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episode28『叛逆の狼煙』

 これは復讐


 これは誓い


 これは野望


 今なら全てが叶う


 全てを壊して手に入れる


 全て……







「え、帰ってない?」


 次の日、忍天狗の集会所内ので少し遅い朝食を食べていた椛は快刀が昨日家に帰っていない事を他の忍天狗から聞いて思わず手を止める。


「魔法の森方面に行ったことはわかっているんだがな。その後行方不明になったらしい」


「いつもの事なんですけど心配ですね」


 昨日の出来事を思い返す椛。


 快刀は何か嫌な事があると魔法の森に行って憂さ晴らしをするという事は椛も知っていたが次の日には多少むすっとしつつも椛の前に姿を見せていた。


「ちょっと見てきます」


 朝食を食べ終えた椛は身支度を整えながら空を見上げる。


 今日は快晴、雲ひとつない青空が広がっていた。


「わかってると思うが天魔様の外出までに戻ってこいよ。持ち場の哨戒は代わるが護衛はお前を指名だからな」


 仲間の忍天狗の一人が椛の肩を叩いて出ていく。


「しまった、その事忘れてた。後回しにしようかな」


「行ってやれよ。お前に任せた俺にも影響が出るからな」


「うーん、わかりました」


 なんとも言えない表情の椛だが銀牙に言われては文句も言えない。


 剣と楯を取るともう二度と戻ることのない集会所を出て行った。







「なぜだ……なぜ……」


 椛が出て行った数時間後、炎上する建屋の中で天魔は配下の天狗達に囲まれて武器を突き付けられていた。


 味方に銃を放つ事も出来ずただ逃げる事しかできない。


 傷つけないように牽制しながら逃げていたが誰かが建屋に火を放ったらしく熱気とはじけ飛ぶ火の粉が天魔の退路を完全にふさいでしまった。


「なにがあったか知らないが……相手を間違えているんじゃないか?」


 天魔としての意地やプライドが、撃ち抜かれて震える両足をなんとか立たせる。


「いや間違っちゃいないさ。さようなら、天魔様?」


「チィッ」


 突き付けられた黒い剣を払いのけ、翼のショットガンを両手で構えて背後の壁に向けて放つ。


 脆くなっていた壁は一撃で抜けて天魔の身体は3階の高さから落下した。


「追え」


 剣を突き付けていた男が背後の天狗達に命じる。


 落ちた天魔は翼をうまく使いグライダーの要領で滑空した。


 しかし後ろから追ってくる天狗達にあっという間に追い付かれて大量の光弾を浴びせられる。


 爆発の中、気を失った天魔は黒煙と共に林の中に墜落した。


 ほぼ同時刻、各地の忍天狗の身にも同じような事件が起こる。


 天狗達の叛乱。


 規律を重んじる天狗達の間に何があったのか、この時は誰も知らない。


「叛逆だ。長きに渡って守られてきたこの忌まわしき規律社会を破壊し尽くす」


 男は天魔の墜落した場所まで続く黒煙を見つめながらニヤリと口元を歪める。


「探しだして殺せ。他の忍天狗もろともな」


 背後に控えていた天狗達が一斉に飛び出す。


