1:終わる日常
お読みいただきありがとうございます。
私は【非劇】というものは、大切なものを失うことだと思います。
「大丈夫ですか❕❕」
そう言われて俺は、
まだ意識が覚醒仕切っていない中、曖昧に答える。
「ああ、大丈夫だ。」
「そっそうですか!! よっよかった~~」
余程心配していたのか、ぺたりと座り込んでしまった。
「確か依美那瑤子さんですよね?」
「はい、そうですよ。純弥君。」
依美那瑤子クラス一の人気者で成績優秀、文学系統の見た目だが、
スポーツ万能で彼女と付き合いたい男子など山ほどいる。
そんな彼女が、なぜ俺にぶつかってきたんだ?
「あの、なんで俺にぶつかってきたんですか?」
その言葉を聞いて、彼女が目を思いっきり見開いていった。
「じっ自分に何が起きたのか分からないんですか!?」
「この自動車が、突っ込んできたんですよ!?」
と指をさされた方を見ると、ぼろぼろな家に突っ込んでいる車があった。
「あっ。」
成程、この車が俺の方に突っ込んできたから
彼女は身を挺してまで、おれに突っ込んできたのだろう。
「もうっ、無事でしたからいいですけど
ぼーっとして歩かないで下さいよ‼」
「すいませんでした。」
「ところで、なんで俺なんかを助けたんですか?」
その言葉を聞いて彼女は本当に激怒してしまった。
「なっ何言ってるんですか‼ クラスメイトなんだから、
助けるのは当たり前じゃないですか‼
そっそれに自分の存在を軽々しく扱わないでください❕」
そう激怒したあと恥ずかしそうに、
ちょっと頬を赤くしながらこんなことを言ってくれた。
「だって-純弥君が、意味のない事故で死んでほしくないから。」
「~~~~‼」
俺は、赤面してしまった。
だってこの十数年生きてきた中で、
異性からー
しかも同年代の女の子から言われたら
耐えられるわけがない。
それから仕切りなおすように
「そ、それじゃあ早くここから離れましょう。」
「あっああ。」
そうだ、ここは危ないのだ。
「立てますか?」
「あ、はい。」
そう言って差し出された彼女の手を、取ろうとしたとき
本当の悲劇は起きたー
俺の体の向きは、仰向けになっている。
そのため彼女の後ろまで見ることができる。
その後ろの風景で動いたものがあった。
車ーではない。
正確には車が突っ込んだぼろぼろの家である。
家の鉄骨が落ちてくるー
『どけろーーーーーーーーー‼‼』
俺は那瑤子の前に出て、鉄骨を背にして庇った。
「ぐぼぁっ。」
バキッベキッと
体の中で次々と折れていくものがあった。
「ぐはっ だっ大丈夫か。」
「えっえっえ。」
あまりの状況に理解できていないようだ。
まずいー意識が消えかけていく
残り少ない時間で言葉を紡ぐー
「はっはやくにげてー。」
その言葉に彼女の体が震える。
「ーや」
「えっ。」
彼女が震えながらも自分の意思を伝える。
「いやです。」
「はっ初めて好きになった人をおっ置いてなんか行けないです‼」
「-ーッ。」
あまりの言葉に声が出ない。
その驚きをどう受け取ったのか。
「なっなら私があなたを連れていきます。」
そう言って俺の体を引っ張ろうとする。
ーまぶたが重い。
「まだ目を瞑らないでくださいー‼
いま、今助けますから、だいじょぶです。だいじょぶでー」
どぐしゃ と、彼女のからだに鉄骨が覆いかぶさった。
「ああぁああああああああああーぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
残る命を使い、叫んだ俺の声は虚しくも空に響いた。
そして俺の意識は、暗闇に吸い込まれていったー
お読みいただきありがとうございます。
次に女神をだします。