囚われた少女と狭い街
少しでもこの作品を見ようとこのページまで飛んでいただきありがとうございます。
この作品は、作品と呼ぶにはすさまじく駄作かもしれません。ですが、僕はこの作品を執筆してる時が一番落ち着くときでした。なので、このサイトへ投稿することで、自分がどれだけ無能なのかを知る機会としたかったために投稿しました。すこしずつの投稿にはなりますが、始まりの始まりをお楽しみください。
1
青白い光が見える。周りの光の中で一番の煌き。水の中のように息苦しい人混みの中、一つだけ一人だけ異彩を放っている人影。だけど、ソレは人ではなくなってしまった。いつかの夜からそんな人影は煌きを閉ざし、胸に収められる程度の小さな宝石へと変貌してしまった。
「寒いです。ものすごい。誰ですかこの純情な男の子の部屋に入り込んで窓を勝手に開け放っていったのは。」
けだるげに起き、窓へ手を伸ばそうとしたはず。が、
「なんで?なんで今僕は腕を無理やり引かれながら、口に飯を押し込まれているんですかねぇ。」
目の前にいる〈微少女〉が、不満気に口を開く。
「時計みてもまだわからないの?いい加減妹に迷惑かけないでくれないですか、このバカ兄貴。」
「あ、今日始業式か。八時三十分登校だよな。」
「今は、八時十五分。あんたの高校まで約三十分。」
死刑宣告を受け、顔をゆがませた。
「何々この純粋潔白な純情男子は、新学期、それも新高校で遅刻するんですか。はー、悪目立ちしすぎでしょ。」
口では落ち着いていても体というものは案外素直なもので、今までにないくらいのスピードで、飯を食い、顔を洗い、寝癖を見捨てて、いつも持ち歩く古びた布の小袋を持ち、制服を身にまとう。
「今日は私も始業式だけど部活勧誘があるから、遅くなる。ごめんね。夜ご飯は任せるわね。」
一瞬でもツンデレだと期待した諸君。このいかにもツンデレのデレ部分のように思わせるセリフ。「ごめんね」の言い方はいかにも「そのぐらいしてくれこのアホ」と言わんばかりである。
「おう。じゃあな、そっちも学校がんばれよ。」
軽く片手であしらわれた俺は、心を乱すことなく学校への道を進む。
俺たち兄妹は、俺が高校二年の一学期から、妹は高校一年の一学期から、この町へ引っ越してきた。母親は俺が物心つく頃にはなくなっていて、父親は海外で大きなシェアを誇るVSS (Virtual Sky Simulator)の一流企業の社長兼ハードウェア開発最終検査長で、滅多に(それこそ年末年始やクリスマスでさえ)家に顔を出さない。
VSSというのは、ここ十年で開発された空中を自在に移動できる、従来のサングラスを模したデザインのハードのことである。父はこの最初の開発者であり、最新開発を続けている。
二〇一六年より急激に電子系企業、開発が進むこと十数年。人類は空中を自在に飛ぶことを覚え、資源を、人間の体内に存在した物質の新発見により永久的に作り出すことに成功している。つまりは、当時問題となっていたり、SFなどでよく話題に出ていた、資源不足のための、人類削減計画は消滅した、ということである。
そして、俺たちがはるばる東京から引っ越してきたのはそんな開発や実験が、最先端の技術と、最高峰のシステム隔離で築かれた街、旧静岡県に位置する現在呼称「巫県-かんなぎ-」である。
「桜が随分ときれいに咲いてるなぁ。」
新生活に期待を胸に秘め、今までの生活では決して見ることはなかったであろう、自然の豊かさに感動していた。が、遅刻が確定してあきらめていただけである。
2
「それで、どうしたら最初から遅刻を起こせるんですか?おバカさんなの?」
目の前の、生徒だと思い込み声をかけてしまった若すぎて小さすぎて貧乳な担任教師にひたすら頭をさげていた。
「すいませんでした。来れるつもりだったんですけどねぇ…ま、これ以上お叱りされても、さらに時間が過ぎるだけなので、もう教室いきませんか?」
「それは、先生のセリフです!」
小さい体でよく飛ぶなと感嘆を覚える程飛び上がって応答してきた。
