♯25 悪魔の襲来
『青蛇族』
青色の髪、硬い鱗と柔らかな体が特徴的な種族。蛇特有のピット器官を持ち、ステータスも平均的に高い。
『おっしゃ着いたぁ!』
俺達はロング・ジャンプで村の戻ってくる。村は何軒かが崩れ、色々な所から煙が上がっている。
「クソッ、遅かったようだね!」
「おいおい、アイツらは無事なのかよ!」
「分からない! とにかく今は村を守るんだ! 僕とロズリア、オリヴァーは西側、ランヴェルとメリノは東側を頼む!」
「分かった!」
「お、おう!」
『はいよ! 行くぞメリノ!』
「分かりました」
そして俺達は二手に分かれて村を走り回る。ただ建物に被害は出ているが村人達は被害が無いみたいだ。途中に村人が見えたがどうやら荷物を纏めて村から離れようとしてるみたいだ。こりゃあ留守番組が頑張ってくれてるのか?
ってかアークデーモンが見当たらねえ。どこに行きやがった! そう思った所で目の前に誰かが戦っているのが見えた。あれは⋯⋯アリスとレナか! どうやらアイツらの後ろにある家を守ろうと戦ってるみたいだ。戦ってる相手は⋯⋯レッサーデーモンか。
レッサーデーモンはアークデーモンの二つ下のCランク。レッサーと付いているが火炎魔法や大地魔法、そして高Lv冒険者と同等以上のステータスを持つ悪魔だ。
そういやこの間戦った天使も種族的には一番下のエンジェルの筈だよな。何であんな強化されてたんだろうな。
『って、んなこたどうでも良い! メリノ!』
「分かりました。バインド・ワイヤー、スピア・ワイヤー」
《スピア・ワイヤー》糸術Lv7の戦技。貫通属性を付与した糸の槍を投擲する
メリノは目の前にいる二体のレッサーデーモンを拘束する。そしてすぐ隣にいるデーモンの顔面に糸術のスピア・ワイヤーを投擲した。
「ソード・ワイヤー」
そして拘束しているデーモンを、巻き付いてる糸に斬撃属性を付与してそのまま二体とも切り裂いた。でも流石はデーモン。スピア・ワイヤーでダメージを受けてた方はともかく、もう片方は少しダメージを受けただけでまだ立ってやがる。
「バインド・ウィップ! トライ・ボム!」
「キーポイント・アロー、アロー・レイン」
《トライ・ボム》爆発魔法Lv5の魔法。魔力の玉を三つ飛ばし、三回の爆発を起こす。
《アロー・レイン》弓術Lv3の戦技。矢を上空に撃ち、攻撃性のある矢の幻影を雨の様に降らす。
すると今度はアリスが鞭で拘束。爆発魔法で背中を三連爆破し、怯んだ所にレナが目ん玉に矢を放って雨の様な矢を降り注がせた。
流石にその連撃は耐えきれなかったらしく、デーモンは雄叫びを上げてその場に倒れた。
「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯勝った⋯⋯?」
「ランヴェル~! メリノちゃ~ん!」
「すみません、遅れてしまって」
『サークル・ヒール! 悪いなお前ら、良く持ち堪えた!』
俺は二人に近付くとサークル・ヒールを掛ける。二人もボロボロだ。家の中を覗くと白薔薇と義賊のメンバーが傷だらけになって気絶している。っていうかコイツら瀕死じゃねえか。コイツらにもヒール掛けておこう。
『⋯⋯あれ? そういやカルマはどこ行った?』
「そうだ、カルマ⋯⋯!」
カルマの姿が見当たらないからどこに居るのか聞くと、アリスが焦った様な表情になって走り出そうとする。でも疲労が溜まっていたのか足を縺れさせて転んだ。
『レナ、カルマはどこに居るんだ?』
「あ、あっち⋯⋯アークデーモンの足止めしてる⋯⋯ランヴェル達が出て少し後からデーモンが襲ってきて⋯⋯取り敢えずマティアを向かわせたけど⋯⋯」
『はぁっ!?』
俺達が出てから少しって、一時間近く経ってるぞ! アークデーモンは平均Lv180。カルマが万が一でも勝てる相手じゃねえぞ!
