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第一話 思い出しました



「…っ」


突然頭に流れ込んできた映像にズキリとした痛みと混乱が広がる。身体を縮めて耐えていると次第にその痛みは引いていき、同時に混乱も収まっていた


「漸く思い出したみてぇだな」


その声は下から聞こえてきた。其方を見れば飼い猫であるクレアが機嫌良さそうに尻尾を揺らしていた。猫が喋った事に対する驚きはない。何せ、この猫は普通じゃないのだから


「おまたせしたみたいですね」


クレアは気にするなと言うように腕の中に飛び乗り頭を擦り寄せてくる。その見事な毛並みを堪能しながら今の状況を確認する



セレナティア・フロン・ブロガロート


ブロガロート公爵家に生を受けてもうすぐ4歳になる公爵令嬢である









セレナティアの頭に流れ込んできた映像は所謂前世の記憶であった。前世での名前は成田誠。病弱だった事以外には特出したもののない其れなりに売れっ子のイラストレーター。あえて何か上げるとしたらクリエイターであった両親の影響でオタク気質であった事位だ


二十歳を過ぎたばかりでまだまだ可能性に満ちていた。何度も病気で死にかけながらも負けなかった彼だが、車に轢かれそうになっていた猫を助けたことにより呆気なくその生涯に幕を閉じた

予想だにしなかった彼の幸運はその猫が唯の猫ではなかった事だった







「──と言う訳なんじゃよ」


自らを神と名乗った初老の老人はすまなそうにしている。その手には見事な毛並みの白猫─よく見ると銀色にも見える─が摘ままれている


「えぇと…つまり、僕はもう死んでいるんですよね。その時に助けた猫が実は他の世界の神様で…何で猫?」

「あ~この姿が楽なんだよ」


猫は老人の手から離れくるりと着地をする。確かに普通の猫よりは神秘的な感じがするがまさか神様だったとは。しかし、その神秘的な印象は口の悪さで半減されていた


「態とではないとはいえオレ様のせいで死んじまったのは悪かったな。お詫びと言っちゃあ何だが他の世界に転生させることなら出来るぜ?」

「他の世界とは?」

「色々あるぞ?それぞれ魔法、科学、錬金術が発展しておったり数え切れんのぅ」


所謂ファンタジーみたいなものか


「なら、魔法とか使ってみたいです」

「ふむ…此奴が嘗ていた世界が丁度よいかの。今回は此奴の不手際のせいじゃから色々と贈り物をしておくからのぅ」

「良いんですか?」


勿論、貰えるならば欲しいです


「因みにどんなものなんですか?」

「魔法全般に関する適正と膨大な魔力、後は頭脳…まぁ暗記力とかの強化じゃな。他は転生したあとのお楽しみじゃ」

「この爺さんは神様の中でも1番上なんだ。その爺さんからの加護つきだぜ。一応、オレ様のもつけとく」

「加護がつくと何か変わるんですか?」

「とりあえず色んなものに祝福されて、強運とか。後、分かる奴にはすげえ加護が付いてるって分かる」


他の人より運がいいということだろうか。神様の加護なら宝くじを買えば大当たりしそうだな


「そだ、オレ様も一緒に行ってやるよ。お詫びも兼ねてある程度のサポートはしてやる」

「それって大丈夫なんですか?」

「大丈夫だって!オレ様があの世界にいたのも休暇中だったからだしな。人間の一生程度は余裕である。あ、サポートとはいっても基本的には普通の猫と変わりねぇよ?一仕事終わったばっかで殆どの力使っちまったんだよ」

「何やったんですか?」


「ん~?チョイと世界滅亡させたりだ。

まぁ、詳しいことは長くなるから省くけどな。知りたいなら転生後に聞いてくれや。

オレ様達が一時的とは言え力を失う理由は幾つかある。まず、オレ様達は基本死ぬことはねぇ。死にはしねぇが倒されたりしたら一旦力を失っちまう。他にも世界を作ったりするのにも力をかなり使う。消すのも一緒だ。全部じゃねぇが力を失ってる間は普段の仕事は出来ねぇ。つまりは完全な休みってわけだ!」


人間で言うところの長期休みというやつだろうか?にしても、話している内容は物騒だ


「神様も大変なんですね。僕としても話し相手がいるなら大歓迎ですが……いいんですか?」


「休みはありがてぇがやることねぇのも考えもんなんだよ。お詫びも兼ねてるしな。ま!宜しく頼むぜ相棒」


これが成田誠としての最後の記憶である









「……本当に転生とかあるんですねぇ」

「神は約束を守るからな」


セレナティアは自らの身体を見下ろしながらしみじみと呟く

クレアは人間が腕を組むように前足を組むと当然とばかりに鼻をフフンとならした。器用なものだ


「今はまだ記憶を思い出したばっかで疲れただろ。時間はあるんだ、後でゆっくり話そうぜ」


指摘されて自分の身体がダ妙にダルいことに気が付いた。クレアの言うとおり幼い身体では体力の消費が大きすぎたようだ

セレナティアはクレアを抱き締めると睡魔にその身を委ねていった







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