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♯26 悪魔の子

『獅子族』

 金色の髪、荒々しい(たてがみ)と非常に高いステータスが特徴的な種族。獣氏族の中で最も高い能力を持ち、百獣の王に違わず獣人の王族として知られている。

『え~っと、ここら辺の筈⋯⋯』


 ロング・ジャンプで村の中央にやって来た俺は辺りを見渡す。すると数人の村人が一つ目の五芒星みたいな悪魔に襲われていた。多分アレはデカラビアっていうソロモン第69位の悪魔だな。


『おらぁっ!』


 俺はデカラビアに向かって斧槍を投げ付ける。斧槍はデカラビアの目ん玉に突き刺さり、そのまま塵となって消え去る。


 ⋯⋯? デカラビアは塵になったんだが、その塵は光り輝いてどこかへ飛んでいった。何だありゃ⋯⋯っと、まずは村人の様子見に行かねえと。


『大丈夫か!?』


「あ、ありがとう⋯⋯」


 村人の無事を確認したが、取り敢えず怪我は無いみたいだ。俺は生命感知を最大まで引き上げ辺りの状況を確認する。


 村人に被害は⋯⋯かなり出てるな。リッター達はどうやら全員固まって他の悪魔を倒してるみたいだな。メリノ達は⋯⋯どうやらカルマ達の所で待機してるな。


 悪魔の数は十何体もいる。その内五体くらいは一人の人間の所に集まってるな。ただレッサーデーモンはいないみたいだ。だったら何の悪魔なんだ?


『おい、一体何が起こったってんだ。何でこんなに悪魔が?』


「そ、それは⋯⋯」


 村人はテンパりながらも事の発端を話し始める。話を纏めるとこんな感じだ。


 この村には悪魔の子と呼ばれる子供がいる。多分ソロンの事だな。実際、本人は覚えてないがソロンは悪魔を召喚したことがあった。


 今回の悪魔襲撃もきっとソロンの仕業だろう。そう思った村人達はソロンを殺せば悪魔も消えると思い、農具を使って暴行を加えた。するとソロンの指輪が光り、大量の悪魔が出てきたとの事だ。


『テメェら馬鹿じゃねえのか!? ガキ一人に何やってんだよ!?』


 俺はその話を聞くと、その話をした男の胸倉を掴む。勝手な被害妄想して子供に暴行するとか、何考えてんだここの村人!?


「で、でもしょうがねえだろ!? 俺達だって怖かったんだよ!」


『だからって年端もいかねぇガキを殺し掛けるとかおかしいだろ!? テメェらはまともな考えも出来ねえのか!?』


「あ、あのガキが紛らわしいのがいけねえんだろぉ!?」


『っ⋯⋯クソ野郎がぁ!』


 俺は男を死なない程度に殴り付けると斧槍を拾う。コイツらを守る気も失せた。クソ野郎なんか守ってられっか。


『テメェらは勝手に死ね!』


「なっ、俺達を守るのが仕事じゃねえのかよ!」


『うるせぇ! 元々俺はテメェらの護衛じゃなくて邪教徒の調査で来てんだよ!』


「こ、この人でなし! ふざけんなよ!」


『好きに言ってやがれクソ野郎!』


 俺は中指を立てるとそのままソロンがいるらしき場所まで向かう。途中、召喚したと思わしき悪魔が襲ってきたがレッサーデーモン並みのばっかだったから難なく倒し先に向かう。


 暫くすると開けた場所に出てその中央に五体の悪魔と、守られるかの様にソロンが座り込んでいる。多分、あのソロモンの指輪とかで召喚されたんだろうな。


『ソロン⋯⋯っぶね!』


 近付こうとすると悪魔が攻撃を仕掛けてくる。ソロンは気絶してるのか? 悪魔は主人であるソロンを守ってるのか。


『⋯⋯っ!? おい、待て待て!』


 すると強者察知が反応する。五体いる悪魔の中で、なんと三体は俺よりLvが高い! こんなのガキ一人で召喚出来るもんじゃねえぞ。どんだけの能力を持ってんだあの指輪は!?


「な、何だこれは!?」


「コイツら⋯⋯ずっと上位の上級悪魔よ? こんなのが召喚されてるなんて⋯⋯」


 あまりの敵の強さに驚いているとリッター達、琥珀の短剣がやって来る。おっしゃ! これで形成逆転⋯⋯出来る訳無いだろいい加減にしろ!


