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♯18 魔物大災禍・前

『銀狼族』

 銀色の髪、鋭い牙と高い筋力が特徴的な種族。獣氏族の中でも一位を争う高ステータスを持っている。

 ロング・ジャンプで村の中央広場に戻ってくると大量の魔物が村人達を襲っていた。多分ギルマスが言ってた増援の冒険者達が応戦してるけど、ちょっと分が悪いな。


『ゲイル、お前は村人と他の冒険者助けてやってくれ! 俺はアイツら探してくる!』


「なっ、おい!」


 ゲイルをほっぽって宿へ向かう。時折襲われそうになっている村人を助け、そして宿に着くとメリノ達が宿に泊まっていた人間達を守りながら戦っていた。


 すると一匹のフォレスト・ウルフがメリノ達の守りを抜け、幼い女の子に飛び掛かった。


「キャアアア!!」


『おぉらっ!』


 俺は斧槍を逆手に持つと勢いよくぶん投げる。斧槍はフォレスト・ウルフの頭部を貫き、宿の壁に突き刺さった。


『ようお前ら、遅くなった!』


「ご主人様、やっと来られましたか」


『おう! 今どうなってる!?』


「村を囲む様に魔物が攻めてきてる! 増援の冒険者達が村人のみんなを助けに行ったけどこの数じゃ、うわっ!」


「ランヴェルは助けに行った方が良い」


「そうだね~。長くならなきゃこの人達を守ってられるよ~?」


 確かに俺が動いた方が集められるか。コイツらも心配だけど任せろって言ってるし、ここは信用すっか。


『おっしゃお前ら! ちゃちゃっと片付けてくるから耐えてろよ! メリノ、お前はカルマ達の面倒見とけ!』


「承りました」


 メリノ達が頷いたのを見た俺はその場から離れて村人達を助ける。って、斧槍回収するの忘れてたな。仕方ねえ、殴るか。斧槍が無くても俺は抵抗するぜ? 拳で、ってか。


 俺は怪力スキルを発動させ、筋力を強化する。そして辺りの敵を殴り飛ばし、蹴散らして村人達を助けていく。


 そして助けた者には一定時間魔物から見つからなくなる魔道具、魔除けの聖鈴を渡し宿屋に向かう様に言ってまた奔走を繰り返した。


 魔除けの聖鈴は安い物じゃねえし、魔法の王国・マジカリアっていう所にしか無いから貴重な物だけど四の五の言ってられねえからな。


 そして最後の村人を助け、取り敢えず辺りの魔物を掃討すると再び宿屋に戻ってくる。


『村長、どこにいる!』


「こ、ここですが⋯⋯何でしょうか?」


 壁に突き刺さったままだった斧槍を抜き、村長を呼ぶと魔力を込めたバリアフィールド展開魔道具を投げ渡した。


『村人達を集めてそれを地面に設置しろ! お前らを守る障壁を張る!』


「わ、分かりました!」


 村長は慌てながら村人達を集め、魔道具を設置する。すると魔力で作られたドーム型の障壁が村人達を囲み、魔物からの攻撃を弾く。


『よし! それじゃあカルマ達は障壁を守る様に動け! 絶対一人で戦うんじゃねえぞ! 他の冒険者もだ!』


「分かった! 行くよレナ、アリス!」


「ん、頑張る」


「はいは~い。行ってきま~す!」


 カルマ達と他の冒険者は武器を構え、障壁の周りに立つと魔物を迎撃していく。


『メリノ! お前は他の冒険者を援護しながら魔物倒してくれ!』


「承りました。行きます」


 良し、メリノも行ったな。後はゲイルだが⋯⋯アイツどこにいやがる!


