〔新世界での出会い〕
「いやぁ、やっぱアキバは何でもあるな...フィギュアに、グッズに...あとは、メイド喫茶ッ!」
沢山の袋を持って満足に帰っていた俺は、その日...
「危ないっ!」
誰かが声をかけた瞬間後ろを振り返ると...
その間も無く俺は車に轢かれた...
何だったのだろう、暴走車か、逃走車なのか分からないが...それよりもかなりの衝撃だった、多分死ぬな...これ...。
あれ?でも、おかしいな...普通なら心の中でさえ意識が無いはずなのに...。
...銃声?耳はもうとっくにおかしくなってるけど...いや、聞こえる...
「ん、なんだ!?ここは...?」
俺は何故か草原で起きた...
「あ、スマホが無事だ、圏外...まあ、そうだよな」
とりあえず、疑問が今頭の中で交差している...
一体何処だか分からない所で起きたこと、そして何処からかで聞こえる銃声、それもかなり...撃ち合いか?
「とりあえず、行ってみるか...」
音がする方へ、しかしその先には...
「Suivant!Tirer!!(次、撃てっ!)」
戦争だ、あの国旗..フランスか?もう一方は...イギリス?...。
服装は古い...銃も古い...どう見ても中世ヨーロッパの時代だ...。
「ま、まさか...俺は中世に転生しちまったのか...?もしそうじゃないなら...いや、アレは実弾だ...」
「まずい...今巻き込まれる訳には...」
「おい、貴様、ここで何をしているッ!」
突然、後ろから声をかけられた
「うわっ!」
「質問に答えろ、さもなくば撃つ」
赤髪で、碧目の...女?
「...あぁ...ま、待ってくれ!」
「こらこら...いけませんよ、こういう時こそ優雅に、冷静に振る舞うべきですわ」
「アストレア様...」
今度は金髪碧目の騎士だ...
「それで、ここで何をしていたのか...聞かせてもらえないかしら?」
「あ...はい、目が覚めたらここにいて...よく分からないんです」
赤髪の人は呆れた顔で言う
「何を訳の分からない事を言っているんだ」
金髪の...名前はアストレアと言っただろうか
「ウフフ...面白い事を言っていますね、まあ、見たこともない服に...そのガラスの持っているものは...?」
「これは、スマホって言うんだが...」
「スマホ?」
「電源を付けたらこんな感じに...」
「まぁ!何か映りましたわ!?どうなっていますの?」
赤髪の人もかなり驚いた様子だった
「まあ、敵ではなさそうですし、そうですわね...良かったら私達の国に来てみてはいかがかしら?」
「あ、アストレア様!?」
「いいのよレイリ、私の専属の執事になるなら『衣食住』もできますわ?」
そうだった...食事も住むところも無い(おまけに一文無しだ)...
仕方がない...まあ、金髪のお嬢様の執事になれるだけかなり幸運だ...
「分かりました、貴方専属の執事になりますよ...」
「まぁ...それは良かったわ、お父様にも早く伝えないと!」
「(アストレア様、もしかしてお気に召されたのか...?)」
どうやらその国とは、イギリスみたいだ、イギリスといえばこの時代なら海軍の力で植民地を広げて、世界の覇権国家になる国だったな...
まあ、そうだな、料理は...うん
1799年 フランス北部 ドーバー海峡
レイリは指示を出しながら俺に言った
「撤退するぞー! 君も、船で休むといい」
「船員達と兵士達は酒好きだけどみんないい人よ、安心してね」
アストレアはそう言うとレイリと共に別の船へ乗った。
これから船を使ってロンドンへ行くのだろう、1度旅行でなら行ったことがある、その時代を実際に楽しめるのだから、少しだけ子供ながらにワクワクしていた
「これからまた変わった生活が始まるんだな...」
ボーッとしながら船内を眺めていた...その時
「なぁ!おめぇ新人か?」
1人の男が話しかけてきた
「ん、あぁ、アストレア様専属の執事に...」
「なぁにぃ?おめぇアストレア様の専属の執事に!?羨ましいなぁ!」
周囲も驚いた様子でこちらを伺ってきた
「ねぇ君、名前はなんて言うんだい?」
もう1人の男が話しかけてきた
「高城 颯斗だ」
「...んー、ということは東洋の国から来たんだね、でも、見慣れない服装だね、東洋の人達はちょんまげに着物だったんだけどなぁ...あぁ、僕はグリンダ、よろしく頼むよ」
あぁ、多分江戸時代後期ぐらいか...
「あぁ、よろしく...」
「なぁ、兄ちゃんちょいと飲まねぇか?」
ゴツイ男が今度はお酒を勧めてきた...待て、俺...16歳なんだがまだ...
「あ、ああ!」
「ホレ!グイッといっちまいな!」
強引に飲まされてしまった
「...うっ」
「やばい...酔いが...まずい...」
「あっ、ドレッドさん!そんなに酒を飲ませたら...もう手遅れだ...」
「ありゃ、酒イケそうだとぉ思ったんだがなぁ...まあいぃか」
よく...ない...
1799年 イギリス 首都ロンドン
「大丈夫ですか?ハヤトさん」
「ん、あぁ、寝てたか、俺...」
「はい、僕とラスカルさんで運んで来ました」
「ラスカル?」
「専属の執事で羨ましがってた方ですよ」
あぁ...あの人...
「それより、実は僕も執事なんですよ!アストレア様から仕事の事は僕に聞くよう任されてます」
「おぉ、そうだったのか」
「はいっ!今日から1日、よろしくお願いしますね」
「おうっ!」
こうして、俺は中世の世界で新しい一日が始まるのだった