新しい学校の新しいクラス。それも、街が新しい。様々な変化の所為で新鮮味の感覚も薄れてきている。壁一枚向こう側には、これからしばらく同じ学生生活を送る三九人の男女がいるのに。
「やっぱ、少し緊張しますね。」
「大丈夫よ、あなたはうちの学校ではトップクラスの成績で、特にうちのクラスでは知らない子はいないくらい有名なお父様もってるんだもの、趣味の合う子が多いと思いますよ。」
いかにも「思いましゅよ。」と聞こえてきそうな感覚である。
「おはようございますぅ。今日はですね。東京からこの特殊科へ特別転校してきた生徒を紹介しますね。どうぞはいってくださぁい。」
「ふぅ。」
短い息をついて、教室のドアを開ける。
「東京から引っ越してきた、禄月海君です。この子の紹介は本人のお任せしますので、みなさんよぉーく聞いてくださいね。」
転校生というワードがめらしいのか、それともいつもなのかわからないが、クラス内は非常に騒がしい。
「はい。僕は禄月海です。東京都から特別転校してきました。親父がVSSの開発をしています。そのため授業で使う端末は、最新より先のモデルが多いので、珍しいかもしれません。一年間よろしくお願いします。」
なぜだろう、VSSの名前を出したとたんに騒がしかった教室が静まり返り、人の心臓音が聞こえてきそうなまでになった。
「あの、直接関係はない質問なんですが、その開発って企業の中でやっているんですか?」
許可はしていないが、質問が聞こえた。
「かまいません、正しくは中ではありませんね、企業自体が開発と供給を目的にしています。知っている人は少ないかもしれませんが、『メテオ・ハードウェア』という会社です。」
今度は静まり返っていた空気が一気に、興味へと変わった。
「メテオ・ハードウェアの社長がお父さんなんですか!?」
「知っているんですか、そうです。だから最新より先の端末が使えるんです。」
クラス全体が、最初ドアをくぐったときの興味のない雰囲気から興味を超えて記念物でも見るような雰囲気に変わっていた。
「じゃあ、海君の席は窓際のあの赤い目の子の隣よ。」
少し気になる子がいた。それは恋愛とかではなく、変わっている子を見たからという意味だ。今担任に指示された席、その隣、つまりは赤い目をした少女。この子だけは、話を聞くどころか、担任や周りの声すら聞こえていないかのように、澄ました顔をしていた。
「よろしくね。」
「…。」
まさか転校早々に無視されるとは、思ってもみなかった。が、周りは話さないとこ、無視することが当然かのようにその少女を空気のようにしていた。
「なんだ、こんな学校でもイジメとかあるのかよ。つまんねぇな。」そう心の中でつぶやくと、きれいにされた自分の席に着き、一時限目の準備を始めた。
この高校の二年次には一般科目は一切ない。一年次に、普通高校が三年間かけて習得する一般科目を終わらせ、二年次からVSSの授業のみが行われる。それが、この国立カンナギハードウェア高等学校の特色である。一年で三年分を習得するため高校自体のレベルは普通ではない。そして、二年次から行われるVSS授業も、すべての生徒は自宅で、筆記にかかわる知識を取得しているため、実技しか行われない。
高校に転校してきて初の実技授業、東京ではトップの座を維持していた。しかし、想像していたレベルをはるかに超えていた。
3
「それでは二年次最初の実技を開始する。まずは、君たちのレベルを測るために模擬戦闘つまりは、スタンドファイトをしてもらう。」
若い見た目の教師が、授業の開始を宣誓すると、クラスの雰囲気が一瞬にして、殺気じみた雰囲気へと変わった。
「一体この高校の生徒はどんなもんなのか。」正直俺は、なめていた。巫の情報は一切が外の都市に流れない。生徒のレベルや授業内容も分からない、故に目の前の光景に絶句した。
あの目の赤い少女が、信じられない実力を見せたのだ。
「すごい…あんなスピードで近距離に持ち込んで、たった一手でKOしてる…」
「流石だ、黒川。タイム0.015秒。」
