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不良令嬢と生真面目王子の関係性  作者: いしい
下町の賭けボクシングで恋をした生徒は
1/19

プロローグ

イゾルテ・バーキン辺境伯令嬢は、ラデュレ王国、王立フルード学院の生徒会長である。

豪奢なブロンドの巻き髪に、フェミニンな顔、気怠げでコケティッシュな雰囲気、ちょっとだけ着崩して制服をオシャレに着るセンス、機転がきく返しができる賢さに、誰に対しても物怖じしない態度。

これらのおかげで、彼女は歴代生徒会長の中でも1、2を争う人気生徒会長と言われている。

先生からの信頼も厚く、誠実できちんとした生徒だと思われている。


だが、残念ながら、それは表向きであって、彼女自身は不良令嬢である。

タバコは吸うし、賭け事もやる、喧嘩もやる。イカサマだってなんのその、街中に遊びにいってしまえば、彼女はきちんとした生徒会長ではなく、不良令嬢になるのである。

しかし、普通、令嬢であれば、不良になる要素は少ないもの。では、なぜ、彼女はこうして不良令嬢になったのか、それの全ては、彼女の父、ブルーノ・バーキン辺境伯に帰結する。


ブルーノ氏は、元々王直属の騎士団団長である。剣はもちろん、槍も弓も使いこなし、明朗快活、騎士らしい生真面目さはなく、誰にでもわけ隔てなく接する好漢である。

だが、優秀な人物ほど癖が強いもので、彼は騎士団団長のくせに街中で遊びまくり、たまに借金を背負ったりするような、中々にやんちゃな人だった。それに、喧嘩や戦いの大好きな脳筋で、賭けボクシングに行きまくり、出入り禁止にされたり、戦争であんまりにも大暴れするから王直々に叱られたりする困った団長でもあった。

そんなブルーノ氏は、引退と共に実家の領地に舞い戻り、辺境伯となった。結婚した彼の奥さんは、あまりの脳筋、放蕩ぶり、不良っぷりに愛想を尽かして出ていってしまった。娘のイゾルテも、奥さんが連れて行くはずだったのに、外聞もなにもなく泣き叫ぶブルーノ氏を見て、諦めて、彼に託したのである。

ここで、奥さんが連れ帰っていれば、彼女は不良令嬢にはならなかったであろう。

ブルーノ氏は、脳筋な放蕩野郎ではあったが、彼なりに一生懸命娘を育てた。どこに行くにも一緒。

そう、賭けボクシングも、辺境伯私設騎士団の訓練にも、街中のゴロツキのいる酒場にも、ポーカーをして暴れる時も、王に呼び出され王都に行く時も、娼館を覗きに行く時も、いつでも娘を連れ立った。

そこで彼女はしたたかに育ち、娼婦のお姉さんとタバコを吸いながらおしゃべりし、ゴロツキを蹴り飛ばし、時に男性を誘惑してお金をちょろまかしたり、ポーカーでイカサマしたり、騎士団の訓練で大暴れをかましたり、そういうことをする令嬢になってしまったのだ。


時折遊びに来る奥さん、要はイゾルテ母に、この現状を嘆かれ、フルード学院に飛ばされたのである。

少しは淑女がどういうものか学んで来なさい!と。

ちなみにブルーノ氏は、こういう令嬢に育ったことを嘆くどころか、自分にそっくり!と大喜びしている。

そうして、学院に入学した彼女は、地頭が良かったのと勝気で負けず嫌いな性格だった為、すぐに成績は上がり、生徒会長にのし上がったのである。

これには、父も母も大喜びである。

おかげで彼女はより一層、学院ではいい生徒会長を演じ、絶対に素行不良だということが知られないように努力している。


さて、話は変わって、このフルード学院には王子が在籍している。

第一王子ハインリヒ、第二王子グウィンの二人が在籍している。だが、実際に知られているのは、ハインリヒ王子だけである。

第二王子のグウィンは、王子だと秘匿されている。

別に忌み子というわけではなく、本人が父王に、自分は王になる気はなく、宰相になる気なので是非とも王子ということは隠して頂きたい、と願い出たからである。この王子であるということは、学院長しか知らないことである。

そんなグウィン王子は、とてつもなく生真面目な性格をしている。融通が利かないし、人付き合いも苦手だし、正論しか言わない。容姿はとても良いのに、中身が堅物真面目青年なので、生徒の大体に敬遠されている。

別に、なにかの要因があって、生真面目になったのではなく、そもそもの性格である。王子だからとか、宰相を目指すからでもなく、本当に、元々の性格が生真面目なだけなのだ。

3歳の頃からおかしいものはおかしいと言うし、融通は利かないし、クソ真面目だった。

その逆に、ハインリヒ王子は、ほどほどに真面目で融通も利くし、人付き合いも得意で、冗談だって言える、太陽のように明るく、不思議と人に好かれる雰囲気のある美丈夫だ。もちろん、生徒たちに慕われている。

そんな二人は、全くの真逆だが、仲がたいへんよろしい。

もちろん、お互い仲がよろしくなくなるような要因はたくさんある。例えば、ハインリヒは正妃の子で、グウィンは第二妃の子。後ろの権力の欲しい大人たちに、王妃同士のよそよそしい仲。真反対の性格。まあ、色々とあるのだが、本人たちは仲がいい。

幼い頃に、ハインリヒが王になるからグウィンは宰相になる、とお互いに約束しているし、実際にそうなるように突き進んでいる。

だから、この学院で、二人はほとんど喋らないし、目もたまにしか見合わさない。

それでも、二人は大の仲良しであるのだ。

グウィンは、ハインリヒの為にならないことや、人は、こっそり秘密裏に処理しちゃう程度には仲良しなのだ。


これは、そんな真面目王子と不良令嬢が出会う物語である。



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