『メリノ、コイツら二人を頼む! スタミナ・ポーション飲ませて村の防衛に走ってくれ! 俺はカルマん所行ってくる!』
「分かりました」
「私も⋯⋯」
『お前らじゃアークデーモン相手は足手纏いになる! 良いから任せとけ!』
俺はそう言うとアリスが指差した方に走る。頼む、生きててくれよ⋯⋯死んでるなんて笑えねえぞカルマ!
─────
『こっちの筈だよな⋯⋯』
俺はカルマが居ると思わしき方面に走ってきた。だがこっちは村の中でも建物が多く密集してるから周りが見辛いな⋯⋯。
『⋯⋯ん? っ、カルマ!』
俺の視界に入ったのは戦闘の跡が特に激しい場所だ。その中央に倒れているカルマと、羊みてえな角、蝙蝠の羽を生やした貴族風な服を着た悪魔が立っていた。悪魔はカルマに向かって魔法を放とうとしてるのか指を指している。
『待てやゴラァ! シールド・スロー!』
《シールド・スロー》盾術Lv7の戦技。盾をブーメランの様に投擲する。
俺は盾術のシールド・スローを放つ。グルグルとブーメランの様に回転する大盾は悪魔に迫るが、悪魔は人間離れした動きでそれを避けて距離を取った。
『縮地! ロング・ジャンプ!』
そして悪魔が離れたと同時に縮地でカルマに近付き、戻ってきた盾を回収するとロング・ジャンプで男から逃げた。
さて、転移する時場所も決めずに適当に飛んだ訳だが⋯⋯どうやらメリノ達の近くに飛べた様だな。
「ご主人様、ご無事でしたか⋯⋯」
『俺は大丈夫だ! メリノ、カルマを寝かす所を用意してくれ!』
「分かりました」
「カルマ!」
「カルマ~! ね、ねえ、大丈夫なの~?」
レナとアリスは焦った表情でカルマに近寄る。そりゃあそうだ。カルマは全身傷だらけ。左腕は変な方向に曲がってるし、火炎魔法でも食らったのか所々に火傷も負っている。
『ちょっと待ってろ⋯⋯グレート・ヒール!』
俺はカルマにグレート・ヒールを掛ける。カルマの傷はみるみるうちに治っていき、大半の損傷は治癒した。
っていうかどんだけダメージを負ってたんだ。グレート・ヒールで完治しないって相当だぞ? まあ良い。死なない程度まで傷は治ったんだ。あとは休ませとけば大丈夫の筈だな。
『さぁて⋯⋯じゃあアイツに礼をしなきゃいけねえよなぁ⋯⋯』
あのクソ野郎⋯⋯多分アイツがアークデーモンだろ。速攻でカルマを殺す事も出来たろうに。こんなになるまで甚振りやがって⋯⋯まあ、その甚振りが無かったら助けが間に合わなかった訳だが、それには感謝するべきか⋯⋯いや、やっぱ無理だわ。
『メリノ。お前はこっち側にレッサーデーモンがいないか探して倒してくれ。レナとアリスはカルマ達を守ってやってくれ。俺はあのデーモンを倒してくる』
俺はもう一度ロング・ジャンプを使うとデーモンが居た場所にまで戻ってくる。そこにはあのアークデーモンが待っていたかの様に瓦礫に座っていた。
「おや、やっと来たのですね」
『何だ、待っていたみてえな言い方だな』
俺はそう言うと鑑定眼を発動。まずはコイツのステータスを見ねえとな。
名称・チェスカ
年齢・──
種族・アークデーモン
職業・──
Lv・200
・装備
獄炎の指輪(火炎属性強化)
悪魔鋼糸のサーコート(耐久強化・中、耐性効果・大)
悪魔鋼糸のブーツ(俊敏強化・大)
・スキル
火炎魔法10、大地魔法2、溶岩魔法1、暗黒魔法6
魔力耐性10
怪力4、瞑想7、覇気6、無詠唱、高速並列6、
鑑定遮断、空中浮遊4、悪魔の口付け7、魔力操作10、
集中10
生命感知6、危機察知9、強者察知10、弱点察知7
軽業8、曲芸6、警戒3、跳躍7
HP回復2、MP回復9、HP強化4、MP強化10、
