二つの最強
「勇者よ、我がものとならぬか」
魔王その巨大で禍々しい姿で対する勇者に語りかけた。
「それはできないな」
勇者は、魔王の姿に臆することなく答える。
少しの沈黙。
ゆっくりと口を開いたのは、勇者だった。
「だが、もし、人間と魔族じゃなくて、同じ種族なら、いい相棒になったかもな」
魔王は目を見開き、勇者に言葉を投げかける。
「・・・・それはなぜだ?」
勇者は、少し笑いながら答えた。
「俺は、魔王を認めてる、俺とまともに戦える唯一の存在だからな。そう考えたら魔王が人間だったら殺し合うこともないし、いい相棒になると思ったのさ。」
魔王は勇者の言葉に大声で笑った。
勇者もその姿を見て笑う。
ひと時の間、どちらが言い出したのか今ではわからない。
「さあ、決着をつけようか」
魔王が、勇者に向け左手を掲げ呪文を唱え始める。
勇者は、警戒し双剣を構え身をかがめ臨戦態勢をとった。
そして最初に動いたのは魔王だった
魔王の左手から放たれた青白い光が魔王と勇者を包み込む。
それは、攻撃ではなく、何かの補助魔法のような何か得体の知れないものだった。
殺意が感じられなかったためか、魔王本人もその光を浴びていたためか、勇者は魔王の術を受けてしまった。
「魔王、何をした?」
勇者は、魔王を睨みつけた。
「なんでもない、ちょっとした呪いだ、さあここからが本番だ」
魔王はその言葉を合図に、振り上げた大剣を叩きつけた。
勇者もそれに応じ剣がぶつかり合う。
その衝撃は大地を揺るがし、遠く離れた村や町まで届いた。
それからどれくらいの時が経っただろうか。
二人の争う場所は、建物はおろか草木もなくなり、あたりは荒地と化していた。
側からみればほぼ互角、勇者と魔王の力は拮抗しているように思えた。
だが、勇者は気づく自分の力が少し魔王に優ってると、魔王は気づく自分の力が勇者に少し劣っていると。
ふと、勇者が魔王に語りかける。
「楽しいひと時は、あっという間だな魔王。」
魔王も何かを悟ったのか勇者に言葉を返す。
「確かに、名残惜しいくらいだな勇者よ。」
勇者は苦笑いしながら言葉を返す。
「俺たちの出会いが違う形ならこのひと時は終わらなかっただろうな・・・次で終わりにしよう。」
勇者は、双剣に力を込め、目の前の魔王に対峙した。
魔王は、大剣に力を込め、目の前の勇者に対峙した。
走り出す勇者、迎え撃つ魔王、2つの力がぶつかり合う瞬間、
魔王は大剣から手を離した。
勇者の双剣が吸い込まれるように魔王の体に刺さる。
「がはっ」という呻きと共に魔王は吐血した。
不可思議な魔王の行動に勇者が「なぜ」と語りかける瞬間、魔王は、両手で勇者の両腕を掴んだ。
にやりと笑みを浮かべる魔王に勇者は、戦慄を覚え離れようとする。
「もう、遅いぞ」
魔王から発せられる無慈悲な一言
その瞬間、魔王の体が光を放ち、爆発した。
最後に溜めた力の自爆、
「魔王、てめぇ」
予想もしていなかった勇者は避けることもできず、爆発に巻き込まれた。
爆発に巻き込まれ、二人が死す寸前、魔王は言った
「またいずれ、相見えようぞ」
その時不思議な現象が起こる。
二人の体が、蒸発し、青白い光が二本天空に向けて伸びていく。
光はしばらくして治り、あたりに何も無い静けさが残るのであった。