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episode:22『異端者』

SIDE:ナハト


「では行きます」


 次の日の朝、キャッツテールの前でそれぞれが戦いの準備をしていた。


「本当にいいのですか。メイド長まで動かしてしまって」


「いいの! そんなことよりちゃんとみんなを送り届けるのよ」


「すみませんロッテさん。またお世話になってしまって」


「いいのよアヤ。今回は私達も被害者だからね」


 まだ眠そうなロッテは眠気眼を擦りながらビルに向かうメンバーを見送りに出てくる。


「昨日あんなことがあった後だけどいけそう?」


 準備しながら彪奈が銀牙に駆け寄った。


 銀牙はというと普段通り振る舞ってはいるが、やはり昨日の出来事が尾を引いているのか、しきりにキャッツテールの方を気にしている。


「銀牙?」


「うえぁぁあ……あ?」


「大丈夫?」


「ああ。大丈夫だが」


「あまり無理しないでね? もし何かあったらすぐに言って」


「あ、ああ」


 どこか上の空な銀牙。


 その様子は他のメンバーも薄々気付いていた。


「椛、もしかして……」


「しぃー! 椛、文、黙ってればいいの」


 文の言葉を遮るはたて。


 そして準備を整えた一行は一路ビルへと向かった。


 道中も安全とはいかず、暴徒に襲われないよう固まって移動する。


 エカチェリーナ、ナハトを先頭に椛、彪奈が続き、空から文、はたて、綾音、銀牙が警戒する。


「無事帰れると良いね」


 隣を歩く彪奈が急に椛に話しかけた。


 そっと頷く椛。


 だがそれと同時に二人の耳が接近してくる何かを探知していた。


敵襲(コンタクト)!」


 ナハトとエカチェリーナがさっと椛と彪奈の直衛に入り、空では天狗の四人が背中合わせに全方位を警戒する。


 敵の姿はあっという間に視認出来る距離に入ってきた。


 黒い全体的に刺々しい人型の影。


「まずいパワードスーツだ!」


 猛スピードで突っ込んでくるパワードスーツは空を飛ぶ天狗達を見るや否や両手に持ったライフルを連射してくる。


「こっちだ! 降りてこい!」


 エカチェリーナが口で閃光弾のピンを抜きながら天狗に指示を出した。


 閃光弾が炸裂してパワードスーツのパイロットから視界を奪うと、その隙に全員が建物の陰になる路地に入る。


「チッ、こんなところで止まれないってのに!」


 エカチェリーナは急いで銃の状態を確認していく。


「この路地を抜けてみんなは先に行け! 私があいつを止める」


「無茶だ、死ぬ気か!」


「はっ、死神が私を心配するとはね。まあまだ死ぬ気はないよ。ビルで落ち合おう」


 食い下がるナハトにそれだけ言い残してエカチェリーナはライフルを両手に持って路地から出ていった。


 パワードスーツの前に躍り出てライフルを1マガジン分撃ち尽くす。


 その間に他のメンバーが逃げているのを確認した。


「よし、ちゃんと逃げたな」


 弾切れのライフルを片方投げ捨ててもう片方を素早くリロード。


 もちろんパワードスーツにダメージは通っていない様子。


「硬い……」


 撃ち返してくる弾を遮蔽物をうまく使いながら掻い潜り、隙があればライフルとハンドガンを抜いて撃つ。


(ダメか、ライフル程度ではパワードスーツの装甲を抜けない)