『おいコラゲイル! 出てこいテメェ!』


「何で俺の時はそんな当たりが強いんだ!」


 おっ、出てきた。どうやら今まで魔物と戦ってたみたいだな。鎧が血に汚れてる。


『簡単に言う! 暴れるぞ!』


「ああそうかよ!」


 俺とゲイルは武器を持って魔物の群れに突っ込む。


 ⋯⋯何で俺、ゲイルと歴戦のライバルみたいなやり取りしてんだろうなぁ。まだ出会って二日くらいしか経ってねえんだけどな。


『ブリザード!』



《ブリザード》吹雪魔法Lv1の魔法。自らを中心として氷塊と鎌鼬が舞う吹雪を発生させる。


《吹雪魔法》混合魔法の一種。氷結と疾風の混合魔法。吹雪の魔法を操るスキル。



 俺は群れの中心に降り立つと吹雪魔法のブリザードを唱え、辺りの魔物を殲滅する。


「ウェーブ・ブレード! スピニングソード!」



《ウェーブ・ブレード》上級剣術Lvの戦技。自らの剣に高周波の振動を纏わせ、切れ味を上げる。



 そしてゲイルは剣に振動波を纏わせ、スピニングソードで魔物を切り飛ばす。


 ウェーブ・ブレードってのは剣聖術の戦技で、文字通り剣に振動波を纏わせる。あれだ、高周波ブレードってやつだ。


 振動によって切れ味が上がったその剣は硬い甲殻を持つキングビートルや盾を持つゴブリンを切り飛ばしていく。


『オラオラオラオラァ!! どんどん来いや雑魚共がぁ! 今の俺はハイテンションだぜ! ストーム・バースト! サンダーボルト!』



《サンダーボルト》雷鳴魔法Lv1の魔法。天空から多数の落雷を落とし、相手を攻撃する。



「ヘビースラッシュ! 地壊衝!」



《地壊衝》拳術Lv9の戦技。大地が破壊される程の威力を持つ拳を相手に叩き付ける。



 俺とゲイルは四方から襲い掛かる魔物を蹴散らしていく。武器を振るえば十の敵が吹き飛び、魔法を唱えれば百の敵が消し飛ぶ。まさしく一騎当千の戦いだと自分でも思う。


 ただ、やっぱ数の力は偉大なんやなって。文字通り疲れを知らない俺はともかく、ゲイルは段々と息が上がってきている。


 ステータスが上がると確かに筋力や耐久力、俊敏は上がる。ただ激しい運動を長時間続けてりゃあすぐ疲れるに決まってる。現実⋯⋯もとい地球で言えば全速力でフルマラソンしてる様なもんだな。


「ハッ⋯⋯ハッ⋯⋯!」


『おいゲイル! 疲れてんのかお前!』


「まだ、だ! まだいける!」


『クソッ! スタミナ・ヒール!』


 俺はゲイルにスタミナ・ヒールを掛けるとまた暴れ回る。何だろうな、ゲイルの様子が少しおかしい気がするのは。あんなに暴れりゃあすぐ疲れるのは分かってる筈なんだが⋯⋯。


 そんな事を考えていると生命感知が発動し、北方面から大量の反応が出た。


『っ! 北方面から大量に来るぞ! お前ら、気を付けろ!』


 俺は大声でメリノ達に伝える。取り敢えず周りにいる残った魔物を蹴散らすと高く跳躍し、北の方を見る。


 そこにはどこから来たのか、トロルやスチールボアが混じった群れがこっちに向かってきていた。


 その群れの上空に、何やら二人の人影が浮いている。何だあれ?


