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♯23 言っていい事と悪い事がある

『荒鷲族』

 茶色の髪、大きな翼と飛翔能力が特徴的な種族。鳥族の中でも高い筋力を持っていて、空中からの攻撃を得意としている。

 俺達がリッターの元に来ると、既に白薔薇の棘と義賊の眼が揃っていた。また俺達が最後か。


「そろった様だね。それでは村長から聞いた集団についてと、今回の作戦を説明しよう」


 そう言ってリッターが説明を始める。まずはカルト集団についてだ。


 奴らは毎日夕方頃からこの近くにある洞窟に集まり、何かをして深夜に帰っていくという。恐らくは邪教徒だと思われる。人数は約二十人。剣や杖を帯刀しているものもいるから戦闘も出来るんだろう。


 そして作戦。奴らがいない時間⋯⋯余裕を持って翌日の明け方から洞窟に侵入。その中を調査し、もし何かあればそれを阻止する。相手はこちらよりよっぽど人数が多いので、戦闘は極力避けるとのことだ。


「何だよ、そんな奴ら蹴散らしちまえば良いじゃねえか」


「相手の実力も分かっていない以上、無駄な戦闘は避けるべきだ。もし相手にBランク冒険者並みの力を持つものがいれば、僕達に勝てる見込みはない」


「チッ⋯⋯」


「そういう訳だから、みんなは今日は英気を養ってくれ。明日の明け方、出発するからそのつもりで」


 リッターの言葉に頷くと俺達はまたバラバラになる。う~ん、取り敢えずは武器の点検とかした方が良いな。


『お前ら、取り敢えず武器の確認をしといてくれ』


「分かりました」


「うん、分かったよ」


「ん」


「はいは~い」


 メリノ達は頷くと武器の点検を始める。俺は⋯⋯確認しなくても大丈夫だな。装備自体壊れねえし。んじゃま、またソロンの所にでも⋯⋯


「おい」


 行こうかな、と思った所で後ろから声を掛けられる。そこには白薔薇の棘のリーダー、ロズリアと義賊の眼のリーダー、オリヴァーが立っていた。


『⋯⋯何か?』


「何か? じゃねえよ。何言いてえか分かるだろうが」


「私達は貴様の実力に疑惑の念を抱いている。ぽっと出の貴様が何故数週間程度で私達と同等以上のランクになっているんだ」


『んな事言われてもな⋯⋯実力としか言いようがねえんだけど』


「ハッ、実力だぁ? 本当かどうかも怪しいぜ。ちょっとその実力とやらを見せてくれよ。ちょこっと揉んでやっからよ」


 はい出ました、こういう絡んでくるキャラクターで必ず起きるイベント。その名も『俺より本当に強いのか? 適当な理由つけてちょっと揉んでやろ』だ。面倒臭えなぁ⋯⋯ってか英気を養ってくれっていうリッターの兄貴からの言葉は完全に無視ですかい。


『英気を養ってくれっていう我らがリーダーからのお言葉なんでね。遠慮しておきますわ。大体、実力なら明日分かるでしょうに』


「フンッ、本当はギルマスに取り入って不当なランクアップがバレたくないんだろう?」


『好きに言ってくれ。とにかく面倒事は御免だからな』


 そう言って去ろうとすると、二人が俺のかんに障る事を言い放ちやがった。


「ケッ! コイツの仲間も仲間だ。どうせコイツと一緒にギルマスに取り入ってるに違いねえ」


「そうだな。まともな実力もない癖に冒険者を語るとは、同じ同業者として恥ずかしい」


 その言葉を聞いた瞬間俺は足を止める。メリノ達がまともな実力もねえ、だぁ? メリノは元からLvが高かっただけだ。それに技術も高い。それをメイドっていう戦闘に向かねえ職業で頑張ってたんだぞ? 詳しい事は知らねえけど、相当努力してたんだって俺でも分かる。


 カルマ達だって、環境や状況が悪かっただけで今以上のランクに上がれる程の実力は兼ね揃えている。同じスタートだったらコイツらよりもよっぽど強い。それなのにコイツら、事情も知らねえ癖に好き勝手言いやがって⋯⋯。


 俺の事をどう言おうが気にならねえが、今この場に居ねえ奴に陰口言うとか性根腐ってやがる。そういう奴、俺は大っ嫌いなんだよ。


『おい、テメエら』


「あ? 何だよ」


『そんなに言うんだったらやってやろうじゃねえかクソ野郎が。後悔すんじゃねえぞ』


「ハッ! 後悔するなという言葉、そのまま貴様に返してやる」


 そうして俺達は村から少し離れた場所に来る。俺は斧槍を肩に担ぐ。


『一人一人相手にするのも面倒臭え。二人でかかってこい』


「ああっ!? 何だとゴラァ!」


「言ったな! その言葉、後悔させてやる!」


 二人は俺の言葉に怒り、それぞれ武器を構えて躊躇なく攻撃してくる。ロズリアの持っている曲剣は変則的な攻撃。オリヴァーの棍は長いリーチと流れる様な連撃が出せるのが特徴だ。