 それを満足げに見ていた男は踵を返すと炎の中へと戻っていった。


 一方その頃、意識が一時的に戻った天魔は燃えている外套を脱ぎ捨てて引っ掛かっていた木から飛び降りる。


 追っ手はすぐに来るだろう。


 だが今度こそ限界が来てしまった。


 遠退く意識の中聞き慣れた声が近付いてくるのがわかる。


 この危機を伝えないとならない。


「一体どうなってんだ……おい彪奈! 俺が背負う、急いで逃げるぞ!」


「出血がひどい、なるべく慎重に」







 買い物のため人里に降りていた霊夢は山から立ち上る煙を見つめていた。


 生活の火ではない、人為的に付けられた炎が上がっている。


「なにあれ……」


 煙をバックに空を飛んでくる影が三つ。


 三人の天狗は診療所の前に降り立つと、その中へと入っていった。


「…………。」


 気だるそうに頭をかきながら霊夢も診療所に足を向ける。


 診療所に天魔を担ぎ込んだ彪奈と銀牙は人間の医者の手を借りながら早急に応急手当を施していた。


「悪いなぁ彪奈さん、わしのところじゃこれが限界じゃ。竹林にすごいお医者様がいるそうだし、意識が戻ったらそっちに運ぶのが良いかと思うぞ」


「ありがとう、助かります」


「火の手が上がってるから何かと思えば、天狗で最強のこいつがここまでやられるとはね」


「おそらく不意討ちよ。私たちと同じようにね」


「なんか不穏な台詞しか出てこないわね。何があったの?」


 そこにようやく到着した霊夢が買い物袋を肩から提げたまま現れた。


「いよう博麗の巫女、今日もいい天気だな」


 軽口を叩く銀牙に霊夢はあきれた様子で天魔の横に座る。


「そういうのいいから」


「あ……そ、じゃあ本題。まあ簡単に言えば謀反だな。誰かが裏で手を引いてこいつと忍天狗にけしかけたってとこだ」


「ふーん、それにしちゃあんた達二人はあんまり怪我してないのね」


「そりゃあれだ、俺は電撃で痺れさせてたからな。同胞は殺せない」


「私は銀牙と一緒にいたから戦闘は彼に任せっきりだったし」


「ん……んん……いたた」


 三人が話していると、目を覚ました天魔が目を擦りながら上体を起こす。


「だめよじっとしてなきゃ。傷口開いちゃうよ?」


「気にするな。かすり傷だ」


「かすり傷で死にかけてるのはどこの誰だっけ?」


「…………すまない」


「寝てなさいって、ここは安全だから。博麗の巫女もいるし」


「ちょっと、内輪揉めの仲裁なんてお断りだからね。こういうのに頭を突っ込んで良い事になった試しがない。労力を無駄にするだけよ」


「三人とも聞いてくれ。私のところには謀反を起こした天狗の代表格がいた」


「誰だよそりゃ。俺がぶん殴ってやる」


「五月雨快刀、お前が椛の下につけた若造だ」


 その瞬間、銀牙と彪奈が固まる。


「まずい……椛のやつ、快刀を探しに出掛けたきり戻ってねぇ!」


「私が探しに行くわ」


「いや、彪奈は治療のためにも残ってくれ。足の速い俺が行く」


 それだけ言うと銀牙はあわてて飛び出して行った。


(無事でいて……椛……)