 背中には対装甲車用に背負ってきたレーザーショットガンがある。


 四発で銃身が使い物にならなくなるがそれだけでも十分必殺の一撃だ


 だが敵はエカチェリーナの全力ダッシュに比べたらはるかに早いため、ついには背後をしっかりと取られる。


「ああ、くそっ!」


 その時、どこかから撃ち込まれたハープーンがパワードスーツのバックパックの空力ウイングを貫通し、エカチェリーナに攻撃する寸前で引き上げた。


「てめえの相手は俺だ悪趣味なパクり野郎!」


 違法な空賊のパワードスーツを捕らえ、拘留するためのハープーンライフルのウインチが唸りをあげる。


 深緑のパワードスーツ、遼の機体が到着した。


「お前! もう傷はいいのか!」


「もちろんだ。そっちのナハトとか言うクソったれと同じく頑丈にできてんだよ!」


 右手でハープーンライフルのウインチを引き上げながら、左手に握られた大口径のマシンガンがほぼゼロ距離で撃ち込まれていく。


「案の定硬ぇ。おいメイド、下がってお姫様の護衛に戻れ!」


「お姫様? ってまさか」


「お前らの主だ! ちっくしょう、こっちはなけなしの全方位バリアユニットを置いてきたからかなりきついんだ。さっさと行って無事を確認してこい!」


 暴れたせいでハープーンが外れ、パワードスーツは今度は遼を狙った。


「行け、行けってば!」


「く……わかった。だがせめてこいつを持っときな!」


 そう言うとエカチェリーナは背中のショットガンを抜いて遼に向かって投げる。


 投げられたショットガンは回転しながら敵のパワードスーツをかいくぐり、遼の元へと届けられた。


 遼はそれを受けとるとすぐに腰のリアアーマーに担架して振り返る。


 そこには既にエカチェリーナの姿はなかった。


「さてと、お前がこんな所にいる理由を聞いておきたいが、まあ答えてくれないのがオチだよな。なにせ俺が殺したんだし」


 遼はハープーンライフルを捨ててふくらはぎのアーマーからナイフを取り出す。


「俺が憎いなら俺を殺してみろ亡霊! あの時のように俺がお前を殺してやろう」








SIDE:レミリア・スカーレット


「ここが最後だ。準備はいい?」


 幻想郷の住人達の回収をしていたチルノとレミリアはついに最後の場所の探索に乗り出す。


「チルノ、この場所も私に関係ある場所だ」


 たどり着いてすぐにレミリアは拳を握りしめて怒りの表情を浮かべた。


 ここは薄暗い牢獄の中。


 今回は探し回る必要もなく、一人目は目の前に築かれた死体の山の上でそれはケタケタと笑っている。


「お前は……誰だ!」


「嫌だなぁお姉様、フランだよ?」


 フランだと名乗るそれは真っ黒に染まった翼を翻してレミリアと同じように本来の姿へと戻った。


 少し大人びた雰囲気になったフランはレーヴァテインを呼び出して地面に突き立てる。


「うるさい! 妹の声でしゃべるな!」


 フランに向かって飛び込むレミリア。


 フランはレミリアを避けるそぶりもせず、右手をレミリアに向けて開いて閉じた。


「っ!」


 フランの能力が発動してレミリアの身体が一瞬で吹き飛ぶ。


 飛び散った血は辺り一面を赤く染め上げ、跳ねた血は茫然とするチルノと恍惚の表情を浮かべるフランにかかった。


 フランはその血を舐めあげると、またケタケタと笑う。


「バカなお姉様。突っ込んできて自滅なんてなっさけなーい!」


「そうね、情けない妹だわ」


 フランの背後で飛び散ったレミリアの血が身体を形成し、振りだされたグングニルの切っ先はフランの首をきれいにはねた。


「そうか、レミリアの能力!」


「運命は変えさせてもらったわ。これで能力は封じた!」


「能力がなくったって……フフフフ……アハハハハ!」


 転がっていったフランの頭が不気味に笑うとその頭は血の固まりとなって消え、フランの身体に吸収される。


「楽しいよ。お姉様?」


 レミリアはグングニルを、フランは四人に分身してそれぞれレーヴァテインを構えてにらみ合った。


 すみの方から見ていたチルノは動けないレミリアからのアイコンタクトを受けてその場から離れる。


 ここで助けなければならない人物はもう一人いるからだ。


 長く続く牢獄の廊下を全速力で飛び回るチルノ。


 探し回る中、牢獄の部屋に鎖で縛られている一人の少女の姿が目についた。


 もちろんチルノもよく知る人物だ。


