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♯11 フォモール遺跡・突入

『ダークエルフ』

 エルフ族の中でも黒い肌と銀色の髪が特徴的な種族。他の種族よりも身体能力が少し高い。

『おー、中々の人数なんじゃないか?』


「そうですね。話では冒険者の三割が参加してるらしいですよ」


『三割⋯⋯それって何人くらいだ?』


「約百人ですね」


『⋯⋯多くね?』


「大迷宮攻略ではこのくらいは普通らしいです」


 迷宮調査から約一週間が経過した。ギルドは俺達が調査した迷宮をフォモール遺跡と名付け、それの攻略に協力してくれる冒険者を募った。


 結果としてはGランクからCランクの冒険者が集まり、俺達もその攻略組として参加することになった。その際に⋯⋯


「す、凄い⋯⋯あのギルドにこんな数の冒険者が?」


「ん。驚いた」


「レイちゃ~ん、驚いてる様な表情じゃないよ~?」


 カルマ達、深緑の牙と臨時パーティーを組んだ。流石にメリノと二人だけじゃ不安だからな。コイツらとは何度か一緒に戦ったし、連携は難しくないだろう。


『レイって無口キャラだもんなぁ。それにしても⋯⋯』


 レイの周りをウロチョロ飛んでいる緑色の髪を持っている掌サイズの少女に目が行く。


 エルフ族ってのは精霊と契約を交わし、生涯的にパートナーとなる種族だ。


 精霊ってのはエルフ族か精霊眼を持っている者にはちゃんとした姿が、それ以外の者には光のオーブにしか見えず、契約を交わしている者に力を貸す霊体だな。あと喋れない。


 種類としてはサラマンダー、ウンディーネ、シルフ、ノーム、ウィルオ、グールの六種類だ。


 レイの精霊はシルフ。風の力によって俊敏や命中率を上げてくれる。見た目はさっき言った緑色の髪を持つ少女だな。


「ん? シルフィがどうかした?」


『いや。視界の隅でウロチョロしてて気になってな』


 シルフィと呼ばれた精霊は俺の言葉を聞くとレイの頭の上で『キラッ』って効果音が付きそうな感じで目元にピースを作る。


 契約者と精霊の性格が真逆じゃねえか。シルフィが喋れたら絶対キャピキャピ言ってるぞ。


「そういえばランヴェルは精霊眼を持ってるんだっけ?」


『そうだな。他にも色々あるぞ』



《精霊眼》精霊の姿を正確に視認出来る魔眼。



「良いなあ。きっと便利なんだろうね」


『あんまり使い道は無いけどな』


 魔眼系のスキルが全部使えても鑑定眼と呪法眼以外あまり使った事がない。精霊眼ともう一種類は自動発動だし、残り二種類は使いにくいからな。


「ねえねえメリノちゃ~ん。またモミモミさせてもらっても⋯⋯」


「死にたいんですか?」


「ランヴェル~! メリノちゃんが冷たいよ~!」


『そりゃあ毎回揉んでりゃな』


 アリスなんだが⋯⋯コイツ、一緒に依頼を受けた時に毎度メリノの胸を揉んでるんだよな。その度に俺を盾にして逃げるから質が悪い。


 それでも話が分かるし戦闘でも強いのであまり文句が言えないのが現実だ。それに眼福シーンを見せつけてくれるのも良し。女子同士が乳繰り合ってるシーンっていいと思わない? 思わないの? そうか⋯⋯。


「ご主人様が変態的な思考をしてる気がします」


『キノセイダロ』


「何でカタコトなんだろうね~」


 カルマ達と色々話していると、迷宮入り口の方で無駄に小綺麗な鎧を着た男が出てくる。


「君達! 聞いてくれ!」


 あ、コイツが今回の迷宮攻略のリーダーか? 男の後ろには仲間らしき冒険者が立っている。


「これからフォモール遺跡に突入する! 調査によるとフォモール族の巣穴で、相手のLvはかなり高いそうだ! 決して一つのパーティーだけでは戦わず、他の冒険者と連携して戦ってくれ!」