 彪奈は両手を握りしめて天魔の治療に戻る。


 その頃椛は魔法の森をひとしきり探し終えて妖怪の山へと戻ろうとしていた。


 入れ違いになって無駄足を踏んだとため息をついていたが、微かな気配に耳がピクッと反応する。


「……誰?」


 また快刀かと思ったがどうやら違う。


 意識を向けるとはっきりとした悪意を感じ取れる。


 林道を歩いてこちらに向かってきたのは霊莉だった。


 籠手を付け、指をパキパキと鳴らしながら椛の前に立つ。


「貴女でしたか、驚かさないで下さいよ。今は相手してる暇は……」


 呆れる椛だったが霊莉の口元がグニャリと歪むのを見逃さなかった。


 黒いもやに覆われた籠手の一撃をギリギリで回避して背中の剣に手をかける。


「な、どういうつもりですか!」


 問いかけに返事はなく、ケタケタと普通とは明らかに違った笑い声で拳を振りかざす。


「やるしかないっ!」


 説得を諦めて拳を受け流しながら背中の剣を引き抜く椛。


 だがその剣を振ることなく距離を取った。


「今のは!」


『まずいぞ。お前もわかったかと思うがあの拳は危険だ』


 拳がかすった一瞬、椛は嫌な感触を感じ取って離れたのだ。


 そしてそれは椛の中に住まう虎鉄も同じだった。


 霊莉の拳は重く、その上かすっただけでも妖力をごっそりと持っていかれている。


 何度も受けてしまうと動く事すら困難になる。


『もはや手心を加える必要はない。ためらうな、我を抜け!』


「…………。」


 珍しく虎鉄が自分から使う事を提案したが椛は躊躇した。


『先日の事か』


「霊莉さんは元とはいえ博麗の巫女。また斬れないかもしれない」


『心配するな、今のあれは斬れる。手加減などしようものならお前が殺されるぞ!』


「くっ……」


 そうしてためらっている間にも霊莉の攻撃は止まらない。


 拳を刀身で受け止め、よけれる攻撃は全て回避する。


 それでも霊莉の猛攻は止まらず、椛は攻撃に転じる事すら出来ない。


 さらに攻撃がかすめる度に力がガクッと抜ける。


『早く抜け! 死にたいのか!』


「くっ、あああああ!」


 剣を投げ捨て、椛は霊莉の攻撃に合わせて手をかざす。


 光が収束して形成された剣が拳を防ぎ、逆に吹き飛ばした。


「来い、奉神剣虎鉄!」


 引き抜かれた剣は金属の鈍い輝きを放つ。


「やってやる……やってやる!」


 だがそこに空から誰かが降ってきた。


 舞い上がる土煙に思わず顔を覆った椛だったが、煙が晴れた後現れた人物に少し動揺する。


「あ……貴女は……」


 そこには黒いロングコートを羽織った巫女が日本刀を抜いて立っていた。


「霊稀さん!」


 編笠をくいっと直すと、霊稀は刀を構えて霊莉を見据える。


「失せろ。お前が使っているその身体は博麗の物だ」


「ククク……巫女がもう一人。誰かと思えばあの時の雑魚ではないか」


「何?」


「妖怪化の呪いはどうやら完全に定着したようだな」


「貴様!」


 霊稀の眉間にぐっとシワが寄った。


 自分を妖怪に変えた人物が今、姿を変えて目の前にいる。


 それだけで霊稀を怒らせるには十分だった。


 一気に間を詰めて刀を振り下ろす。


「ケケケケ、単純だねぇ」


 見切っていた霊莉のカウンター気味な左アッパーが霊稀の腹を捉えた。


「終わりだ。お前の力も……ん?」


 困惑する霊莉が殴っていたのはロングコートだけ。


 本物の霊稀は当たる寸前にかわしてかがみ込み、刀を既に振り抜いていた。


「チッ……」


 舌打ちと共に刀を収めて飛び退く霊稀。


