知3、急所察知3、
採取察知2
治癒眼
解体3、軽業4、曲芸4、採取4、狩猟5、調合2、
跳躍4、追跡3、逃走3、投擲3、捕縛2、目利き2、
木工1、連携5
MP回復4、MP強化4、SP強化3、魔力強化4、
俊敏強化4、五感強化3、貫通強化3、
疾風強化3、イビルスレイヤー2、
ビーストハンター1、バードハンター4
・ユニークスキル
なし
名称・アリス
年齢・65歳
種族・魔族《魔人》
職業・道芸人
Lv・21
・装備
毒薔薇の茨鞭『破損』(属性攻撃・猛毒、属性攻撃・痛覚)
魔鉄のソードブレイカー(血糊防止加工)
魔鉄のジャグリングピン(魔法媒体、命中率上昇・小)
魔鉄糸のピエロ帽『破損』(魔法威力上昇・小)
魔鉄糸のピエロ服『破損』(魔法耐性・小、衝撃耐性・小)
魔鉄糸のピエロ靴『破損』(俊敏上昇・小、跳躍上昇・小)
・スキル
短剣術3、鞭術6、投擲術3
火魔法4、闇魔法6、精神魔法4、生活魔法、
爆発魔法5
火炎耐性2、激昂耐性2、魅了耐性1
静思4、瞬発3、見切り3、柔軟5、詠唱短縮4、
影分身3、空中跳躍4、魔力吸収4、
魔力操作5、集中4、予見3、魅了攻撃3
悪意感知3、気配感知5、魔力感知5、強者察知5、
弱点察知4、急所察知4
解体4、軽業5、欺瞞4、曲芸6、御者3、拷問2、
狩猟5、跳躍4、逃走3、捕縛3、連携6
SP回復4、HP強化3、MP強化4、耐性強化3、
俊敏強化4、五感強化4、火炎強化5、
暗黒強化4、ビーストハンター2、インセクトキラー2、バードハンター1、イビルキラー2、アンデットキラー1、マジカルクラッシャー1
・ユニークスキル
なし
名称・ソロン
年齢・12歳
種族・人間
職業・ソロモン召喚士
Lv・1+300
・装備
ソロモンの指輪(ソロモン七二柱召喚)
・スキル
──
・ユニークスキル
ソロモンの恩恵
ソロモンの代償
う~ん、みんなレベルアップやスキル強化されていて何よりだ。あ、そうそう。ソロンのユニークスキルの効果なんだが、聞いた感じだとこんな風なんだそうだ。
《ソロモンの恩恵》ソロモン七二柱の悪魔を非常に高い友好関係を持って召喚出来る。また、悪魔の持つ能力を条件無しで使用可能な上、Lvとステータスに特殊な補正が掛かる。
《ソロモンの代償》Lv、スキルを一切習得することが出来ず、また自身の顔を一定期間見た同族から大きな嫌悪感を抱かれる。
⋯⋯って感じらしいな。どうやら村人から変に嫌われてたのは悪魔召喚って事以外に、ソロモンの代償の効果もあったみたいだ。
一定期間の詳しい時間は分からないが、ソロンが指輪を付けたのが十歳の時。今が十二歳だから、半日程ソロンの顔を見たリッター達が嫌悪感を抱いてない事から大体半年から一年間の間、といった感じか?