 そういやゲームだとフォモール族ってあまり強かったイメージは無いんだけどな。確かに高い知能を持って連携もしてくるけど動きが単調すぎてなぁ。


 ⋯⋯何だろう、何か忘れてる気がする。こんなに胸がモヤモヤするのは、何なんだろうか。


「ご主人様? どうかしましたか?」


『いや⋯⋯何か忘れてる気がしてな』


「忘れてる⋯⋯?」


「これから突入する順番を教える! 呼ばれた者は早速突入してくれ!」


 そうこうしてる内に冒険者の何人かが迷宮に入ってしまった。


 しょうがない。何かあったらその時だ。今は攻略に集中しよう。


 その後どんどん冒険者が突入していき、名前が呼ばれると俺達は迷宮に潜っていった。



─────



『さて、迷宮で戦う構成だが⋯⋯カルマ、アイツを出してくれ』


「分かった。マティア、出番だよ」


 カルマは腰に掛けていた虫篭を地面に置いて蓋を開ける。するとそこから毒々しい色をした蟷螂が出てきた。


 蟷螂は虫篭から出ると同時に、掌サイズだったのが人間大の大きさへと変化した。


 蟲人という種族は、エルフが精霊をパートナーとする様に魔蟲をパートナーとする。十歳になると蟲人の伝統儀式で自分の手で魔蟲を探しパートナーとする。


 カルマのパートナーはヴェノム・マンティスという毒の蟷螂で、致死性の猛毒で敵を狩る魔蟲だな。名前はマティアだ。


 コイツがいればバーサーク・ベアも倒せたんじゃなかったのかと思ったが、どうやら奇襲を受けて瀕死になっていたらしい。マンティス系の魔物は耐久が柔らかいからな。


 あとマティアが入っていた虫篭なんだが、蟲人の特殊な魔道具で魔蟲を入れておく物らしい。どうして小さくなって入るのかは不明だけどな。


『じゃあ、前衛は俺とカルマ、マティア。中衛はアリス。後衛はレイ。メリノは斥候を頼む』


「分かりました」


「うん、分かったよ」


「分かった」


「ほいほ~い。了解~」


 俺達は先程言った様に並ぶと迷宮の奥に足を進める。と言っても前回の調査で五階までの道は知ってるからサクサク進んだけどな。


「そういえば⋯⋯フォモール族ってどんな姿をしているの? 僕は牛頭の人型の魔物だって聞いたけど」


「私は手足の無い芋虫人間」


「え~? ボクは手が四本ある人間って聞いたけど~?」


 見事にバラバラだな。間違いじゃないけど。


『お前らの言ってるのは全部間違ってないぞ。ゴブリンとかオークみたいに姿形が同じじゃないからな。他にも脚が大量にあったり目が何個もあったりするぞ』


「ほえ~。変な奴等だね~」


 そんな事を話している内に五階を抜け、六階に辿り着く。


『こっからは進んだ事がないからな。魔物は先行した冒険者が倒してくれただろうけど一応警戒しとけよ』


「分かったよ」


 ってか、大迷宮だからってこんな大人数で挑む必要あるのか? 幾らなんでも多過ぎな気がするんだが⋯⋯。


 この事だが、後にギルマスに聞いた話によると先行した冒険者が魔物を殲滅し、中盤に入った者が先行した奴等が取りこぼした魔物の討伐に加えて宝の回収。後半に突入する冒険者が番人や迷宮の主の討伐を行うらしい。なんでも主力の冒険者の疲弊を抑える為だそうだ。