魔力強化4、耐久強化6、耐性強化10、俊敏強化7、
五感強化5、魔法強化10
・ユニークスキル
どうやらコイツは火炎魔法を扱うデーモンみたいだな。火炎魔法がカンスト、その上大地、暗黒、溶岩魔法持ちだ。その他諸々のスキルもかなり強力だ。
「ええ、待っていたのですよ。貴方はどうやらあの人間達とは違う様だ。きっと私を楽しませてくれると思いましてね」
⋯⋯言い方が戦闘狂のソレだな。悪魔は基本的に気性が荒く、暇潰しに殺し合いするとまで言われる程だ。それもあるんだろうな。
「あの蟲人も良かったですが、貴方はもっと楽しませてくれそうだ」
『さいですか。まあお前が楽しもうが俺には関係ねえな。俺が言いてえ事は一つだ─────死ねよクソ野郎』
俺は縮地を使ってアークデーモンの目の前に出ると斧槍を振り下ろす。だがアークデーモンはスレスレで避けると手に魔力を集める。
『縮地!』
「フレア・ブラスト」
それを見た俺は縮地で距離を取る。デーモンは俺が立っていた場所にフレア・ブラストを放った。
あっぶねえ! 流石に魔法は隙間から入り込むから鎧で防げねえ。喰らったら魔石にダメージが入るかもしれねえからな。ペンダントの効果もまだ戻ってねえから死に戻りも出来ねえし、気を付けないと。
『フレア・アーマー、高速並行、シャイン・エンチャント!』
俺はまずフレア・アーマーで火炎耐性を上げ、高速並列で並列思考を可能にする。更に悪魔の弱点である閃光属性のシャイン・エンチャントで火力を上げた。
『怪力! ムーンサルト!』
そして怪力で筋力を上昇させるとムーンサルトを発動。そして避けた先に向かってフリーズ・ニードルを放つ。
《フリーズ・ニードル》氷結魔法Lv4の魔法。氷結属性の針を何本も作り出し、敵に向かって発射する。
「フレア・ウォール」
《フレア・ウォール》火炎魔法Lv5の魔法。分厚い炎の壁を作り出す。
だがニードルは炎の壁によって阻まれる。俺はそのまま壁の中に突っ込むと斧槍を振り抜く。
『オラァアアアアア!!』
俺はデーモンに迫ると辺りの瓦礫を吹き飛ばしながら斧槍を振り回し、魔法を放つ。だがデーモンは器用に避け、魔法は持ち前の耐性の高さと暗黒魔法のダークネス・シールドで防いでいく。
《ダークネス・シールド》暗黒魔法Lv5の魔法。暗黒属性の大盾を作り出し攻撃から身を守る。
何でLvが100近く離れているのに中々攻撃が与えられないのか。それはこの世界のステータスシステムが問題だ。
実はこの世界、Lvが200以上いくとステータスが殆ど上がらなくなる。そりゃあ200Lvと999Lvじゃ差が出るが、俺とアークデーモンのLvじゃ差が出ることはない。だからステータスは殆ど同じ⋯⋯それどころか種族による補正でデーモンに軍配が上がっている。
「フフッ、貴方は本当に強い方の様だ。貴方が悪魔でしたら高い地位に立っていたでしょう。人間なのが残念です。ですがされど人間。私達悪魔には万が一にも勝てないのですよ」
それはコイツも分かっている様で、余裕そうな笑みを浮かべている。俺はその言葉を聞いて⋯⋯
『⋯⋯と、思うじゃん?』
「なっ⋯⋯ガハッ!」
同じく余裕な声色で話すとアークデーモンを斧槍で突き飛ばす。流石は天使鋼と相対する悪魔鋼。胴体を斧槍で貫く勢いで思いっ切り突いたのに服は全く傷付いてない。
「な、にが⋯⋯?」
『人間と悪魔のステータス差は歴然。まあ間違っちゃいないな。平々凡々な力しか無い人間と、元から戦闘のエキスパートである悪魔だもんな』
だがそのステータス差を覆す要素がある。それはスキル、装備、そしてアイテムだ。
