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165回目の転生で手にした幸せ  作者: 千登瀬 餡霧
7/12

4:164回目の死と165回目の転生

遅くなってしまって申し訳ございません‼

章がわりの時に、〇〇=〇〇のようなものをつけることにしました。

ヒロインでます。

お楽しみいただけたらうれしいです。

「・・・大好き、です・・・先輩」

そう言ってくれたのは、一人の少女だった。

銀の髪を腰まで伸ばしている。

本来なら日の光を浴びてきらびやかに光るはずだが、今はその髪を赤く染めている。

ただでさえ華奢な肉体は保護欲を刺激されるが、今はその下半身を失っている。

笑えば春の野に咲く花のような可愛らしい顔にも血がついていた。

そんな重傷を負った、少女は母親に体を預けるように俺に抱き着いていた。

「・・・ああ、俺もだよ。」

そう言って少女を抱き寄せる。

そこの場面だけ切り取ったら喜劇のクライマックスともいえる光景があった。

しかし、傷口からは血がとめどなく出ている。

俺も無傷ではなく、左腕は肩からなくなっており、残った右手も絞った雑巾のようにねじれていた。

それでも、強く、強く、抱きしめる。


ずっとそうしていたい、だが無慈悲なまでに時間が過ぎていく。

もう命のともしびが消える寸前でも、少女は俺を見つめる。

俺も見つめ返す。

そしてそよ風が吹くとそれと一緒に声が聞こえた。



       ・・・ずっと、ずっと、愛してます。・・・先輩・・・ 



その言葉を最後に、俺の意識は闇に飲み込まれていった。


          

        


                

                 




           力=幸せ?

                   


 

俺が目を覚ますと見なれた景色が広がっていた。俺が死ぬと戻される【転移門の間】である。

この名称について以前女神に、「ありきたりだな」と言うと、

「私たちは忙しいし、名称は別にどうでもいいわ」と返されてしまう始末であった。

初めてこの空間に来た者は、その見事なつくりに感嘆の声を漏らすと思うが、

見慣れた俺には別にどうでもいいことになっていた。

ついさっき死んだとは思えないほどの冷静さである。

もし、ここに常人がいたなら彼のことを壊れた奴、というかもしれないが

これも仕方ないのである彼だって激高して泣け叫んだりするだろう。

だが、女神の加護がそれを許さない。いや、ここまでくると、加護ではなく、呪い(・・)だろう。

この女神の呪いの効果は、一定値以上の感情が入ると強制的に冷静にさせるものであった。

強制精神鎮静(マインドコントロール)

感情といっても喜怒哀楽でいえば、怒、哀、が効果の対象である。


さて、彼をそんなようにしてしまった女神の登場である。転移魔法特有の音が響くと彼女が現れた。

「やっほ~。体調はどう?」 

分かっているくせに。だが、あえてこいつが望む答えは答えてやらない。

それが俺にできるささやかな抵抗であった。

「ああ、いつも通り最悪だよ」

だが、女神は顔色一つ変えずにより、一層笑みを深めた。

その瞬間、俺は心臓を握られるような感覚になる。これだけは、何度殺されていようとも抵抗できない。 だから俺は睨み返す、しばし沈黙が漂う。しばらくすると女神は興味を失ったように目をそらした。

「まっ、いっか。それじゃ、いくよ~」

女神の両手に魔力の輝きがともる。いつもと違う反応に俺が困惑している間も、女神の詠唱が続く。

「~今放たれよ未開の扉、探究者にあくなき神秘を~ <転移門(ゲート):リーアン>」

詠唱が終わると同時に、部屋の中央にある巨大な扉が開く。

何度見てもこの扉だけは綺麗だった。扉から暖かい光があふれている中、俺が見入っていると

「じゃ、送るよ~」

その声で我に返った俺は、慌てて女神に質問をする。

「今度の世界はなんだ?」

「ん~?別に普通のファンタジー世界だよ~」

いやその普通が知りたいんだよ、心の中で女神に突っ込んでいると女神がおもむろに顔をあげた。

「あっ、そうそう私の友達の提案で君に力を与えてみようっていうことになったから、

そこらへんかな特徴は」

なるほど、力ね。その時俺に一つの考えが浮かぶ。その考えに内心不安になりながら

俺は女神に顔を向けると一世一代の賭けに出てみた。

「なぁ」

「ん~なにかな?」

「その世界に行くときに、同行者(・・・)を連れていっていいか?」

その言葉を聞いた瞬間女神は、にっこりと笑ったまま

「ふぅ~ん、お前みたいのが(・・・・・・・)私に懇願、ずうずしいなぁ」

まるで別人に入れ替わったような口調で話すが、これがこの女神の本性であった。

氷のように冷たい目でにらんでいたが、にっこり笑うと

「まっいいよ。誰を(よみが)えらせたいの?」

俺の同行者はこれまでの転生で亡くしてしまった一人だけだ。それ以上は傲慢で聞いてくれないだろう。

一瞬だけ考え-すぐ決断する。

「蘇えらせるのは-スティリアだ」

「あら~、スティリアちゃんたら大人気ね~100人(・・・)以上のヒロインの中から、しかも即決!

これはもう脈ありね!」

そんなハイテンションになっている女神を見ながら俺は、内心で苛立ちを覚える。

100人以上のヒロインの中から?ふざけるな、

その100人はお前のせいで(・・・・・・)死んだ人数だぞ‼

だが、その怒りも潮が引くように覚めていく。

・・・ちくしょう、俺が一人で悔しがっていると、

「じゃ、呼ぶよ~?」

「・・・ああ、頼む」

俺が答えると、女神の魔力が放出する。さっきの魔法よりも濃い魔力があふれでる。

「~舞い降りたまえ、儚き魂、今この地に降り立ち祝福を与えよう~ <蘇生(リザレクション):スティリア>

詠唱が終わると同時に、天井に金色の巨大な魔方陣ができた。

その魔方陣の中心から生まれ落ちるように球体が出てくる。

その球体は次第に形を変えていき、やがて人の形になった。

「あ・・・ああ」

俺は無意識に泣いていた。

人の形となったもの、いや彼女がゆっくりと俺の方に落ちてきた。

俺は、ガラスの彫刻に触れるようにゆっくりと腕に迎える。すると、彼女を包んでいた光が収まると同時に風貌がはっきりとわかった。

腰まで伸ばした、絹のような感触の銀の髪。

雪のように白い体。着ている服は転生前の制服であった。破れたりはしておらず新品同様である。

さらに制服の中から自己主張するように豊かな双丘もあった。

華奢な肉体がバランスをとっており、とても可愛らしい。


その姿を確認し、俺は改めて声をあげて泣いた。

しばらくした後、俺が泣き止まってから女神は声をかけてきた。

「スティリアちゃんは、あっちの世界に行ってから目覚めるからね」

「ああ、わかったよ」

「じゃ、いってらしゃ~い」

俺は、スティリアを抱きかかえたまま、転移門へ歩く。

そうして転移門の前に来ると、一度だけ女神の方に振り返り

「・・・じゃあな」

「ええ、そうね」

後ろを振り返らず、俺は転移門に足を踏み込んだ。

転移門に入っていく俺の姿を見ながら、女神は-

「-じゃあね、リュート(・・・・)君」

最後に、俺の名を呼んだ。

楽しんでいただけましたか?

この後は、女神の説話を入れてその次で戦闘に入る予定です。


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