 回収した宝は攻略後に冒険者全員に分けるらしいな。活躍した冒険者には選ぶ権利が与えられるそうだ。


 ⋯⋯何か『~らしい』とか『~そうだ』しか言ってないな。もっと情報集めていかないと。


「⋯⋯ご主人様」


『おっ? どうしたメリノ』


 すると先行していたメリノが話し掛けてくる。


「敵です。数は十。恐らくフォモール族だと思われます」


『オッケー。じゃあメリノ、針で先制出来るか?』


「分かりました」


 メリノは針を取り出し投擲する。針は見事刺さり、敵は声を上げる。


『⋯⋯メリノの言うとおりフォモール族だな』


 通路の暗闇から出てきたのは醜悪な姿をした魔物だ。剣を持ったり右腕が肥大化した奴。更には単眼の奴までいる。


「─────!」


「─────!?」


「ね~カルマ~。何て言ってるか分かる~?」


「いや⋯⋯ただ、敵意はあるっていうのは分かるよ」


『お前ら、迷宮初戦闘だ。気ぃ引き締めろよ』


 俺達は武器を構えると同時にフォモール族が襲い掛かってくる。メリノはもう一度針で牽制すると俺達の後ろに下がった。


『カルマとマティアは二人で一匹を相手にしろ! メリノとアリスは敵を牽制、レイとシルフィは弓や魔法で援護してくれ! 攻撃は全部俺が防いでやる!』


 通路はあまり狭くない。全員で十分戦える広さだ。それぞれが邪魔してしまう事はないだろう。


 本当は俺が一掃してもいいんだけどコイツらに経験積ませる機会でもあるし、あまり派手なのは止めておこう。ピンチになったら遠慮なくぶっ飛ばすけどな。


「よし、行くよマティア!」


 カルマはマティアと共にフォモール族へと走っていく。


『おいっ! そんな馬鹿正直に⋯⋯』


「ファントム・サイズ!」


 フォモール族に突っ込んでいったカルマを呼び止めようとするとスキルを発動する。カルマの姿は突如として揺らめき、敵の背後に現れた。



《ファントム・サイズ》鎌術Lv3の戦技。相手の背後に瞬時に移動し、鎌を振り下ろす。背後に回る瞬間、少しの間幻影を作り出す。


《鎌術》戦鎌を扱い戦う為のスキル。癖があるが相手の意表を突くような戦技を覚える。



 カルマの使ったファントム・サイズは相手の背後に移動して攻撃する鎌術の戦技だ。ファントムの名の通り少しだけ幻影を作るので、縮地と違ってタイミングが分かりづらい。


 そしてカルマはそのまま背中を斬りつけ、怯んだ敵にマティアが毒の鎌で攻撃する。マティアの鎌を食らった敵は毒を食らったのかドタドタとのたうち回ったあと絶命した。


 えっ、マティア怖っ。毒耐性持ってない敵即死だろ? 大抵の敵ワンパンじゃん。しかも苦しませてから殺すオプション付きとかすげえ質悪ぃ。


『考えなしに突っ込んだ訳じゃないのか』


「あはは~。カルマがそんな人だったら冒険者やってられないよ~」


「ん。カルマのお陰で生きてきたと言っても過言じゃない」


「ご主人様は一人でどんどん倒してしまうので分からないと思いますが、彼の腕前はかなり良いです。光るものはあると思います」


 メリノも褒めるくらいなのか。天才肌ってやつなのかね? 


 見るとカルマは一人で複数の相手をしても問題なく戦えている。マティアとの連携も見事だ。今まで意識してなかったけどこんなに強かったんだな。


『って、カルマ一人に戦わせんな! ほらお前ら、援護しろ援護を!』


「あはは~、了解~。バインド・ウィップ、からの⋯⋯エクスプロージョン~!」


 俺の言葉で先に動いたのはアリス。カルマの背後に近付いていたフォモール族を鞭で縛り上げると爆発を引き起こして攻撃する。



《バインド・ウィップ》鞭術Lv1の戦技。相手を鞭で絡め取り拘束する。攻撃性があるためダメージを与える。


《鞭術》鞭を扱い戦う為のスキル。相手を拘束したり連打力のある戦技を覚える。


《エクスプロージョン》爆発魔法Lv1の魔法。火炎属性の小さな爆発を起こす。


《爆発魔法》魔族の種族魔法。火炎属性を主にした強力な爆発を起こすスキル。



 バインド・ウィップは鞭術の戦技だ。バインド・ワイヤーと違って攻撃効果があって拘束力が高い代わりに効果時間と射程距離が短い。


 そしてエクスプロージョンは魔族の種族魔法である、爆発魔法の一つだな。


 爆発を受けたフォモール族は即死とまではいかなかったものの、肉は抉れて所々焦げている。どうやら大ダメージを与えたみたいだ。


「ほ~い、ドスッとね~」


 そのまま鞭を引っ張ってフォモール族を引き寄せると頭部にソードブレイカーを突き刺してトドメを刺す。


 おお、見事なもんだな。ゲームプレイヤーでもあんな動きが出来るのは中々いないぞ。やっぱ本場の人は違うな。


「私もやる。シルフィ、力貸して」


 すると今度はレイが動いた。弓矢を構え、シルフィはその矢に風の加護を掛ける。加護の掛かった矢は速度と貫通力が上がり、フォモール族の身体に簡単に突き刺さった。


「シルフィ、今」


 レイが合図を出すとシルフィはパンッと手を叩く。すると突き刺さった鏃からカマイタチが発生して肉を抉った。


 シルフの力は弓矢や投擲具等の遠距離武器と相性が良い。さっきみたいにカマイタチで攻撃したり、加護によって速度を上げる事が出来るからだ。


 因みにサラマンダーは筋力、ウンディーネは魔力を強化できたりする。強化出来るステータス等は精霊によって様々だな。あと精霊との繋がりみたいのが強いと加護が強くなるみたいだ。