 だがそれぞれの欠点として、曲剣は斬る事に特化しているせいで鎧に対してのダメージが少ない。棍はリーチは長いが取り回しやすい様に堅い木材や軽い金属で作られるのが基本だ。だからダメージが全体的に低い。


 故に、全身鎧である程度のダメージならものともしない俺はコイツらにとって最悪の相手だ。それも考えず、怒りに任せて攻撃するコイツらの実力が分かるってもんだな。


 って事で曲剣はダメージが入らないから無視。棍をまず無力化する。俺は盾を落とすと左から迫る棍を掴む。右から来る曲剣は俺の兜に当たったが傷一つ付けられずに弾かれた。


「なっ⋯⋯!」


「てめ、離しやがれ!」


『はいよ』


「うおっ!?」


 オリヴァーが棍を引っ張ると同時に手を離す。すると自分の力によってオリヴァーは尻餅をついて隙を晒す。俺はコイツを勢いよく蹴り付け、オリヴァーはボールの様に吹き飛んでいった。


「ダブル・スラッシュ!」


 オリヴァーが吹き飛んでいったと同時にロズリアが俺の背中を斬りつける。だがキンッ! という金属音が鳴り響いただけで、怯みもしないしダメージもない。


「な、何で⋯⋯」


『ステータスの差に決まってんだろ』


「っ! ウィンド・スラッシュ!」



《ウィンド・スラッシュ》風魔法Lv2の魔法。鋭利な風の刃を飛ばして相手を切り刻む。


《風魔法》四属下級魔法の一つ。詠唱の早い風の魔法を覚えるスキル。



 ロズリアはバックステップで距離を取り、風魔法のウィンド・スラッシュを放ってくる。俺は魔法無効の効果を持つマントで体を包み、風の斬撃を無効化する。


『ちゃちいな。風魔法ってのはこういうのを言うんだよ。ウィンド・ブロウ!』



《ウィンド・ブロウ》風魔法Lv4の魔法。風の衝撃を飛ばして相手を吹き飛ばす。



「ぐあっ!」


 そして風魔法のウィンド・ブロウを発動。風の衝撃はロズリアの腹に直撃し、吹き飛ばす。


「ブレイク・ロッド!」



《ブレイク・ロッド》棒術Lv3の戦技。重い一撃を振るう。当たった際、低確率で相手の耐久を下げる。


《棒術》杖・棍を扱い戦う為のスキル。威力と手数を両立させた使いやすい戦技を覚える。



 するといつの間にか戻ってきていたオリヴァーが棍を大きく構えて振り下ろす。ブレイク・ロッドは確か相手の耐久と耐性を低下させる戦技だな。鎧砕きだとか、そういうタイプの技だ。


『シールドパリィ! ストーン・ナックル!』


 俺はそれをパリィで弾き、土魔法のストーン・ナックルでオリヴァーを地面に殴り倒す。そして地面に伏した所で、コイツの目の前に斧槍を突き刺す。


「っ⋯⋯!」


『実戦だったら死んでたぞ』


 そう言うと今度は後ろからスキルLvの低い隠密や消音を使って近付いてきてるロズリアに向かって蹴りを入れる。


「グフッ⋯⋯!」


『アース・フィスト』



《アース・フィスト》大地魔法Lv4の魔法。岩石で作り出した拳を作り出して自由に操る。



 蹴りで吹き飛び、地面に倒れた所にアース・フィスト。勿論潰す訳にいかないのでスレスレで消滅させる。


『なあ、これで分かっただろ? 俺の力は本物だ。それとお前らよりアイツらの方がよっぽど強いわ。妬むのはしょうがねえけどさ、考えてから物言えよ』


「クソが⋯⋯」


「ぐっ⋯⋯」


『でさ、俺だけに文句言うならまだしもアイツらの事まで悪く言うの止めてくれる? しかも本人の居ない前で好き勝手言ってさ? そういう陰口みたいの本当苛つくんだわ。お前らだって子供じゃねえんだし、言っていいことと悪い事があるの分かってんだろ?』


「っ⋯⋯うるせえ! 説教すんじゃ、モガッ!?」


 子供みてえな反論しようとしたオリヴァーの口を、俺は顔面を引っ掴んで止める。


『だからお前、子供じゃねえんだって言ってんだろ。ガキみてえな反論しようとすんなよ。お前俺を怒らして何したいの? 今この場でお前の冒険者人生、ぶっ壊したって良いんだぞ? なあ?』


 そう凄むとオリヴァーは顔を青ざめて黙る。俺はそれを見ると斧槍を引き抜いて立ち上がった。


『もしも納得いかねえってんならギルド戻った時に訓練場でまた相手してやるよ。お前らと同じ、俺に不満がある奴だって呼んでも良い。全員相手してやるさ』


 俺はそう言って二人にサークル・ヒールを掛けるとそのまま村に戻る。アイツらも途中から帰ってきたが、不満そうな視線に少しだけ恐怖の感情が混じって様にも見えた。少しやり過ぎたかな?

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