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♯12 フォモール遺跡・探索

『ハイエルフ』

 エルフ族の中でも長い耳と美しい薄緑の髪が特徴的な種族。精霊との繋がりが深い。

「ご主人、様⋯⋯?」


 最初、何が起こったか分かりませんでした。


 私の横を通り抜けていったフォモール族が、ご主人様を巻き込んで落とし穴に落ちていく。急いで助けようと穴に近付きましたが、すぐに閉まって開かなくなってしまいました。


「め、メリノさん⋯⋯?」


 フォモール族を倒し終わったカルマさん達が近付いてくるけど、私は今それどころじゃありません。


 ご主人様にはまだまだ借りがあります。命の恩人でもあるのに、私は何も出来なかった⋯⋯何も⋯⋯。


『お前は本当に何も出来ない奴だな⋯⋯私達家族の面汚しが』


 ふと、“あの男”の言葉が頭に響く。それと共に段々と呼吸が難しく⋯⋯。


「っ! ハァッ、ハァッ!」


 な、何で今“あの男”の言葉を⋯⋯ダメ、呼吸が上手く⋯⋯息が、出来ない⋯⋯。


「メ、メリノ~? 大丈夫~?」


「過呼吸になってる。落ち着いて、ゆっくり深呼吸して」


 レイに言われて暫く深呼吸を繰り返すと呼吸が安定しました。


 一度落ち着かないと⋯⋯先程は焦りましたがご主人様は空中浮遊を持っているんです。それにリビングアーマーですから落下して死んでしまう事はないでしょう。


 私は立ち上がって埃を払い、落とした針を拾うと三人に向き直りました。


「先程はすみません。先へ進みましょう」


「メリノ~、ランヴェルは~?」


「ランヴェルは大丈夫?」


「ご主人様はあの程度では死なない筈です。恐らくここよりも下層に落ちたのでしょう。このまま下に降りていけば合流出来ると思われます」


「分かったよ。行こう皆」


 カルマさん達は一応納得してくれたのかフォモール族の素材を簡単に剥ぎ取ると先へ進みます。


 ⋯⋯ご主人様、どうかご無事で。


 暫く進んで一〇階に着く。ここも番人のエリアだったのか巨大な魔物の死骸が転がっていました。


 ご主人様は⋯⋯いませんでした。


「いないね⋯⋯」


「うわ~。ここの番人ってキマイラだったんだ~。強そ~」


「メリノ、先に行こ」


「ええ。分かってます」


 ご主人様は強力な生命感知スキルを持っています。流石にその反応が誰かは分からないらしいですが、四人組と魔蟲、精霊のパーティーの反応が出たら真っ先に来てくれるでしょう。大丈夫⋯⋯の、筈です。