そうそう、一度指輪を外して見せてもらったんだが何とも難解な魔法言語で術式が組まれてた。魔道具作戦スキルがカンストしてる俺でも全然分からんかったな。流石Sランクだ。
まあ、それは置いといて⋯⋯スキル構成や装備を考えてみんなで話し合った結果、前衛は俺とカルマ、マティア。中衛はメリノ、アリス。後衛はレナ、ソロン、シルフィという事になった。
基本的な戦略は俺が前に出て攻撃を防ぎ、カルマとマティアが攻撃。メリノとアリスはそれの援護と、前衛が取り逃がした相手の掃討。レナとシルフィ、ソロンは俺が随時命令して、場合によってはソロンに悪魔召喚してもらって戦力増強、って感じだな。ソロンには最終的に遊撃として動いてもらう。
しっかし⋯⋯聖王、鎌戦士、暗殺者、道化師、弓使い、悪魔召喚士のパーティーってかなり変わり者な職業が集まってんな。しかもファンタジー武器の代名詞である剣を誰も使ってないっていうね。
『さてと、じゃあ話し合いも終わった事だし冒険者ギルドと商業ギルド行くかぁ』
「ご主人様。私は家事を一通り終わらせてから出たいのですが」
『オーケー。んじゃあメリノは後から合流って事で。場所はギルドな。カルマ達は⋯⋯金も溜まってきてるし装備の新調だな。今装備してる防具とかボロボロだろ。カルマは武器も壊されてるしな。で、その後にソロンの冒険者登録って事で』
「うん。分かったよ」
「ん」
「はいは~い」
「分かり、ました」
それで俺達は家を出ると、まずは商業ギルドにある武具エリアに向かう。この武具エリアには武器防具の店は勿論、工房とかも完備されてる。あ、オーダーメイドも受け付けてるから場合によってはそっちの方が良いかもな。
『さ~って、まずはお前らの武器を買っちまうか』
一番良いのは値段もそれなりで性能も良い魔鉄なんだが⋯⋯ちょっと奮発して魔鉄の上位互換である魔鋼の武器にしちまうか。
そんな事を考えながら武器屋にやって来た俺達は早速装備を見ていく。ソロンにも自衛用の武器でも買おうと思ったんだが、武術スキルが上がらない以上無用だと考えて買わない事にした。まあソロンは悪魔の能力が使えるし多少は大丈夫だろうしな。
『お前ら、良いのあったかー?』
「う~ん⋯⋯やっぱり鎌は需要が低いのかな。魔鉄以上の武器は置いてないや。後でオーダーメイドしても良いかな?」
「魔樹のコンポジットボウがあった。これにする」
「見て見てランヴェル~。魔鋼の鎖鞭だって~。ちょっと重いけど強そうじゃない~?」
『鎖系の鞭は筋力が高くないと使えねえぞ。大人しく普通の鞭とかにしとけ』
そんな事を話しながら、カルマはオーダーメイドで魔鋼の大鎌を頼み、一先ず魔鉄の大鎌を購入。レナは魔樹のコンポジットボウ。アリスは呪毒蛇の皮鞭を買った。
さて、武器も買ったし次は防具だな。って事で防具屋にやって来た俺達はまた装備を物色する。ソロンには⋯⋯そうだなぁ。軽くて丈夫な革装備でも買ってやるか?
『鑑定っと』
鑑定眼を発動し、店内にある革装備を一つ一つ見ていく。その中でも値段が安く性能が高いデーモンラーテルのハイドアーマー、グローブ、ブーツ、を見つけたからそれを手に取る。ついでにストレージからシンプルな仮面を取り出すと
『ソロン、この防具ちょっと付けてみてくれ』
「分かり、ました」
ソロンにそれらを渡して試着室で着替えさせる。暫くすると出てきたが⋯⋯うん、ぴったりだな。ブカブカだったらベルト締めれば良いと思ってたけどそれも大丈夫そうだ。仮面のお陰で顔も隠れるし、代償の効果がこれで和らぐだろ。
『どうだ? 重すぎたり動きづらかったりしないか?』
「大丈夫、です」
『オッケー。んじゃあそれはパーティー入隊の餞別だ。金は払っとくぜ。あ、仮面は外出するときは付けとけな』
「はい。ありがとう、ございます」
『おう。お前らはどうだ? 良さそうなのあったか?』
ソロンの防具を買うことにした俺は三人の様子を見る。どうやらまだ物色してるみたいだな。
「ごめん、もう少し待っててくれるかな。中々良さそうな軽鎧が無くてね」
「ん、これにする。アーヴァンクのハイドアーマー。強そう」
「ピエロ服が無いよ~? ボクもオーダーメイドしようかな~」
『ん~、カルマはこのメタルアントの軽鎧なんてどうだ? 性能も高いぞ? アリスは⋯⋯そうだな。オーダーメイドしとけ』
そんなこんなでカルマはメタルアント一式。レナはアーヴァンクっていう青色ビーバーのハイドアーマー一式。アリスは魔鋼糸のピエロ服をオーダーメイドして、繋ぎとして魔鉄糸のローブ。そしてソロンはデーモンラーテルのハイドアーマー一式だ。
で、みんなは早速その防具に着替えた訳だが⋯⋯。
『う~ん⋯⋯』
「えっと⋯⋯」
「⋯⋯」
「⋯⋯?」
「何でボクの事ジロジロ見てるのかな~?」
アリス、がなぁ⋯⋯何かアリスはピエロ服ってのが定着し過ぎてローブ姿が凄い違和感ある。チラッと見ただけじゃアリスだって分かんねぇんじゃねえか?