どよめきが聞こえた。きっと今までの記録も塗り替えて見せたのだろう。
「勝ちたい。勝たなきゃダメだ。」そんなセリフを自分に唱えて、次の番となりそわそわした気持ちを落ち着けた。
「次、禄月。記録がないから最初から本気出せるように頑張りなさい。」
単調だった教科担任のセリフが、少しだけ装飾されていた。
「はい。頑張ります。」
実力検査で行うのは、模擬戦闘テスト。これは、VSSの応用によって、指定された範囲の空間そのものにアクセスし、目の前に現れる模擬クローン(本来ならば生身の人間)に、干渉するというもので、剣状の氷や鉱物での近距離戦闘や、ライフルを形成しそれを使った遠距離戦闘などが存在する。
さっきの黒川は、これを起動からクローンとの接触、レイピア状の剣で刺し殺す。という動作をたったの0.015秒でこなして見せたのだ。平均は10秒程度だ。俺の得意戦闘は近距離で、太刀のような極薄の日本刀を演算の届く限り伸ばしたもので切り刻むのだが、これを自分の専用の端末で、体調万全の状態で行ってもこのタイムは切れない。それどころか、このタイムに手を伸ばすこともできないくらいだ。
しかし、先ほどの動きをみたことで、俺の中で少しだけいつもと感覚が変わっていて、今日だけは切れるような気がしていた。だがそれは、希望とともに嫌な予感を運んだ。
「用意。GO」
VSSシステムと自己脳波をリンク。領域アクセスを開始。物体を確認。
「プリセットより太刀を読み込み、ロードします。」
機械の音声が、順調だと知らせた。
「よし、ここからは自分次第。目標の右手を避けて首を落とす!」
予想よりはうまく動けていた。だが、おかしなことが起こった。俺の使った端末が、目標を消去したとメッセージを出してきたのだ。
「何かがおかしい…」
本来、今の動きをすれば首が飛んで、メッセージでは、目標の殺害を確認。と、出るはずなのだ。それが消去と、出た。悪い予感が的中していた。
俺には一つ使わないようにしていた未公開で自分の知識だけで作り上げた戦闘武器のアビリティがある。特定の武器に接触した物質を抹消するもの。これはまだ未完成に近く成功した試しがなかったのに、その必死さのあまり使ってしまったようだ。
「お…おい、何が起きた?」
「わかんねぇ…だけど信じられない技だった。」
「武器に接触した瞬間、敵クローンが消えた?よな。」
「蒸発したような感じだった。」
当然だが、クラス中が凍り付いた。俺も含めて。
「ほう、見たことないな。いいものを見せてもらったよ。タイム…」
クラス全員がそのタイムを聞き逃すまいとした。
「0.0095」
ざわめいた。それと時を同じくして、黒川は崩れ落ちた。
あの実技のテストのあと黒川は保健室へ運ばれたが、すぐに気を取り戻し授業へ戻ってきた。
-海の失策編 終-
読んでいただき本当にありがとうございます。
どうでしたでしょうか。書いている最中は面白いと思っているのですが、いざ人に読んでいただくものとして読み返してみるとかなり、ありきたりなストーリーだったような気がしますが、次々と書いていって、完結したときに、次回作でこの作品の悪いところいいところを生かすための礎になればいいなと思っています。
内容の話ですが、海の家での姿と学校での姿の違いや、家族の有名度の表現など、初心者なりにすごく悩んだつもりです。実力があると思っていた海が、最新技術の詰まった街で、初めて自分の力が通用しないことを知り、必死に初戦に挑んだ結果、使ってはいけないと決めていた技を使ってしまって、悔やんでいく。最初のお話にしては、説明不足なのに話が進みすぎというような気もしますが、最初の最初だったので、このままいろんなこの世界観の情報を読者のみなさまに詰め込んでいただこうとおもったので、内容の大きな変更はせずに、むちゃくちゃな進行スピードのままとりあえず、海の失策までを書いてみました。まぁ失敗だったのかもしれませんね(笑)
最後に、本当に読んでいただきありがとうございました。