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不良令嬢と生真面目王子の関係性  作者: いしい
下町の賭けボクシングで恋をした生徒は
7/19

生徒会室秘密の作戦会議

ショコラも食べ終わり、役員達が出て行った後、生徒会室には、グウィンとイゾルテの二人きりになった。

机の上のお皿達を片付けずに、二人のコップに紅茶を注ぎながら、イゾルテが「で?用は何?」と聞いた。


「ああ、君がとってきてくれた葉っぱなんだが」

「なにか分かったの?」

「麻薬らしい」

「ふうん、そんなことだろうと思った」

「わかってたのか?」

「いいえ、あんなところで受け渡す小さな袋の中の葉っぱなんて、大抵そんなもんじゃない?」

「そうか、なるほど」

「それで、どんなのなの?あ、言っとくけど、さすがに麻薬はやったことないし、これからもやる気はないからね?」

「それはよかった。これは、気分がハイになるものだ。鑑賞用のある花を使ったもので、今のところ育てたりする事に関しては、禁止されていない。この学院にも温室に生えている。あれを手渡ししているのも問題だが、一番は、これがどういうものか知っているか、と言うことだ」

「確かにそうね。でも、どうやって確認するの?」

「私の好みは正面突破なのだが…」


と、グウィンは言い淀んだ後「さすがに、地下ボクシング場で見たとは言えないだろう、お互い」と言った。


「そうね。私だって、そんなこと言えないわ」

「だから、機を待つしかないだろう」

「ふうん。それじゃあ、一日中彼の監視でもしろっての?冗談じゃないわ、私、パース!頑張ってね、未来の宰相サマ」


手のひらをひらひらさせながら、出て行こうとする彼女の手首をパッと掴んで「君も生徒会長ならば、生徒を守るべきではないか?」と静かに言った。


「外のことまでは管轄外よ。私が守るべきは学院内の生徒だけ」

「君は、生徒が悪の道へ進むのを、止めるべきではないのか?」


イゾルテは軽く歯ぎしりした後「でも、そんなこと言われてまでパスするのは、私のプライドが許さない。いいじゃない。徹底的に叩き潰して、二度と、こんな面倒ごとを起こさない良い生徒にしてあげるわ。友人としてではなく、会長として、協力してあげましょう。あなたが、お兄さんのためにやっているとしてもね」と、言った。


「ありがとう、イゾルテ嬢」

「イゾルテでいいわ。さあ、作戦でもお話しになって?考えてあるんでしょう?いいなさいよ」

「では…。今回、この麻薬の元になる花は学院に生えている。彼の家—要は伯爵領の邸だが、そこは、こことは遠い。それに、休みまでは宿舎暮らしを皆がしている。ならば、この入手源は、大方、学院の庭だろう」

「まあ、手紙に書いて、乾燥した花を頂戴、とかは言ってないでしょうしね、そうなんじゃない?なあに?そこにはりこめって言ってるの?私とあなたで?刑事みたいに?」

「まあ、そうなる」

「…はあ、あきれた。絶対に、あなたの奥さんになった人は苦労するわね。まあ、いいわ。協力すると言ったところだもの。でも、授業はどうするの?」

「出るに決まっているだろう」

「あら、授業中に抜け出したら、どうするの?」

「そんなこと、するものなのか?できないと思うが」

「馬鹿ねえ。あなた、ちょっと恋愛小説でも読んだ方がいいんじゃない?あれだけ肩入れするほどの恋をしてるのよ?するわ」

「だが、授業中にどう抜け出すんだ」

「あら、簡単よ。体調が悪いって言えばいいの。それか、わざと授業に最初から出ないか、ね」

「その手があったのか」

「その彼とは、私もあなたもおんなじクラスじゃないから、どうしようもないわよ。密偵でも送り込んで張り込ませたら?」

「残念ながら、私にはそういった存在の者は付けられていない。自分たちの目で見るしかない」


それに、むうっと口を尖らせて「最悪」とつぶやいた。

それに対して、真面目に「学生一人につけるべきではないと思うのだが」と答えた。


「はいはい、そうですわね、王子様。で、庭をみはるのはいいわ。その花が生えているのは一箇所だから、簡単ね。でも、どうやって、彼の行動を把握するの?」

「それが問題なんだ。いい案はないだろうか」

「それくらい自分で考えなさいよ。私に協力してほしいって言うくらいなら」


グウィンは「すまない」と謝り「だが、どうしても考えつかなかった。知恵を貸してくれ」と頭を下げた。

それに、王族に頭を下げられるなんて気分がいいわね、と心の中でつぶやいたイゾルテは「あなた、授業をサボるのってどう思う?」と聞いた。


「もちろん、授業は出るべきだ。それが、生徒である私たちの本意であり、尊ぶべき権利でもあり、義務でもある。私たちは、この教育を受けられる権利を有している。素晴らしいことだ。だからこそ、受ける義務がある。それを怠るのは、いけない」

「それじゃあ、あなたは授業を受けるといいわ。1日だけ見張りをしてあげる。ばっちり証拠まで取ってきてあげる」

「それでは、君が授業に出られないということになる。それはいけない。それに、そろそろテストだ。君の支障になる」

「それじゃ、この葉っぱの子は諦めるのね」

「それもできない。彼が完全に道を踏み外す前に、そしてなにより、兄を巻き込む前に止めなければならない」

「まあ、とにかく、今日は一旦この話し合いは終えましょう。1日じゃ決まらないわ。でも、とりあえず、あなたの代わりに、葉っぱボーイが最近どうかってくらいは聞いてあげる」


グウィンは、それに、たしかにそうだ、と納得し、出て行こうとした。

「あら、頭使って疲れたから、あなたも付き合いなさいよ」と、紅茶と会長の机からチョコを取り出して、イゾルテは引き止めた。


彼は、ふうと椅子に深く座り直して「では、ありがたく」と、頷いた。

イゾルテは、ふっと笑って、彼と自分のカップに紅茶を淹れたのだった。


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