 ─────ドスッ。


『⋯⋯あ?』


 その人影を確認しようと鷹の目を発動する瞬間、俺の胸に何かが刺さる。そして胸を見ると⋯⋯


 ⋯⋯鎧を貫通して、黄金の矢が俺の胸に突き刺さっていた。更にステータスウィンドウが勝手に開き、俺のHPを表示する。


 いつもなら緑色のゲージが満タンになっている筈のHPバーは真っ黒に染まっていた。そしてその下⋯⋯


《あなたは 死亡 しました》


 そう書かれた文章を見た瞬間、俺の視界は真っ黒に染まり意識を落とした。



─────



「クソっ、まだ来るのか⋯⋯」


 妙に気に入らない全身鎧の冒険者、ランヴェルの言葉を聞いた俺は悪態を吐きながら周りの残った魔物を殺す。


 そして北の方を見た瞬間、空から何かの塊が降ってきた。


「っ!?」


 その塊は空に跳躍していた筈のランヴェルだった。胸に黄金の矢が刺さっており、ピクリとも動かない。


「ご主人様っ!? ご主人様!!」


「嘘だろう!? ランヴェル!」


 すると奴の仲間の獣人達が駆け寄ってくる。特に羊獣人は一番取り乱している様子だ。


「ご主人様、返事をしてください! ご主人様!」


「っ、二人とも! とにかく今は敵を倒そう! メリノさんはランヴェルを守って!」


「分かった。大丈夫、ランヴェルは無事⋯⋯その筈」


「まあ、ランヴェルがあれで死ぬ訳ない、よね~?」


 やはりリーダーのコイツが死んで仲間も取り乱している様だな。


 俺は息を整え、大剣を担ぐと北の方面に向かう。トロルやスチールボアが混じる群れの中、その上空に特に目立つ人影。奴らは⋯⋯


「ねえお姉様! 私あの鎧撃ち殺せたよ!」


「ええ、よくやったわ私の愛しい妹。あとは小汚い鼠だけ。全て燃やしてしまいましょう」


 金髪の髪に青い瞳。純白の装束に身を包み、同じく純白の羽を持つ人⋯⋯俺達人間の敵、天使がそこに浮いていた。


 妹、と呼ばれている天使の手には金色の弓矢がある。恐らくあれでランヴェルは撃ち殺されたんだろう。姉らしき方は剣と盾を持っている。


「あの鎧には困っていたんだよね。王とか強い冒険者がいない時にアーク・ワイバーンの群れを嗾けたのに邪魔されたんだもん」


「ええ。だけど奴ももういない。これでルシール様も喜ぶわよ」


「えへへ~。大天使になれるかなぁ?」


「きっとなれるわ。あともう一踏ん張りよ」


 どうやらこの天使共が今回の主犯の様だ。だが油断している。まずは魔物の群れを討伐すべきだろう。俺はランヴェルの仲間とは別の冒険者に話し掛ける。


「おい、そこの冒険者。魔物の群れを殲滅するぞ。手伝え」


「あ、ああ。分かった! お前達、やるぞ!」


 冒険者達は魔物の群れに戦いを仕掛ける。チラリと天使共を見るが、どうやら本当にランヴェルだけが目的だったらしい。魔物に任せ、手を出す気は無いようだ。


「ウェーブ・ブレード」


 俺は再びウェーブ・ブレードを発動し、剣に振動を加えると魔物の群れに突っ込んだ。


「ウオォオオオオ!!」


 斬る。斬る。斬る。あの時(・ ・ ・)の怨み辛みをぶつけるかの様に魔物を切り飛ばす。


「スゲぇ⋯⋯流石Aランク冒険者だ⋯⋯」


「彼が居れば魔物大災禍も乗り越えられるわね!」


「お前ら! 駄弁ってる暇があったら武器を動かせ!」


 そして魔物の群れが半分を切った頃、天使共に動きがあった。


「ねえお姉様。あの錆だらけの人間も撃ち殺した方が良いんじゃない?」


「そうねぇ⋯⋯どうやら大きな鼠だったようだし、駆除しましょうか」


 何かを話した天使共の片方が弓を番え、俺に矢先を向ける。今度の標的は俺か⋯⋯だがランヴェルとは違う。死地で、まるで遊戯の様に動くアイツとはな!


「ん~⋯⋯トッ!」


「っ!」


 早い!? その天使の矢は高速で放たれる。俺は身体を捻りなんとか心臓部に刺さる事を回避したが避けきれず左腕に当たってしまった。


「あー! 外しちゃった⋯⋯」


「大丈夫、もう一度よ」


 クソッ! 空にいる以上魔法しか攻撃手段が無いが、恐らく避けられるだろう。どうすれば⋯⋯


 すると数本の針が天使に向かって投げられる。だがそれはもう一人の天使が持つ盾によって防がれた。


「おや、危ないですね」


「あっぶない! もう、誰ー?」


「よくも⋯⋯よくもご主人様をっ!」


 どうやらランヴェルの仲間の羊獣人がやった様だ。だがどう考えても勝てる見込みは無い。復讐によって冷静な考えが出来ない様だな。


 ⋯⋯ん? ランヴェルの死体はどこにいった?


 いつの間にかランヴェルの死体が消えていた。それは天使達も気付いた様で、辺りを見渡している。すると


『よう⋯⋯さっきはよくも殺してくれたな』


「え」


 突然姿を現したランヴェルが弓矢の天使の肩を掴む。そして天使が振り向いた瞬間


『死ねやこのクソッタレ天使があ!!』


「きゃあっ!」


「ぐっ⋯⋯!」


 弓矢の天使を殴り落とし、もう片方を蹴り落とす。そしてランヴェルは天使共に向かって中指を立てた。


『天使死すべし! 慈悲は無い! さっきやられた分何十倍にもして返してやらあ!』

 はいどーも、主人公を死なせた上に速攻で復活させるという暴挙に出た作者の蛸夜鬼です。


 ランヴェルの復活理由は次回となります。ただ来週はテストの関係で投稿は出来ませんので、再来週以降になることをご了承ください。


 それでは今回はこの辺で。また今度お会いしましょう!

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