『こっち来るんじゃねえ! コイツらはアンタらよりずっと強えぞ! 相手にもならねえ!』


「それは出来ない! 僕達は元凶であるその子供を捕まえる為に来たんだ!」


『はぁっ!?』


 ソロンが元凶!? 何馬鹿な事を言ってやがる、こうなったのは村人のせいだろうが! 


『待て待て! それは勘違い⋯⋯うおっ!?』


 リッター達の誤解を解こうと思った所で、悪魔共が魔法を放ってくる。マントに当たったからダメージは無効だが、それがゴングになったのかリッター達が悪魔に攻撃を仕掛けた。


 クソッ、さっさと悪魔を消さねえとヤベぇ! 一番手っ取り早いのは召喚主のソロンに何とかしてもらうのなんだが⋯⋯。


『しょうがねぇ⋯⋯タイム・ストップ!』


 俺はタイム・ストップを使用。だがMPを大量に消費するこれは、アークデーモンとの戦いで消費していた俺のMPを殆ど持っていった。


 周囲が灰色の世界になり俺以外のものが止まったと同じに、俺の身体が思うように動かなくなる。


『ヤッベ⋯⋯』


 やっぱりMP疲れしたか。嫌な予感はしたんだけどな⋯⋯。


 MP疲れというのは、魔法やらでMPをほぼゼロになるまで消費したときに発生する特殊な状態異常だ。簡単に言えば身体が非常に怠くなり、視界が歪んだりする。


 俺は身体が怠くなったりする事はないが⋯⋯リビングアーマー含める魔法生物っていうのはMPもとい魔力を筋肉や骨代わりにして身体を動かしてるんだ。それがほぼゼロに近くなったせいで身体が錆び付いたみたいに動かし辛くなった。


 暫く待てば回復するだろうけど、そこまで待ってられねぇ。俺は無理矢理足を動かしてソロンの元まで向かう。


『Lv322の敏捷舐めんなぁあああ!』


 動かし辛いって言ったって、それでも十分速いわ! この程度の距離屁でもねぇ!


 俺はソロンを抱き上げると残った時間で距離を取る。まあたった数秒間だ。殆ど移動もできなかったけどな。


 そしてタイム・ストップの効果が切れ、辺りの風景に色が戻る。すると一番近くに居たジジイ紳士の悪魔が肩に乗せた人形の大鷹を飛ばしてくる。


『鑑定!』



名称・アガレス

年齢・──

種族・ソロモンの悪魔

職業・ソロモン第2位

Lv・450


・装備

アガレスの傀儡大鷹(魔力操作、重量軽量化、自動修復)

アガレスの傀儡鰐(魔力操作、重量軽量化、自動修復)


・スキル

大地魔法10、暗黒魔法10、時空魔法10

物理耐性5、魔力耐性5、状態異常無効、

神経異常無効、精神異常無効

瞑想10、金剛10、防壁10、縮地10、心眼10、

覇気10、威嚇10、無詠唱、

高速並列10、魔力操作10、集中10、予見10

生命感知5、危機察知5、強者察知5、弱点察知5、

急所察知5

HP回復10、MP回復10、SP回復10、

HP強化10、MP強化10、SP強化10、

魔力強化10、耐久強化10、耐性強化10、

俊敏強化10、五感強化10、魔法強化10


・ユニークスキル

アガレスの力



『ちょ、マジか⋯⋯ヤベッ!』


 よりによって第2位の悪魔に見付かったのかよ! アガレスの飛ばした大鷹は高速で近付き俺の兜を吹き飛ばす。何とか手を伸ばして兜をキャッチしたが、危うく正体がバレるとこだったぜ。


 兜をかぶり直すと同じに、アガレスは再び大鷹を操る。だが俺は斧槍をソロンの首筋に突き付けた。


『待てよアガレス。テメエの主人は俺の手元にいるんだぜ? 生かすも殺すも俺次第だぞ?』


 そう脅迫するが、アガレスは鼻で笑い再び頭を狙ってきた。それを何とか盾で防ぐと、俺はソロンを担いで走り出す。


 クソッ! アイツ俺がソロンを殺す気ねえ事見抜いてやがった! 脅迫して何とか交渉に持ち込もうと思ったのによお!


 ソロンをさっさと回復してやりてぇ所だが生憎MP切れだ。取り敢えずアイテムポーチからハイ・ポーションを取り出して、飲ませる訳にもいかねえから振り掛ける。ちょっとHP確認で鑑定。



名称・ソロン

年齢・12歳

種族・人間

職業・ソロモン召喚士

Lv・1+300


・装備

ソロモンの指輪(ソロモン72柱召喚)


・スキル

──


・ユニークスキル

ソロモンの恩恵

ソロモンの代償



『⋯⋯は?』


 何だこのステータス? Lv1+300って何だよ。ってかスキル一個も持ってねえのはおかしいだろ? もしかしてユニークスキルのソロモンの恩恵と代償ってやつのせいか?