スキルは多く持っているほど戦術の幅が広がる。相手によって武器を変えるとか、魔法で弱点を突くとか、補助スキルでステータスを一時的に上げるとかな。
そして装備は物によってステータスに補正が入る。上質であれば上質であるほどにステータスに入る補正値も上がっていく。俺の聖王シリーズはレア度にしてSランク。これで人間と悪魔の差なんて余裕で相殺だ。
最後にアイテム。これは攻撃、回復、補助、妨害、何でもござれだ。物によっては力量の差を埋めたり、戦況を覆す物だってある。
それを全部持ってる俺は、デーモン如きに負けやしねえ。大体、アークデーモンなんかゲームの時に何十体と倒してんだ。今更手こずるかっての
『ま、俺も新しいスキル手に入れるいい機会にもなったな』
そう言った俺はまるで熟練の槍戦士の様に斧槍を振るう。実は俺はデーモンに攻撃を仕掛けてる間、ストレージから技能水晶を一つ取り出し、壊していた。
その技能水晶に入っていたスキルは上級槍術4。ゲームの時にゴブリン・ハイランサーっていう魔物でマラソンしました。あ、マラソンって走った訳じゃないぞ? 欲しいアイテムが出るまで同じことを繰り返すって事を⋯⋯あ、知ってる? そうなの。
「フ、フフ、フハハハハ!! ああ、そうでなくては! あの人間達の様に簡単に倒せる相手ではないとは、貴方は予想以上の相手の様だ! さあ、続きを始めましょう! 私の記憶にずっと残るような戦いを!」
『うわぁ⋯⋯』
アークデーモンの言葉に引いていると奴はフレア・スピアを放ってくる。俺はマントでそれを防ぐと縮地で近づき⋯⋯
『アサルト・スピア!』
槍術のアサルト・スピアを放つ。俺は衝撃波を纏い、高速で突撃。アークデーモンをまた強く吹き飛ばす。
《フレア・スピア》火炎魔法Lv7の魔法。強力な炎の槍を作り出し発射する。
《アサルト・スピア》槍術Lv7の戦技。槍を力強く持ち、素早い突撃を放つ。
《槍術》槍を扱い戦う為のスキル。威力の高い貫通属性の戦技を多く覚える。
「グッ⋯⋯!」
『縮地!』
そして吹き飛ばした先に縮地で先回りすると空へ打ち上げる。
『フリーズ・ツリー!』
《フリーズ・ツリー》氷結魔法Lv1の魔法。相手の地面に巨大な樹氷を作り出す。
更に氷結魔法のフリーズ・ツリーを唱える。氷で出来た樹はみるみるうちに育ち、鋭い枝先をデーモンに突き刺そうと迫る。
「っ! ダークネス・シールド! アース・バレット!」
《アース・バレット》大地魔法Lv2の魔法。強力な石の弾丸を作り出し発射する。
『おっと!』
だがデーモンはダークネス・シールドでそれを防ぐと大地魔法のアース・バレットで反撃してくる。俺はそれをマントで防いだ。
「ボルケーノ!」
《ボルケーノ》溶岩魔法Lv1の魔法。地面から大量の溶岩を噴出させる。
『おわぁっ!?』
デーモンは地面に手をつくと、火炎と大地の混合、溶岩魔法のボルケーノを発動。地割れが起こり、そこから溶岩が勢い良く吹き出した。力一杯跳んで何とか回避出来たが、辺りは魔法の影響で地形が変化しちまった。
『おっとと⋯⋯あっぶねぇ⋯⋯!』
「ハハハハッ! まさかボルケーノを跳んで回避するとは! やはり貴方は最高の方だ!」
『お前に褒められても嬉しくねぇんだけど』
「いやはや、貴方には驚かされてばかりだ。こんなにも驚かされるのは初めてですよ」
『そうかい⋯⋯』
「折角です。驚かしてくれたお礼として私の切り札を披露いたしましょう」
そう言ったデーモンは魔力を集め始める。何だ? 普通の魔法よりも凄い魔力量なんだが⋯⋯。
「『炎神よ、我がチェスカは願う─────』」
っ!? 詠唱だとっ!? ふざけんな、こんな村の中で最高位魔法をぶっ放すつもりかよ!?