「確か紅魔館にいた人間……あたいが凍傷治した子ね」


 牢屋の鉄格子をカリバーンで切り裂いたチルノは閉じ込められていた少女、日足穂乃香を拘束から解放した。


 身体には外傷はなく、ただ眠っているだけのようだ。


 それを確認して安堵したチルノはレミリアとフランの戦いに目をやる。


 吸血鬼である二人の戦いはすさまじく、四肢が血飛沫と共に飛び散り、その度に切り飛ばされた部分が生成されていく。


 そんな中、ふと顔を上げたチルノは牢屋を模した空間に似つかわしくない物を見つけた。


「箱?」


 穂乃香が捕らえられていた牢屋のすみに無造作に置かれた綺麗な装飾が施されている箱。


 チルノはそっとその箱を振ってみる。


 カタカタ音はしないが、中に何か入ってそうだ。


 おそるおそるふたを開けて中を見ると、箱のギミックが作動してオルゴールが鳴り出した。


「うわわ!」


 ゆっくりと流れ出したメロディーは牢獄の中を静かに流れ、それは戦いの最中にいるレミリアとフランの耳にも届く。


「これは……」


 急に聞こえてきたオルゴールに思わず足を止める二人。


 レミリアは音に耳をすませ、フランは耳をふさいだ。


「あああああ!」


「フラン?」


 分身が消え、ついには苦しみだしたフランにレミリアは駆け寄る。


「フラン、フラン!」


「来な……いで……うああああ!」


 一瞬、正気に戻ったようにも思えたが、次の瞬間にはレミリアをレーヴァテインで追い払った。


 だがその剣筋はただただ振り回しているだけであり、レミリアはそれを回避してレーヴァテインを弾き飛ばす。


 ガキィンという鈍い音と共にレーヴァテインは回転しながら地面に突き刺さり、これ以上フランが暴れないようにレミリアはフランに馬乗りになった。


「こんなはずじゃなかった……全部、全部お前が悪いんだぁ!」


 フランのパンチをレミリアは軽く手で受け止める。


 その時、何かがレミリアの頭をよぎった。


『愚かな人間どもめ。守りをより一層強固にするのだ!』


 まだ幼いフランの手をつないだ二人の父親は家臣に向かって号令を出す。


 フランは空いた手でチルノの見つけたオルゴールをしっかりと抱えてじっと父親を見ていた。


 だがそこにレミリアの姿はない。


「あ……」


 全てを思い出したレミリアは愕然とした。


 あの時、レミリアはフランを一人残して図書館にいたのだ。


 父親は何かを察したのかフランを隠し部屋に押し込んで扉を閉じた。


 母親はグングニルを父親に渡して自身も短剣を抜く。


 次の瞬間。


 フランは何事かと隠し部屋の扉を少し開けて外の様子を見てしまった。


 バラバラに切り裂かれた二人と飛び散る血。


 咲夜の時間停止能力だ。


「フランの心を壊したのは……私……? 私がフランの元にいてあげれれば………」


 そこではっと気づく。


 今回の異変でも、レミリアはフランを残して一人で出て行ってばかりだった。


 それも全て引っくるめて今回の騒動に発展したのだろう。


 これまでの鬱憤を晴らすかのように何人かの幻想郷の住人の心を壊してしまった。


「私の……せい……」


 フランからふらふらと離れるレミリア。


 その隙にフランはレーヴァテインを取り、レミリアに飛び掛かる。


「レミリア!」


 穂乃香を担いでいたチルノがレミリアの名前を叫ぶ。


 穂乃香もチルノの声で目を覚まして……


ドスッ


 何か肉のようなものを貫く鈍い音。


 とっさの事で誰も動けなかった。


 チルノを押し退けた穂乃香がレミリアとフランの間に割って入ったのだ。


「あ……ああ……なんで!」


 急いで穂乃香からレーヴァテインを抜こうとするフラン。


 しかし穂乃香はレーヴァテインをさらに自分に深く突き立て、そのまま両手をフランに伸ばした。


「ダメ……だよ……姉妹なんだからゴホッ、仲良くしないと……」


「ああ……」


 困惑するフランをぎゅっと抱き締め、穂乃香はその背中をさする。


「私、ね……お嬢様と妹様が羨ましかった……。私のね……二人のお姉ちゃんはどっ、どっちも私とは仲良くしてくれなかった……」


 さらに強くフランを抱き締める穂乃香。


「私はね、自分にやさしくしてくれ……げほっ……なかったお姉ちゃんに怒って怪我をさせたことがあるの……その時の怪我はたいしたことはなかったけど、今もお姉ちゃんの右腕に傷が残ってるの」