『ま、装備も買ったし早速ギルド行くか。メリノもそろそろ待ってるだろうしな』
そう言って俺達は冒険者ギルドに向かう。途中、ソロンの仮面姿が気になったのか冒険者がジロジロと見ていたが⋯⋯代償の効果は様子見だな。
あ、あとソロンにアイテムポーチと適当な道具を渡した。ポーチの中身は非常食とか大量の水だ。あと少しの金も入れてある。
『おう、メリノ。待ったか?』
「いえ、今さっき来たところです」
んで、ギルドの前で待ってたメリノと合流するとギルド内に入る。う~ん、相変わらずの騒がしさ。平常運転で何よりだと僕は思いました、まる⋯⋯あれ、どこの感想文?
そんな馬鹿な事を考えながらギルドの受付を見つける。どうやら今日はガルスはいないみたいだな。代わりにいつもガルスがいる受付には、眼鏡を掛けた受付嬢が担当している。
取り敢えず四人には適当な場所で待って貰って、俺はソロンと一緒に受付へと向かう。
『すんませーん』
「はい! 冒険者ギルドへようこそ。今日はどんなご用件でしょうか?」
『えっと、こいつの冒険者登録とパーティー登録に来たんすけど』
「こんに、ちは」
受付嬢は俺の隣にいるソロンをまじまじと見る。仮面姿が気になるのか、少し訝しげな表情を浮かべたがすぐに業務に戻る。
「冒険者登録ですね? 冒険者登録についての説明は必要でしょうか?」
『頼みます』
「分かりました。まず冒険者登録の必要条件ですが、十歳以上の事。身体面と精神面において、最低限の依頼を受注可能な事。そしてギルドに所属しているBランクの冒険者と模擬戦を行い、その冒険者から能力を認められる事になります。」
『へー。だってよソロン』
「えっと、冒険者の人に勝てば、良いんですか?」
「十歳以上、身体面や精神面に異常が無ければそうなりますよ。貴方は大丈夫でしょうか?」
『コイツは十二歳で、そこそこ動けるんで大丈夫っすよ。身体は小さいけど問題無いと思います』
「はい、大丈夫、です」
「分かりました。それではこちらに」
そう言った受付嬢はギルド裏側にある訓練場まで連れて行く。訓練場では冒険者達が模擬戦とか訓練用案山子で訓練をしていた。
「え~っと⋯⋯あ、アランさん!」
受付嬢は辺りを見渡し、新人冒険者の指導を行ってたらしい男に声を掛ける。アランって名前なのか。無精髭が生えててあんまり強くなさそうだけど、一応Bランクの実力者なんだな。
「あ~? なんだ受付の嬢ちゃん」
「冒険者登録をしたいという方が⋯⋯」
「ああ、はいよー。んで、誰の事だ? こっちのリビング・アーマーみてぇな奴か?」
『リビング・アーマーとか失礼だろ⋯⋯って、そんな事はどうでも良いか。登録してぇのは俺じゃなくてコイツだ』
そう言ってソロンを前に出す。するとアランはポカンとした顔をしたあと、ゲラゲラと笑い出した。
「ハハハハッ! おい鎧の兄ちゃん、こんな小せぇ子供が冒険者登録とか冗談も程々にしてくれよ」
俺達の話を聞いてたんだろう。周りの冒険者達もアランと一緒に笑い始める。いやまあ、確かにこんな子供が冒険者登録って冗談だと思うけどさ⋯⋯。
『まあまあ、取り敢えずやってみてくれよ』
「あー分かった分かった。悪いが子供だからって手加減はしねえからな」
そう言うとアランはスタスタと距離を取ると適当に剣を構える。ありゃあ完璧に舐め腐ってんな。
『よーしソロン。取り敢えず好き勝手やってこい。適当にやりゃあ勝てる』
「そんな適当で、良いんですか?」
『おう。大丈夫だよ。攻撃来たら避けるか防御して、隙見て攻撃すりゃあ良いんだ』
ソロンのステータスならこんだけ適当に言っても大丈夫だろ。それにいざとなったら悪魔召喚すりゃあ良いんだし。
「分かり、ました⋯⋯」
ソロンは少し納得しかねてそうな表情を浮かべたが、すぐに真剣な眼差しでアランを見据える。
「おーし、がきんちょ。好きに仕掛けて来て良いぜ」
「分かり、ました⋯⋯ソロモンの恩恵第66・キマリスの鼓舞。ソロモンの恩恵第43・サブナックの武器」
アランの言葉に頷いたソロンはユニークスキルを発動する。するとソロンの背後に黒い馬に乗った戦士の幻影と青ざめた馬に乗った獅子頭の兵士の幻影が現れた。戦士の幻影はスウッとソロンに吸い込まれ、獅子頭の兵士はその姿を一本のグレートソードに変化させる。
鑑定眼を使ってステータスを確認すると、筋力と俊敏が異様な程高くなっていた。ってか俺に近付く程高くなってねえかこれ?