 状況が理解出来ていない椛の服の襟元をつかむと、煙玉を投げてその場を去った。


「え、ちょっ!」


 いきなり引っ張られた椛は何がなんだかわからず慌てたが霊稀は離さずに霊莉から距離を取る。


「あーあ、残念。ククク……」


 切られたはずの左腕を擦りながら遠ざかる霊稀と椛を見つめる霊莉。


 残された霊稀のロングコートを黒い炎で焼いた霊莉はそのまま魔法の森へと帰っていった。







「ここまで来れば安全か」


 人里に着いた霊稀はぽかんとした表情の椛をおろすと地面に座り込んだ。


 ため息と共に霊稀の額をだらだらと汗が垂れていく。


「いきなりどうしたんですか? なんかよくわからなかったんですけど」


「あいつ……切った感触がなかった」


「え?」


「確かに間合いに入り込んで左腕を切り落としたはずだったんだ。でもな」


 そう言って霊稀は刀を抜いて椛に見せた。


 愛用の陰陽刀八式ではないが、一部分だけ刃がボロボロに欠けた刀を椛はまじまじと見つめる。


「この様だよ。あれは並大抵の攻撃じゃ傷一つ付けられそうにない。霊莉さんが溜めに溜めた自分や他人の黒い部分で覆われていて真っ向からの勝負じゃ歯が立たない」


 ボロボロの剣を仕舞って立ち上がる霊稀。


 だがその途中でバランスを崩して倒れそうになった。


「ちょっと! 大丈夫ですか!」


『その娘の能力のせいだな』


「はい?」


『霊力を干渉させる程度の能力。つまり干渉させた結果逆に強い妖力を浴びせられ続けたのだろう』


「い、今すぐ医者に!」


「あら? 誰かと思えば白狼天狗……と、珍しい組み合わせね」


 たまたまそこに霊夢が通りかかる。


 天魔の容態が安定したので出てきたところだ。


「ちょうど良かった、運ぶの手伝ってよ博麗の巫女」


「は? 何で?」


「いやあの……なんでって……」


「私は忙しいの。悪いけど付き合ってられないわ」


「あ……」


 霊夢の引き留めに失敗した椛は諦めて霊稀を担ぐと足を引きずりながら診療所を目指す。


 その後ろ姿を見送りながら霊夢は神社を目指して歩き始めた。


 霊稀は目立った傷もなかったので一眠りすれば回復するだろう。


「天狗の謀叛……こっちにまでとばっちりが来なければいいけど」


 問題はそこだ。


 既に被害者らしき人物が二人里に運び込まれている上に天魔は天狗の長である。


 天魔を助けたとあってはここも攻撃の対象になりかねないのが現状だ。


「しばらくは注意して見てないと……あれも暇してるかな」


 ふと脳裏に魔理沙の顔が浮かぶ。


 呼ばなくても来そうなものだが読んでおけば人員不足に悩まされる事はなさそうだ。


「あ……」


「っ!……」


 噂をしていたわけではないが霊夢の目の前に魔理沙が現れた。


 泣き腫らした目元からはまだ涙が覗いている。


 あわてて目を擦る魔理沙。


 霊夢は腕組みしてため息をつくと魔理沙の手を引いて人里を出た。


 訳がわからないまま引きずられるように歩く魔理沙は人里の出口でピタッと足を止めると霊夢の手を振り払う。


「…………。」


「黙ってても何もわからないんだけど」


「…………。」


「あんたがそこまで泣く所なんて初めて見たよ。どうしたの?」


「…………。」


 魔理沙の表情を覗き込む霊夢。


 魔理沙からほんのりただよう焼香の匂いで察してはいたがそれでも何があったのか聞かずにはいられなかった。


 肝心の魔理沙は黙ったまま箒を握りしめている。


(身内か……想魔が店にいなかったのもそのせいね)