この世界、戦技や魔法には詠唱は無い。だが一つだけ例外があるんだ。
それは最高位の戦技、または魔法だ。詠唱が必要な上にMP、SPを大量消費する代わりとして絶大な威力を誇る⋯⋯その威力は圧倒的な戦力差を覆す程だ。まあメタ的に考えればバ火力のスキルをポンポンぶっ放さない様にする処置なんだろうが⋯⋯。
そして奴が放とうとしてる魔法は火炎魔法のインフェルノだろう。地獄の炎を呼び出し、辺りの生命を燃やし尽くす最悪の炎。そんなのぶっ放されたら俺どころか村が吹き飛ぶ!
『『守神よ、我がランヴェルは願う─────』』
その魔法は流石に耐えきれない。唯一防ぐ方法は同じ最高位のスキルで返すしかねえんだ。だから俺も防御スキルの詠唱を始めた。
「『我が眼前の敵を、我が道を阻む障害を、地獄の業火を呼び出し全てを焼き尽くせ』! インフェルノ!」
《インフェルノ》火炎魔法Lv10の魔法。MPを大量に消費し、地獄の業火を呼び出して辺りを焼き尽くす。。
インフェルノ⋯⋯火炎魔法の最高位スキル。地獄から呼び出したその赤黒い炎は、辺りの生命を焼き尽くし、不毛の大地と変貌させる。そんな炎が眼前に迫った瞬間⋯⋯
『『我が身を、そして我が同胞を、その堅牢たる盾を持って我が眼前の障害から護れ』! 守神ノ盾!』
《守神ノ盾》大盾術Lv10の戦技。SPを大量に消費し、あらゆる攻撃を受け止める大盾を創り出す。
俺の詠唱が終わり、それと同時に俺の目の前が光り輝き、美しい装飾が施された盾が現れた。
守神ノ盾⋯⋯盾聖術の最高位戦技。この世界の守神の持つ盾を具現化し、目の前に迫る障害を全て受け止め、守り抜く。
その盾が現れた瞬間、辺りを焼き尽くそうと広がったインフェルノは守神ノ盾に吸い込まれていく。炎は盾に接触すると浄化されるかの様に消え、その熱を四散させていった。
「ハァッ⋯⋯ハァッ⋯⋯ハハッ、これも防がれるのですか⋯⋯」
MPが切れるまで魔法に込めたんだろう。MP切れで息も絶え絶えになっているデーモンはその場に倒れる。
『馬鹿な事しやがって⋯⋯いい加減観念しろよ』
「ハハハッ⋯⋯私の切り札であるインフェルノが防がれたのです。貴方に勝てる要素は無くなった⋯⋯観念しますよ。どうぞ、焼くなり煮るなり好きにしてください」
『んじゃ、好きにさせてもらうぜ』
俺は盾を下ろすと斧槍を両手で持ち、高く掲げる。狙いは奴の首だ。
コイツを逃がす訳が無い。カルマを傷付けた上に周りまで巻き込み掛けたんだ。慈悲なんてやってらんねえよ。ま、コイツの無駄に清々しい性格は嫌いじゃねえから一撃で決めてやるさ。
『じゃあな』
そう一言だけ言うと、斧槍を首に振り下ろす。ドンッという音と共にデーモンの首は飛び、血が吹き出る。
デーモンの死体は暫くすると塵となり、風に乗って消えていく。その場に残ったのはコイツが来ていた服と指輪だけだ。
『さ~ってと』
それを拾った俺はメリノ達の元へ戻ろうと⋯⋯した瞬間、村の中央で大きな雄叫びと地響きが響いた。
『はぁ!? 今度は何だぁ!?』
生命感知の感度を上げると、村中央に悪魔の反応が多数出ている。その周りには人間の反応が多数。多分村人だな。どうやら悪魔が村人を襲っているみたいだ。
『何でまた悪魔が出てきてんだよ!?』
しょうがねえ、メリノ達が心配だけどまずは中央に向かわねえと! そう思った俺はロング・ジャンプを使ってそこに向かった。




