花火下か…。
あらすじでも書きましたが、ある映画の題名を聞いただけで内容は全く知りません。告知VTRすら見てないです…。
夏の太陽が、道のアスファルトに当たり、照り返しが肌を焼く日が続く8月のある日。田舎の小さな病院である、咲岳病院201号室。白を基調とした部屋には、一人の女性がベッドで医療器材に囲まれながら眠っていた。その傍らには、彼女の恋人だろうか、スーツ姿の男がいた。
男は、8月なのにもかかわらず、ネクタイを締め、ジャケットを着ていた。8月になる病室は空調を利かせているが、勿論病室に来るまでは照りつける太陽の中を歩いてきたはずだが、その顔には汗の一粒も浮かんでなかった。
「今日は花火大会らしいね。多くの人がもう場所取りのために動いていたよ。」
病室の南側に取り付けられた窓からは、花火大会の会場である日本で有数の清流として有名な河原へと、多くの人が足を向けて歩いていく。混雑を避けるため、花火大会を企画する市が、交通の規制を行っているのだろう。証拠に、病院に面した大通りは、いつもは車の騒音で煩さが嘘のように、人々の声で埋め尽くされていた。人々の声は、楽しそうで笑い声に満ちていた。
「去年は、君もあの中にいたはずなのにね…。」
呟く男の声は、どこか寂しげで、憐れみを含んでいた。
コンコン。軽いノックの直後、病室の横開きのドアはゆっくり開いていく。
「里中さん。おかあさんがお見舞いにいらっしゃいました。」
「こんにちは。」
「今日も、暑いわね。夜の花火大会の時には、もう少しぐらい涼しくなっていると嬉しいのだけれど。」
「そうですね、今日の最高気温は30度を超えるらしいですよ。」
「では、私は、これで。何か用がありましたら、ナースコールでお呼びください。」
ナースは、そう言って、入って来る時同様、病室の横開きのドアを開き出ていく。
ガラガラッとドアが、開き、閉まっていくまで、先程までの外の喧騒が嘘のようにドアの滑車の転がる音だけが病室に響く。
「遥花。あなた、花火が昔から大好きだったわよね。」
「ええ、この時期になると、よくはしゃいでましたね。」
「はしゃぎ過ぎて、翌日は体調を壊すまでがワンセットだったわ。」
「人ごみが嫌いなくせに、花火は下から見たいのって聞かないんですよね。」
「いつもは人多いって言って、ひきこもってるくせに、この時期だと屋台が~って、楽し…っ。」
そう言って、あとから入ってきた、おかあさんらしき女性が涙だぐむ。
「俺は花火は、人のいない部屋のベランダから同じ高さで見るのが好きでしたね。」
男は、過去を振り返るようにしながら、目線を上に向けながら語る。
「毎年、それでよく喧嘩してました…。」
男の頬にも涙が伝う。そして男は自らの頬を乱暴に袖で拭い、女性にハンカチを差し出す。
「よければ、これ使ってください。」
「ありがとう。」
「今夜が峠らしいですよ…。」
「っ…。」
女性は、さらに頬を濡らす。
「ドー―ン!!」
どうやら、花火が上がり始めたようだ。
病室が色とりどりの花に照らされる。
「うん。やっぱり花火は、横から見るのが好きだな…。」
そこからは、会話は止み、花火の音が続く。
―花火が終わるわ。
そうだね。もういいのかい?
―ありがとう。
じゃあ、行こうか?
―ええ、じゃあね。お母さん。護さん。
花火が止む時、病室には二人の男女の涙、電子音と慌ただしく入室する人の足音が響いていた。
これ怒られるかな?まぁ、怒られたら怒られたときに考えようかなw
誤字脱字、感想などお待ちしております。
人物設定など投稿しておきます。