「もうしゃべっちゃダメだよ! 傷が塞がらない!」


 チルノはフランを引き剥がしてレーヴァテインを抜き、治療を試みる。


 しかしレーヴァテインで焼かれた傷口は処置できず、血の流出が止まらない。


 このままでは確実に死ぬ。


「私、ね……今も後悔してる。お姉ちゃんの傷を見るたびに……なんであんなことしちゃったんだろうって……」


 茫然と立ち尽くすフラン。


「たった一人の……家族でしょう? 大切にしないと……妹様は……ううん、フランちゃんは本当は優しい子だから……この世界でフランちゃんの心に触れて……わかったの……」


 穂乃香は弱々しくフランを手招きする。


 そばに来たフランの頭をそっと抱き抱え、自分の首筋に持っていった。


「私はもう……ダメだけど……出来ることならずっと一緒にいたかった。ずっと……だから私の血を一滴残らず吸い取って……」


「っ!」


「大好きな人の糧になれるなら……本望……だか……ら……」


 だんだんと穂乃香の手から力が抜けていく。


 フランは泣き腫らしてぐちゃぐちゃの顔で穂乃香を見る。


 穂乃香はずっと笑っているがもう限界だ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」


 牙を剥き、穂乃香の首筋に噛みつくフラン。


 穂乃香の肌から血の気が引いていく。


 その間、フランはずっと泣き続ける。


「あり……がと……」


 最期の言葉。


 その様子を見てレミリアは後悔していた。


 穂乃香の事をフランは心の底から気に入っていたからだ。


 フランを追いかけて凍傷になって動けなくなったあの時だってそうだった。


 フランは穂乃香を吸血鬼にしてまでも助けようとしたのだ。


「フラン……」


 そして全ての血が吸いとられた時、フランの翼は元の輝きを取り戻して煌めいた。


「グスッ……エグッ……ホノカ……ありがとう……」


 フランの涙が一滴、また一滴とレーヴァテインに落ちていく。


 その涙がかすかに残った穂乃香の血と混ざりあった時、急に強い光を放ち始めた。


 その光は穂乃香の亡骸と合わさって人の形へと変わっていき、急速に肉体を作り出す。


「これは……奇跡が起きたの……?」


 チルノとレミリアが驚く中、光から産まれた身体はゆっくりと起き上がってフランに手を差しのべた。


「ふふふ、妹様があんまりにも泣くから、思わず帰ってきちゃいました」


 屈託のない笑みを浮かべた穂乃香がそこに立っている。


 フランはその胸に飛び込んで穂乃香を強く抱き締めた。


 それとほぼ同時に世界の崩壊が始まる。


「帰りましょう、妹様。みんな待ってます」


 穂乃香の姿がレーヴァテインへと変わり、フランはそれを掴むとレミリアの手をしっかりと握った。


「さあ、帰るよ!」


 チルノのカリバーンが空中に魔方陣を描いてゲートを作り出す。


 三人はその中に入り、崩壊していく世界を外側から眺める。


「私、やっぱり許せそうにない」


 フランがポツリと漏らす。


「あの日お姉様が私を置いてどこかに行かなければこんなことにはならなかった」


「ごめんなさいフラン。私はそれをわかってやれなかった」


「私はお姉様を殺したい。でもね、それと同じくらい大好きなの。だからね」


 崩壊した世界の破片からオルゴールの音色が聞こえる。


 フランはそれを拾い上げるとレミリアに向き直って差し出した。


「今度こそきちんと償ってよね? じゃないとまた何かしちゃうかも」


『そうはさせませんよ妹様。その時は私が止めますから』


 レーヴァテインから聞こえる穂乃香の声。


 笑いあう四人。


 こうしてレミリアとチルノの散らばった幻想郷の仲間達を助け出す旅は終わったのだ。







SIDE:犬走椛