「⋯⋯うあぁああああああ!!」
「速っ⋯⋯ぐおっ!?」
ソロンは剣を担ぎアランに近付くと勢いよく振り下ろす。アホみたいな速度と強化された筋力によって振り下ろされたグレートソードは地面を割り、何とか避けたアランを衝撃波で吹き飛ばした。
「な、何だよコイツ!?」
「あぁああああ!!」
「やばっ⋯⋯ぐおっ!」
アランが驚き、動きが鈍ってる所にグレートソードの猛攻が叩き込まれる。剣術スキルが無いから、その剣筋は見られたもんじゃないが、そのとてつもない剣速はアランを焦らせるのに十分だった。
「クソッ!」
グレートソードの剣筋を逸らしたアランはバックステップで距離を取る。
「ソロモンの恩恵第44・シャックスの盗難!」
アランと距離が出来ると、ソロンはまたユニークスキルを発動。野鳩の幻影が現れ、その幻影はアランの顔面に突っ込んで消えていく。
「っ!? 目、目が! 目が見えねぇ!」
何だと? もしかして今の野鳩がアランの視力を奪ったってのか?
そんな事を考えていると、ソロンは目が見えず混乱しているアランへとグレートソードを振り下ろす。
ちょっと待て。ありゃあ手加減してねえぞ!? 幾ら何でもやり過ぎだ! アランが死ぬじゃねえか!
『止めろソロン! やり過ぎだ!』
そう言って走り出すが、もう遅い。ソロンのグレートソードは既に振り下ろされ、アランを斬り潰そうとした─────
「縮地! ウェポン・ブレイク!」
《ウェポン・ブレイク》爪術Lv7の戦技。相手の攻撃を見切り、武器を爪に引っ掛け破壊する。
─────次の瞬間。俺の脇を小さな影が通り過ぎ、装備している戦爪でグレートソードを砕き割る。アランとソロンの間に、いつの間にかギルマスが立っていた。
砕き割られたグレートソードはシュウシュウと煙を出し、獅子頭の兵士に戻るとその姿を消した。それと同時にソロンから戦士の幻影も出て行く。
「危なかった~。もう少し遅かったら死んでた所だね、アラン」
「そ、その声は⋯⋯ギルマスか⋯⋯?」
「あれ、もしかして目が見えてないのかな? ねえ君。これって治せるの?」
「あ、はい⋯⋯治せ、ます」
「それじゃあ早速治してあげて」
ギルマスの言葉に頷いたソロンは、もう一度野鳩の悪魔を呼び出すと、野鳩にアランの瞼を突かせる。すると視力が戻ってきたのか、アランはシパシパと瞬きをした。
「目が見える⋯⋯治った⋯⋯」
「うん。良かった良かった。それじゃあ、え~っと⋯⋯君とランヴェルは一緒ギルド長室に来てくれる?」
「分かり、ました」
『あいよ』
俺とソロンはギルマスの言葉に頷くと彼女について行く。後ろからはチクチクと冒険者達の視線が刺さったが⋯⋯こりゃあ、ソロンのイメージが悪くなったか?