 あ、メリノは三人が相手してない残った敵を無双してる。もう三人とは格が違うね。俺? ガーディアン発動して棒立ちしてるよ。敵さんの攻撃力が低すぎてノーダメで済んでるからな。


『⋯⋯俺の出る幕はないみたいだな』


 この程度の敵ならコイツらは余裕か。コイツらFランクだけど三人の総合力で言うならDランク⋯⋯いや、Cランクくらいまであるか? 最近冒険者になったって聞いたからな。まだ実力に見合ったランクまで上がってないんだろう。


 あの時バーサーク・ベアに死にかけてたのは疲労からの思考力低下だろうな。安宿にしか泊まれなかった様だし、疲れがちゃんと取れなかったんだろう。どんなに強くっても疲れには勝てないからな。


 あ、そういやコイツらの職業だが、カルマは戦士(ウォーリア)、アリスは道芸人(エンターテイナー)、レイは弓使い(アーチャー)らしい。メリノに鑑定眼の使用を止められなければもうちょっとステータスを確認出来るんだがなあ⋯⋯。


「ご主人様、幾らなんでも気を抜きすぎです。もう少し緊張感を持ってください」


 斧槍と大盾を下ろして戦闘風景を見ているとメリノに注意された。あ、もう掃討したんですかそうですか。


『そんな事言われてもなあ。ガーディアン発動してるだけで十分だろ?』


「そういう事を言ってるのではありません。他に敵が来ないか気を付けてくださいと言っているのです。例えばこの壁や天井から奇襲してくるとか⋯⋯」


『いやいや、そんな事あったら危機察知が発動するから大丈夫だろ』


「だからってそんな気を抜くのも⋯⋯」


 そうメリノが言った瞬間、足元に危機察知が発動する。反射的にメリノを抱いて前に飛ぶと俺達が立っていた場所に落とし穴が開いていた。


『おおっ!? どういう仕組みだこれ!』


「あ、ありがとうございます⋯⋯」


『おう。で? 誰が気を抜いてるって?』


「むっ⋯⋯」


 メリノを少し煽るとムッと不機嫌そうな表情をする。おお、何か可愛い。ってかあんまり怖くないな。


「しまった! 二人とも、そっちに一匹抜けたよ!」


 するとカルマの声が聞こえ、振り向くと右腕が肥大化したフォモール族がこっちに走ってきていた。


「ハッ!」


「─────!!」


 メリノはそのフォモール族に針を投擲する。しかし何かのスキルを発動したのか、針は身体に刺さらず弾かれてしまった。


「っ、針が通らない!?」


『メリノ、どけっ!』


 俺はメリノを押し退けて斧槍を振る。しかし肥大化した右腕を犠牲に斧槍を防ぐとそのまま突進してきた。そして⋯⋯


『ぐおっ!?』


 フォモール族は俺を巻き込んで落とし穴へと落ちていった。


『ヤベッ、空中浮ゆ⋯⋯』


「─────!」


『うるっせぇ! く、クソがぁああ!』


 空中浮遊で落とし穴を脱出しようとするとフォモール族が無理矢理スキル発動を妨害。その間に落とし穴は閉まってしまい、俺は奈落へと落ちていった⋯⋯。

 はいどーも、作者の蛸夜鬼です。


 まずは前回、♯9の投稿を間違えて別の小説にしてしまったのを謝罪します。今後この様な事がない様に気を付けたいと思います。


 さて、今回は迷宮に突入してランヴェルが落ちましたね。ええ、それは見事に。


 あ、因みに精霊のウィルオとはウィル・オ・ウィスプの事です。名前が長いので省略しました。


 さあ次回は初のメリノ視点です。主人公は最後の方しか出てきませんのでご了承ください。


 それでは今回はこの辺で。また次回お会いしましょう!

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