「進みましょう。早くご主人様と合流しないと」


 私は何かあったらすぐに帰還出来る様に、慣れないながらも地図を書いて進みます。斥候はアリスが交代してくれたので、私は地図に集中しましょう。


 そして一三階。降りた直後にフォモール族との戦闘に入りました。


「はぁっ! アリス、トドメお願い!」


「ほいほ~い。エクスプロージョン~」


「キーポイント・アロー。シルフィ、今」



《キーポイント・アロー》弓術Lv1の戦技。相手の急所を狙い撃ち、通常よりも大きなダメージを与える。


《弓術》弓を扱い戦う為のスキル。相手の急所を狙うなど一点に集中して攻撃する戦技を覚える。



 先の戦闘とは違ってご主人様がいませんでしたが、数が少なかったお陰で時間も掛からず倒せました。


「さっきよりは楽だったけど⋯⋯ランヴェルがいないから回避が大変だね」


「だね~。ランヴェルがダメージ肩代わりしてたけど今回はそれがないからね~」


「みんな、素材剥ぎ終わった」


「では先に進みましょう」


 二一階。今まではフォモール族のみ出てきましたが、この辺りからはフォモール族のお供としてなのか竜族のワームが出てくるようになりました。


 因みに一五階の番人はトロール。二〇階の番人はゼラチン・キューブだった様です。何人もの犠牲者が出たのか、辺りは血で濡れ折れた武器等が散乱していました。


 番人の種族やランクが違い、迷宮の主が何なのか見当がつきません。トラップを作り、ゴーレムを作成出来る程です。高い知性を持つ魔物だとは思われますが⋯⋯。


「メリノさん」


「何でしょうか」


 考えを馳せているとカルマさんに話しかけられる。


「ランヴェルの事が心配なのは分かるけど、今考え事をするのは危険だよ。竜族のワームも出てきたし⋯⋯」


「そうだよ~。あの程度じゃ死なないって言ったのはメリノちゃんだよ~?」


「この迷宮にいるのは確実。もし見つからなくっても迷宮の主を倒せば一緒に脱出出来る」


「⋯⋯そう、ですね。分かりました。先に進みましょう」


 しょうがありません。今は先に進む事にしましょう。レイの言うとおり迷宮の主を倒せばご主人様も地上に出る筈です。


 その後、私達は戦闘は最小限に最下層へと向かいました。途中罠やワームによって足止めを食らいましたが、これと言った怪我もなく先へ進む事が出来ましたね。


 そして二五階⋯⋯ここも番人のエリアなのか大きな扉があるだけですね。ただこの扉には目の紋章が描かれています。


「何か、空気が重々しいね⋯⋯」


「他の階層と違って雰囲気が違うよ~? 多分最後の階層じゃないかな~?」


「そうだとしたら入る前に準備をした方がいいね。メリノさんはどう思う?」


「⋯⋯そうですね。体勢を立て直してから扉を開けましょう。どうやら敵もいない様ですから」


 私達は辺りを警戒しながらもマナ・ポーションやスキル・ポーションでMP、SPを回復させておきます。ご主人様がいれば回復魔法のスタミナ・ヒールで疲れを癒やす事も出来たのでしょうが⋯⋯。


「そういえば途中でランヴェルと会わなかったね~。この先にいるのかな~?」


「途中で行き違った可能性もある。とにかく今は迷宮の攻略に集中する」


「そうですね、レイさんに同意します」


「みんな、そろそろ扉を開けよう。一、二の三で行くよ?」


 体勢を立て直した私達は武器を持ち、重々しい扉を開いて中に入ると⋯⋯


「ギャアアアアア!!」


「やめ、やめて⋯⋯うわぁああああ!」


 数人の冒険者達が、フォモール族に虐殺されている風景が目に飛び込んできました。


 存命中の者や死体の数からして半分近くの冒険者がここに辿り着いている様です。しかしフォモール族の数は簡単に見ただけでもその三倍はいます。


「な、何だこれ⋯⋯」


「うわ~。数多すぎない~? 数の暴力で押し切られるよ~?」


「メリノ、一旦逃げる。他の冒険者と合流した方がいい」


「⋯⋯いえ、それは不可能な様です」


 私はレイさんの提案は無理だと判断しました。


 その理由はいつの間にか背後の扉が閉まっている為です。恐らくゴーレムの時と同じ仕組みでしょう。一度入ったら敵を倒すまで出られないと思われます。


「⋯⋯ここから出るには、アレを倒さないといけないようですね」


 このフォモール族の大群の奥。そこにいる一際大きなフォモールが私達を凝視していました。恐らく迷宮の主でしょう。


 その迷宮の主は筋骨隆々とした男の姿ですが目は三つ。その内の額の目は閉じています。武器は手にしている大斧でしょうか。


「⋯⋯どうやら、また新しい獲物が来たようだぞ」


 迷宮の主が口を開くと、部屋にいたフォモール族全員が私達を見ます。戦っていた冒険者達はみんな死んでしまったようです。


「っ⋯⋯!」


 視線を一斉に浴びた私達は、それに圧されて思わず後退る。主はそれを見るとニヤリと笑い⋯⋯


「息子達よ。あの獲物を盛大に歓迎してやれ」


 そう一言言いました。その瞬間、その部屋のフォモール族全員が私達に襲い掛かってきます。


「これは⋯⋯少し危ないかもしれませんね⋯⋯」


 私は目の前のフォモール族を見て、少し焦りながらそう呟きました。


──────


『うおぁああああああ!?』


 ヤバイ、スッゴい高さ落下してやがる! フォモールに邪魔されて落とし穴から出ることも出来なかったし、このまま地面に直撃するのはいくら何でも危険すぎる!