「霊夢……」


 到底普段の魔理沙からは連想出来ないような化細い声。


 それでも唇を噛み締めながら言葉を紡ぐ。


「何も……何も言わずに付いてきてくれるか」


「しょうがないわね」







 日中だと言うのに霧の立ち込める湖のほとり。


 魔理沙は霊夢から距離を取るとくるりと向き直った。


 察した霊夢も御幣を取り出して構える。


 いつもの事だ。


 だが今日は少し違った。


 魔理沙は箒と帽子を投げ捨てると肩から提げたかばんも放り投げる。


「どうするつもりなの?」


 かばんの中には八卦炉も入っているようだった。


 それを投げ捨てた今魔理沙に武器はない。


 だが魔理沙からは異様な気配が漂っている。


「魔理沙?」


 返事はない。


 代わりに魔理沙の周囲を七色の魔力が取り囲んでいく。


「これは……まさか!」


 いつもなら魔理沙が動くまで何もしない霊夢だが今回ばかりは先に動いた。


 しかし魔力のベールに阻まれて魔理沙に手が届かない。


「それだけはだめよ魔理沙! それだけは!」


 普段の魔理沙からは考えられないほど溢れ出る魔力。


 その中から『魔法使い』としてではなく『魔女』としての力の一端を感じ取った霊夢は魔理沙に向かって手を伸ばす。


「魔理沙……魔理沙!」


 ようやく魔理沙に手が届いたが、魔理沙はその手を払いのけて逆に霊夢の首を掴んだ。


「うぐっ……!」


 霊夢を持ち上げながら両手に力をギリギリと加えていく魔理沙。


 足が少し浮いている霊夢は離れられない。


「ぐが……がっ……!」


 意を決して魔理沙の腹に力一杯ドロップキックを浴びせる。


 弾かれた二人は転がりながらも起き上がり、魔理沙はお腹をさすりながら、霊夢は締め上げられた影響で咳き込みながらお互いを見据えた。


「殺す気か……バカ……」


「…………。」


「あんたの自暴自棄には付き合ってられないのよ!」


 次は魔理沙が先に動く。


 人の形に切り取られた紙が服の袖から大量に現れ、服に覆い被さる事で魔理沙の姿を変えていった。


 その半分が霊夢に向けられ、飛ばされた紙人形が霊夢を襲う。


「この!」


 御幣だけでは防ぎきれない紙人形は霊夢の服や肌を切り付けていく。


 やがて完成した魔理沙の新しい服は黒いローブのような形になった。


「…………。」


 黙って右手を振り上げる魔理沙。


 紙人形の数は更に増して周囲を取り囲み、その切っ先が全て霊夢に向けられた。


「冗談でしょ?」


 振り下ろされる右腕。


 スペルカードの発動は間に合わない。


「くっ……」


 御幣を構えて防御体勢。


「そんなんじゃダメさ、アタイに任せな!」


 霊夢に命中する瞬間、蒼い影が霊夢を包囲網から救いだした。


「あんたは……」


「弱きを助け、強きをくじく。最強の矛をも殴り飛ばす最強の盾であれってね。アタイ、参上!」


 霊夢を助け出した蒼い影、チルノはレミリアから返してもらったカリバーンを地面に突き立てて魔理沙に向き合う。


「なんで氷精がここに……」


「博麗の巫女でも手こずるかと思ってね。ここいらはアタイのテリトリーだしもめ事は勘弁願いたいのよ。それに、援軍も連れてきたから」


「援軍?」


 後ろを振り向く霊夢。


 そこにはたまたまそこにいたからと引っ張って連れて来られた鈴仙と美鈴の姿があった。


「あまり巻き込んで欲しくないんだけど……また師匠に怒られるし」


「たまには良いじゃないですか。あ! 私切り込み役良いですか?」


 タンタンとステップを踏んでいた美鈴がフッと消え、伸ばした足が魔理沙に振り下ろされる。


「ああもうバカバカ!」


 美鈴が勝手に突っ込んだのに怒りながらも美鈴に当たらない絶妙なタイミングでハンドガンやアサルトライフルを撃ち込んでいく。


 魔理沙は銃弾を全弾回避し、美鈴の蹴りだけは紙人形で受け流していく。


「うーむ、適当に連れてきたのになかなかの連携……さて、アタイも行きますかぁ!」


 カリバーンを引き抜くチルノ。


 霊夢も御幣を握り直してチルノの隣に立った。


「で? 勝算はあるの?」


「残念ながらアタイは両手で収まる程度までしか数を数えられなくてね」


「…………。」


「なんだよ、さすがに勝てない喧嘩は買わないからな! アタイ達があの魔女モドキ引き付けるから巫女がなんとかしてくれ」


「まあそうなるわよね、良いから行きなさい。とにかく準備するから私に魔理沙を近付けさせないで」


「了解!」


 チルノの背中から氷の翼が現れる。


 霊夢はそれを見届けると袖口のポケットから一枚の札を取り出した。


「使わなくて良いなら使いたくないところだけど」


 札には霊夢の字ではなく誰か他の人の字で文字が書かれている。


「やるしかないか……氷精に任せるのは癪だけどここは仕方ない。頼んだわよ」


 変わり果てた魔理沙を見つめる霊夢の視線はどこか憂いを帯びていた。

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