勇者ことイグニール・グレン・レーダス
勇者と魔王の熾烈な戦いからどれくらいの時間が経ったのだろうか。
勇者は、ふと目を覚ます。
(なんだ?体が動かないぞ、言葉も喋れない。魔王のやつなんて呪いをかけやがって)
勇者は、魔王に恨みを覚えながら今の状態を打破できる方法を模索していた。
すると、勇者に呼びかける声が聞こえる。
顔はぼやけて見えずらいが、多分女性だ。
勇者は、その女性の言葉に耳を傾けた。
「あら、グレン、起きたの?おはようございまちゅ、今日も可愛いでちゅねぇ」
元勇者ことグレンは察した。
(あ〜〜ね・・・・赤ちゃんプレイは間に合ってます。って転生じゃねえかよ‼︎)
グレンは、混乱状態に陥ったようだ。
この混乱が解けるまでしばらく時間がかかったのは言うまでもない。
元勇者ことグレンが生まれ変わり、数ヶ月が経ち、グレンも次第にこの置かれた状況が把握できてきた。
分かった範囲で言えば、勇者と魔王の戦いは伝説となっていて、それから約100年ほど経った世界だということ、勇者は、今グレンと言う名前で、本名を『イグニール・グレン・レーダス』という。
イグニール家は父親のイグニール・ガブェイン・レーダスを、党首とし、母親のイグニール・エリス・レーダス、グレンの3人家族である。
イグニール家は、一応貴族であるが、地位も高くなく、弱いもの強いものにも平等に接するとを家訓とし、領地の民からも慕われていた。
イグニール家は、グラム王国に属し、ラーヘル州の辺境の街『アリバ』を任せられ、その人口も1000弱と多くない。
自然豊かで、農業や畜産業が盛んな街であり、住民も優しく、あまり争いごとがおこならい良いところである。
そんな環境の中で生きていくことになったグレンだが、気がかりなことがあった。
(数ヶ月が過ぎ心の整理も出来た、転生したという事実、これは仕方がない。だけど・・魔力がな)
グレンが、勇者だった頃、勇者は生まれながらにして莫大な魔力を持っていた。
そこに目をつけたのが、国であった、生まれたての勇者は、その莫大な魔力のせいもあり、狙われることとなった。
両親に連れられ、転々と逃げ回る日々が数年続いた。
しかし、そんな日も終わりを告げる。
逃げる場所もなくなり、国の刺客なよって勇者の両親は勇者を守るために死んだ。
だがその時、両親は勇者に望みを託す
「誰よりも強くなれ、その力で弱いものを守り、皆を導け、そして人を、世界を恨むんじゃない」
それは、勇者が幼い頃に母から聞かされた古き勇者の物語に出てくる言葉、勇者の父親がいつも勇者に言う言葉だった。
両親を失ったきっかけは、魔力にある。
莫大な魔力は、人を惹きつけ、狂わせる。
だからこそ、今をグレンとして生きる勇者にとってこれほど不安なことはない。
今の両親は、前世の両親と同じくらい優しく、自分のことを愛してくれている。
前世の記憶があったとしてもこんなに献身的に面倒を見てくれる両親を好きになるのは当然至極ではないだろうか。
(昔とは違う魔力の操作くらいならできるはず)
魔力を測るためには、計測する魔道具が必要になる。
故意に魔力を出したり又は、それ専用の魔法でもかけない限り、見た目だけで魔力量を判断するのは不可能といってもいい。
それは、つまり魔力量を故意に隠すことも可能という事である。
その行為はかなり至難であり、並大抵の人ではできない。
だか、腐っても元勇者、赤ん坊で本来の力を出せないといっても、その状態で多分、大人数人と戦っても負けることはないだろう。
と言う訳でグレンは魔力操作の練習を始めた。
(ぐぬぬぬー)
荒れ狂う魔力、抑えるため顔がしかめる、結構苦しい。
その時、口に何かを突っ込まれた。
「あらグレンちゃん、おっぱいが欲しいんでちゅね」
母のエレンが無理やりおっぱいを口にねじ込んで来た。
(ちょい母さん空気呼んでよ)