第2話 現状把握です
子供1人には大きすぎる部屋、所々に飾ってある調度品はシンプルながら素人目から見ても値の張る物だと分かる。貴族、それも公爵令嬢の部屋としては飾り気がない方であるが、根が庶民であるセレナティアからしたらもう少し狭い部屋でもいいと思うくらいだ。部屋に飾られている鏡の前に立つと興味深げに鏡を凝視する
鏡には絶世の美少女と言っても過言ではない少女が目を丸くしている。腰まであるふわふわのプラチナブロンドの髪、宝石の様に輝く翡翠色の瞳、柔らかそうな頬、シミ一つない真っ白な肌。
勿論、セレナティアである
「いや~凄い美少女ですね」
「この世界の顔面偏差値は高めだがお前はその中でも上位にしたからな!」
「何でもアリですね」
「神だからな。それに、神ってのは美しいモノが好きなんだ。心でも容姿でもな
あと、顔が良いだけである程度は勝ち組だしなw」
クレアはにししと笑う。見た目は上品な猫なのに何だか台無しな気がする
「そう言えば何で女の子なんですか?僕女になりたいだなんて言いましたっけ?」
別に男としてのプライドとかは全くないし、こんな美少女に生まれ変わらせてくれたので別段文句はない。何となく気になっただけだ
「そりゃ、猫を連れてるならガチムチの男よりも可愛い女の子の方が違和感ねぇだろ?」
「確かに」
「それによ」
「ん?」
「個人的にも可愛い女の子の方が良いに決まってんだろ」
「…………」
キリッ。という効果音が付きそうなキメ顔で言い放つクレアに無言になる。セレナティアとて男だった頃の記憶はあるので分からなくもないがこうもハッキリしてるのも如何なのだろう。何というか所々親父くさい
とりあえず今の状況を整理することにした。
まず、セレナティアのフルネームはセレナティア・フロン・ブロガロート。ブロガロート公爵当主の娘。所謂公爵令嬢だ
上に兄が2人がおり、1番上の兄ヴィンセントは15歳、もう1人の兄セレドニオは6歳。長男は騎士養成学院の寮に居るが休みにはよく帰ってくる。家族仲は良好で両親は未だに新婚の頃から変わらずお熱いようだ
そして、ブリヒシュテル王国。
その歴史は古く王族は嘗て魔族との戦争で国を救った英雄の末裔として知られている。豊かな土地を持ち他国との交流も盛ん。未だに魔族や人間以外を忌避する者は零ではないがとても住みやすい良い国である
この国の特徴と言えば一概には言えないがやはり変わり者が多いと云われる王族だろう
例えば、現国王カルロス・フロン・ブリヒシュテルには兄が1人、弟が1人、妹が2人いる。つまり現国王は次男に当たる。長男であるアレクサンドロスは王族でありながら数々の武勇伝を残す冒険者として有名だ。王位を継いだその場でカルロスに王位を譲るという前代未聞の事態を作り上げた、歴代でも最短歴の王である。王自らがこの様に自由なのだから他の親族も程度の差はあれど変わり者が多い
母であるカタリーナは現国王の妹であり、一見おっとりした女性なのだが、当時冒険者だったヴィルヘルムに一目惚れし結婚まで漕ぎ着けた猛者である。王族の血、侮りがたし
そしてセレナティアにとって最も重要なのは他にあった
「それで、私は本当に魔法が使えるんですか?」
抑も魔法が使いたいと願いこの世界に転生したのだ。テンプレともいえるファンタジー世界なのだから憧れの魔法を使ってみたい。興奮気味のセレナティアに弱冠引きつつもクレアによる魔法講座が始まった
あ~文才が欲しいorz