『つーか、お前いい加減離れろ!』


 落下してる途中ずっと抱き付いていたフォモール族を引っ剥がし、壁に向かって投げつける。


 よし、これで邪魔は無くなった。


『空中浮遊!』


 そして空中浮遊スキルで落下速度を落とし、そのまま地面へと着地する。


『あっぶねぇ⋯⋯っていうかかなりの高さ落ちてきたよなぁ』


 空中浮遊しても天井まで届くかどうか⋯⋯ってか落とし穴閉じちまったよな。破壊してもいいけど多分届かない気がするからなぁ。


『取り敢えず辺り探索してみるか』


 ひとまず探索してみる事にした俺は暗視スキルを発動する。周りは上層の遺跡の様な造りと違い、まるで洞窟の様な岩壁となっていた。



《暗視》暗闇でも目が見えるようにする。発動中はSPを持続的に消費する。



『地下洞窟の近くに生成されてたのか? それとも下層はこういう構造?』


 この迷宮の構造を考察しながら先へと進む。ここは一本道の様で分かれ道などが一切無い。


 そのまま奥へ奥へと進んでいると一つの大きな広場が見える。それと同時に巨大な魔物の反応を感知した。


『うおっ!? 何だこいつ⋯⋯?』


 大きさ的に言うなら三メートルくらいか? こっそりと近付いてそいつの正体を見に行く。


『おおう⋯⋯まさかのマンティコアか』


 マンティコア。ライオンの身体にサソリの様な尻尾と毒針を持つ。ネコ科特有の素早い動きと強烈な物理攻撃、更に徐々に身体を蝕む毒を扱ってくるCランクの魔物だ。


 俺はああいう素早いタイプの敵は苦手だ。俺の武器は小回りが利かないし、斧槍だから突いてもいいけど威力が出ないからなぁ。


 まあ、気付いてなければやりようはあるんだがな。


『隠密、消音、擬態っと』



《隠密》自分の気配を消す。スキルLvが上がる度、効果は高まっていく。発動中は継続的にSPを消費する。



 俺が今使ったスキルは暗殺や狩りに適したスキルだ。隠密は気配を、消音は音を、擬態は姿を消す。どれもスキルLv最大だから早々気付かれない筈だ。


 そして俺はこっそりと近付く。マンティコアの周りには何個もの装備が散乱していた。恐らく他の冒険者もここに落ちたか、偶然ここに紛れ込んで殺されたんだろう。


 ある程度マンティコアに接近した俺は斧槍を両手持ちにして大きく構えた。


『ドラゴン・クロー!』



《ドラゴン・クロー》斧聖術Lv1の戦技。竜の爪の如き一撃を放ち、敵を穿つ。



 今使ったドラゴン〇〇といったスキルは発動早い、火力高い、燃費良し、といった三拍子揃ったスキルなので多くのプレイヤーが愛用していたものだ。俺も好んで使ってる。


 竜爪の如き斬撃を喰らったマンティコアはその体を引き裂かれ、何が起こったかも分からずに絶命する。


『うしっ。一丁上がりっと』


 ここで解体する訳にはいかないので、死体は取りあえずストレージにしまう。


 その後も暫く一本道を進んでいくが、その先は行き止まりだった。


『あれぇ? どっか見落としたか⋯⋯?』


 でも暗視使ってるし、見落とすなんてそうそうないと思うんだが⋯⋯。


『こういうのはどっかに隠し通路があるのが定石ってな』


 俺は周りの壁をコンコンと叩いていく。すると一カ所だけ、奥に空間があるような音が鳴った。


 斧槍でその壁を叩くと簡単にその壁が崩れる。そこには巨人が登るような大きく長い階段があった。ってかコレ、よく見ると隠し扉だな。


『ビンゴだ!』


 俺は意気揚々とその階段を登っていく。どうやらただ単に洞窟の岩を削り取っただけの様で、凄い登りづらい。


 暫く階段を登っていくと、どこからか剣戟の音が聞こえてきた。叫び声も聞こえてくる。どうやら階段の上方から聞こえてくるみたいだ。


『んお?』


 階段を登り切ると、そこは行き止まりだった。でも奥から剣戟の音が聞こえてくるので、多分壁一枚を挟んだ先で誰かが戦ってるんだろう。


『うっし。ここも壊すか!』


 俺は先程と同じように斧槍で壁をぶっ叩いた。その先には⋯⋯


『おっ? メリノか?』


「ご、主人、様⋯⋯?」


 体中傷つき、服も所々破れているメリノと、気絶してるのか動かないレナとアリス。そして大量のフォモール族に奮戦しているカルマの姿があった。

 はいどーも、作者の蛸夜鬼です。投稿期間が空いて申し訳ないです。


 さて、私の別の小説を見てくださってる方は知ってると思いますが、Twitterを始めました。そちらで投稿報告していますので、フォローしてくだされば通知で分かりやすくなると思います。


 さて、次回はフォモール遺跡の迷宮の主との戦いです。一体どんな戦いが待ち受けているのか⋯⋯。


 それでは今回はこの辺で。また今度、お会いしましょう!

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