3話
3
ピピッ
カードを扉の所へ触れさせると、ピピッという音と共に、ガチャッと扉の鍵が開くような音がした。
やはりカードロック式は良い。音が癖になる。
最近は体内にチップを埋め込み、手をかざすと扉が開く、というような近未来的な技術があるらしい。
でも、そこまでしてやりたいとは思わないけど。
扉を開けると、中には人の気配はない。俺は今日は入学式で半日だったので、真奈よりも早く帰宅している。
自分の部屋に荷物を置き、リビングでしばらく昼のつまらないバラエティ番組を見ながら暇を潰していたら、
ピロン♪と、LINEの通知の音がした。
見てみると『梨々花』という名前だった。
ん?梨々花?誰だ?
そう思いトーク画面を開くと、
『天城梨々花でーす!』
『よろしくねー!』
『あ、ちなみに大神くんの誕生日いつー?』
あー、天城さんか。
『よろしく』
『誕生日は3月31日だよ』
よし、普通に返信できた。正直スタンプとかも使っていいと思うが、何かスタンプって使うとテンション高そうだな。上手く説明できないけど。
『うん!』
『あ、誕生日3月なんだ!私4月生まれだから1年私の方がお姉さんだね!』
こうゆう時どんな反応すればいいのかわからない。「天城さんみたいなお姉さん欲しかったよ」的な事言えばいいのか?……あからさま過ぎて却下だな。ここは既読無視して、「あ、ごめーん!トーク画面開きながら寝ちゃってたー!」的な事を言えば……やめよう。流石に無理がある。
『あ、そうだね』
この返信に俺の3分間が全て詰まっている。……3分間悩んだ結果がこれとか…俺LINEでもコミュ力無さすぎですね。
『そういえば大神くんって、得意な教科とかある?』
何で新しい話題振ってくんだよ!
何で陽キャとLINEしないの?!
『まぁ、数学とか体育とか好きかな』
『あーそうなんだ!私も体を動かすのは好きだよ!中学の頃テニス部だったーーーーー
そんなこんなで2時間位LINEしてしまった。しかもまだ話題が続いている。
流石に飽きたので、塾という理由で話を途切れさせたが…。何故陽キャはあんなにも話題のボキャブラリーが多いのだろうか。
何かお菓子でも食べるかと思い台所へ行くと、玄関の方から扉の開く音がした。真奈が帰ってきたのだろう。
「ただいまー」
「おかえり」
コンソメ味のポテチを取り、読書しながら食べるかと思いリビングへ戻ると、真奈が俺のスマホをいじっていた。人のスマホを無断で触るのはよろしくないぞ。まぁ見られたら嫌なものなんて無いけど。
「別に俺のスマホ見たって何もないぞ?ほら、早く返s…
「ねぇ、風斗。この子、誰?」
そう言って真奈は俺にスマホを見してきた。画面に写ってたのは天城さんとのトーク画面だった。
「えーと、今日知り合った天城さんです…」
「梨々花って書いてあるけど、名前とプロフィール画からして女の子だよね。しかも可愛いよね。……どうゆうこと?」
「ま、真奈さん?」
あれ?何か怖い?
しかも何この彼氏の浮気がバレた時の修羅場のような空気。俺と真奈しか居ないはずなのに重い。重すぎる。
「しかも何このバーの小ささ、トークしすぎでしょ。…まさか私が帰ってくるまでずっと話してたの?」
「えぇ、まあ、そうだけど…」
「ねぇ、風斗。風斗はこの天城さんとどんな関係なの?」
何かいきなり核心付いてくるような質問してきた。
「いや、だからさっき言ったように今日知り合ったクラスメイトだって」
「ふーん、ま、そうゆうことで許してあげる」
何かわからんけど、お許しを貰ったので、ひとまずは安心だな。
「まぁ、別に彼女とか作る気無いから。真奈いるし」
「えっ?」
あ、やべ。誤解を生むような言い方をしてしまった。今のは彼女を家に誘う時に、真奈に迷惑かけちゃうかもしれないって意味だったんだけど…。色んな意味で。
しかし手遅れのようで、既に真奈の顔は耳まで真っ赤になっている。
「あ、今のはーーー」
「な、な、な、何言ってんの?!わ、わ私がいるしってことは……つまり…その……か、彼女にするなら、わ、私がいいって事?」
うん変な解釈をされてしまった。
まぁ、別に真奈が彼女とか最高だが、誤解したままなのは良くないので、ここは誤解を解こう。
「いや、そうじゃなくt…」
「そ、そうなんだ……風斗は、わ、私がいいんだね………えへへ」
あれ?この子俺より偏差値10高いはずだよね?それなのに何で日本語通じないの?
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