 エカチェリーナに逃がされて走る一行。


 その後ろで大きな爆発音が鳴った。


「何だ?」


 飛びながら振り返る銀牙。


 ナハトは軽く舌打ちして目を伏せた。


「あいつは大丈夫だ。そう簡単に死にはしない」


 自分に言い聞かせるように呟くナハトに思わず周りは静かになる。


 やがて路地を抜けて大通りに出ると、そこで思わぬ人物に出くわした。


「なんであなたがここに? ケイさん」


 大通りの真ん中で立っていたのは桔梗だった。


 桔梗は険しい表情で背中の虎鉄を抜くと、足元に突き立てて仁王立ちになる。


「俺がここにいる意味。椛、お前ならわかるな?」


「足止めのつもりか」


 ナハトも刀に手を添えて構えを取る。


「違う。この世界から出たいなら好きにすれば良い。俺は真実を伝えに来た」


 桔梗の言葉に思わず椛はハッとした。


 なぜ今まで気が付かなかったのか。


「この世界は本当の外の世界じゃない。虎鉄が私たちに見せた幻、ミオリさんやフェイスさんはいないんじゃなくて存在自体していない。ですね?」


「そうだ、あの世界を俺が改変して使い回している。いい世界だろう? お前達を縛り付けておくには十分だ」


「縛り付ける? なんで……」


「そうしないとお前達が危なかったからだ」


 桔梗が手を宙にかざすと、幻想郷の地図がパッと浮かび上がった。


「博麗神社は幻想郷の言わばへそにあたる部分だ。そんな所にいて幻想郷の崩壊に巻き込まれたらどうなるか、だいたい予想出来るよな? お前達は一度死んでいる」


 桔梗から語られる衝撃の真実にただ突っ立ってるだけしかできない一行。


 その様子を見て地図を消すと、桔梗はその手を横に広げる。


 すると桔梗の隣にさっきのパワードスーツや琴乃波楠葉が出現した。


「楠葉……ってことは犯人はお前か!」


「そうだ飛風銀牙。忍天狗のリーダーであるお前を戦意喪失させれば外に出たいなんて言い出す事もなくなるかと思ってな。お前の記憶を見せてもらった」


「ふざけんじゃねぇ! 見たくもない人の記憶勝手に掘り出しやがって!」


 顔を赤くして怒る銀牙。


 だが桔梗は気にすることなく話を続ける。


「この世界から出たいなら出れば良い。俺は止めはしない。だがな」


 パワードスーツと楠葉は戦闘体勢を取って一行を睨み付けた。


「俺に証明して見せろ。この世界の外でも生きられるとな」


「来る……!」


 襲いかかるパワードスーツと楠葉。


 その時、空からビームの閃光が地面に突き刺さり爆風を上げた。


「なんだ?」


「銀牙、上よ!」


 彪奈が指差す先には濃緑のパワードスーツが大型のライフルを構えて滞空している。


「間に合ったな。パワードスーツは俺に任せろ」


 一体目のパワードスーツを破壊した遼がようやく合流してきた。


「遼! メイド長はどうした!」


「あいつなら帰した。お前のとこのお嬢様の護衛にな」


 遼は地面に降り立ってナハトの隣に立つ。


 遼の仕草から全てを察したナハトは刀とナイフを抜いて構える。


「ここは俺と死神で請け負う。お前達は早く元の場所へ戻るんだ」


「でも遼さん……パワードスーツは既にボロボロじゃないですか!」


「なんだ心配してくれるのか椛? だがその心配は不要だ。俺とここにいる死神は何があっても死ぬことはない。俺達は特別でね」


「フッ、支援出来るのはどうやらここまでのようです。皆さんは早くあのビルへ!」


「わかった。お前達、この場は二人に任せて行くぞ!」


 一行は敵二人と桔梗の横を通り抜けてビルへと走る。


 通り過ぎる一瞬、桔梗は椛に向けて小さな声で伝言を言い残して消えた。


(ケイさん……)

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