 だが筋力や耐久は何故かLv300の平均どころか飛び抜けている。予想出来るのは⋯⋯悪魔召喚とステータスに何らかの変化をもたらすのが恩恵。Lvとスキルが一つも取れないのが代償って所か?


『って、んなこた今はどうでも良いんだ! ソロン、起きろ!』


「う⋯⋯ランヴェル、さん⋯⋯?」


『良かった、気付いたか! って危ねえ!』


 ソロンが目を覚ました事に安堵すると鷹が頭に掠めていく。ヤベッ、いい加減消してもらわねえと!


『ソロン、説明は後だ! 今召喚してる悪魔を消してくれねえか!?』


「わ、分かり、ました⋯⋯みんな、ありがとう。自分たちの世界に、帰って良いよ」


 ソロンがそう言うと悪魔達は突如として動きを止め、そのまま黒い粒子となって消えていく。何とか、なったのか?


『終わったかぁ⋯⋯』


 俺は強張らせていた肩の力を抜く⋯⋯ってのはおかしいか? 緊張して無意識に上がっていた肩を下げる。抱き上げていたソロンもそっと降ろした。


『ソロン、大丈夫か? 痛い所は無いか?』


「だ、大丈夫、です。でも何で、びしょ濡れなんですか?」


『ハイ・ポーション振り掛けたからな。ほらタオル』


 ポーチからタオルを取り出し、ソロンについたポーションを拭き取る。すると後ろから誰かが⋯⋯いや、リッター達しかいねぇな。


『悪魔共も消えたし、これで全部オーケー。無事終了⋯⋯って、事にはならねえんだろ?』


「⋯⋯ランヴェル、その子をこっちに連れてきてくれないか?」


『一応聞いとくけど、何でだよ』


「今回の元凶を捕まえる為⋯⋯だったけど、その子はあまりに危険だ。これ以上被害を出さないために⋯⋯」


『殺すってのかよ。ふざけんな、こんな小さい子供だぞ!? それにソロンが悪魔を呼び出しちまったのは村人のせいだろうが!』


「っ!? それは一体どういう事なんだ?」


 お、話を聞いてくれる気になったのか。俺はリッター達に村人から聞いた顛末を話す。リッター達は驚いたかと思えば、今度は顔を赤くして怒る。


「つまり、村人達は僕達を騙してたって事か!?」


「むぅ⋯⋯何とも非道な事を⋯⋯」


『そういう事だからソロンを殺す必要はねえ』


「でも、村人はどうするの? 多分だけど口頭だけじゃ信用しないわよ?」


 マギナの言葉にリッター達はどうしようかと考え始める。う~ん、あの村人共を信用させる方法かぁ⋯⋯。


『⋯⋯なんか無かったかな』


 俺はストレージを開くと何か無いか探す。えーっと、人形⋯⋯じゃあすぐバレるだろうし、魔法で原形をとどめない程吹っ飛ばした⋯⋯って言ってもなぁ。


『⋯⋯おっ』


 するとストレージの中からとある道具を見つけ出した。それを使っての方法も思い付く。でもなぁ⋯⋯ソロンが協力してくれればの話なんだけどなぁ。いや、言うだけ言ってみるか。


『なあ。一つ方法を思い付いたんだけど』


「えっ? どんな方法なの?」


 俺は思い付いた方法をリッター達に話す。だけどやっぱりというか、渋い顔をされた。そりゃあそうだ。だってこの方法は─────


─────ソロンを一度殺す(・ ・)んだからな。


「その方法はあまりにも⋯⋯」


「うむ。危険だろう」


『だよなぁ。俺から言い出したけどやっぱよそうぜ。別の方法を⋯⋯』


「⋯⋯やります」


『えっ』


 するとソロンがやると言い出した。俺達は驚いて一斉にソロンの顔を見る。


『待て待て。話聞いてたか? 一度死ぬんだぞお前?』


「分かって、ます。でも、大丈夫です。やって、ください」


 ソロンは決意を決めたかの様な顔で俺達を見る。こりゃあ⋯⋯何言っても止めないんだろうな。俺達は顔を見合わせると、気乗りはしないまま頷いた。


『分かった⋯⋯じゃあ、やるぞ?』


 俺はストレージから一本のナイフを取り出すと、それを持って─────


─────ソロンの胸に突き刺した。

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