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episode18『集いし力』

どこで間違えた?


解析の結果は何も問題はなかったはずなのに


馬鹿な……


警察はまだ気付いてない


今のうちに証拠を隠滅しておけ


問題ない、やつらは無能だからここにはたどり着かない




SIDE ???


『椛、起きろ! 椛!』


 私はふと、身体を起こして周りを見る。


 今、誰かに名前を呼ばれた気がした。


「やっと目を覚ましたか」


 眠気眼でよく見えないが、近くで男が火を起こして焚き火をしている。


「あなたは……」


 と、聞きかけたところで思い出した。


 確かケイさんと一緒にいた男だ。


「鷲宮遼、つってもまあ覚えてなくて当然かもな」


「なんであなたが? それにここは……」


「まあそう慌てなさんな、俺にもあまりわかりゃしないんだから」


 そう言って遼さんはこれまでの経緯を話し始めた。


 ちょうど私たちが幻想郷に帰って3カ月後、各フローター間を繋いでいた空飛ぶ鉄道、エアロライナーが突然停止。


 空を今まで観測したことのない乱気流が覆い、フローター間の連絡が途絶した。


 遼さんは私達の暴れた後の後始末をしていた中それに巻き込まれ、立ち往生。


 そんなときに倒れている私を見つけたとのことだ。


「おかげで復興作業は遅れるわ治安がまともに保てなくなってるわで大騒ぎだ。ところでお前はもう別の世界に帰ったんじゃなかったのか?」


「私もついさっきまで幻想郷にいたはずなんですが」


「そうか。まったく、どうなってやがるんだよ……」


 遼さんはソファに転がって眠ってしまった。


 今のうちに周囲を確認しておこう。


 ここは多分遼さんの拠点の廃墟だ。


 あれ……剣がない。


 あの時、本能のままに自分の妖力を全部込めて放った一撃で砕けたのかな。


 とにかく今は夜だし、今日は寝るべきか。


 明日聞いてみよう。


『その必要はない。我は常にお前の中だ』


 その声は神剣!


『我の本体はまだ生きている。すなわち、お前もまだ生きられる』


 そうだった……私は神剣の力で蘇生されて生きてるんだった


『だが厄介なことになった。解決するためにもお前には継続して力を貸そう』


 厄介なこと?


『今は休め。この先は戦いがお前を待っているだろう』







SIDE:白木京平


「さて、君たちには色々聞かなければならないことがある」


 まずい……


 今俺は学校の保健室で警察官達に睨まれてる。


 こういう状態になった原因は隣でカメラを返せと暴れてる文名にあるのだが。


「白木京平、烏丸文名、赤葉ましろ……ふむ」


 警察官達の上司だろうか。


 俺達と大差ない年齢に見える婦警が端末を操作して俺達の情報に目を通していく。


 そもそもなぜ捕まったのか。


 理由は文名にあった。


「学校、行きましょう!」


 この一言である。


「何言ってるの文名ちゃん、学校は事件の真相がわかるまで閉鎖だって!」


「チッチッチッ、甘いよそれじゃ。甘あまよ」


 そう言って文名が取り出したのは学校の見取り図だ。


「新聞記者たるもの、スクープあらば即参上! なのよ」


「俺達は新聞記者じゃねぇっつーの。というかどうやって入るつもりだよ。主な出入口はどうせ警察が張ってるぞ」


「ふっふーん。実は抜け道があるのです」


 得意気に指差してるのは山側の壁、ちょうど陸上部の倉庫の裏だ。


「ここは壁際の斜面の一部が張り出してて通り抜け出来るの」


「で? 入ってどうする。中も警察官だらけだろ」


「気になりませんか? あの学校の異常な電力消費量」


「気にならないけど……」


「ま、し、ろ、ちゃーん?」


「ひぅ! ごめんなさい、気になります! すごく気になります!」


「気になるんだったら一人で行けよ。その方が警察官に見つかることもないだろ?」


 で、結局今に至る。


 侵入には成功したが、途中で見つかった。


「あなた達も事件のことを調べてるみたいね。どこまで情報を掴んでいるのかしら」


「くっ、殺せ……」


 いや、文名の言ってる意味がわからない。


 とにかく俺が文名の代わりに事情を全部説明した。


 学校のシステムにハッキングしたことには触れずに。


「そう……」


 婦警はどこか腑に落ちない様子。


 あれ?


 もしかしてヤバイこと話したか俺?


「んー」


 なんか俺をじっと見てる……。


「白木京平……白、木京、平……ききょう……桔梗?」


 わけがわからん。


「おーい! あれ持ってきて!」


 婦警が合図すると数人の警官がなにやら機械を持ってきて用意を始める。


「な、なんですか! 洗脳装置の類いですか! 薄い本展開ですか!」


「はいはい、ちゃっちゃと準備する!」


 俺達は警官達にされるがままに機械に繋がれて椅子に座らされた。


「準備完了しました」


「始めなさい」


 その瞬間に俺達の意識が飛んだ。


 でもこの感覚、知ってる。


 これは……確か……






SIDE:レミリア


「ここに、誰かが?」


「そのはずなんだけど……」


 チルノとレミリアは人里に似た景色の場所を歩いている。


 辺り一帯は薄暗く、人の気配は一切ない。


「うーん、カリバーンは確かにこの辺りを……あ!」


 チルノは寺子屋を指差す。


 そこには慧音と思われる影が一人で立ちすくんでいる。


「慧音!」


「…………。」


「あれ?」


 聞こえているはずなのだが、慧音は反応しない。


「慧音?」


 チルノは肩を叩いて呼び掛ける。


 が、慧音はその手を弾いてチルノを振り払った。


「違う……そいつは!」


 その瞬間にレミリアはグングニルを呼び出して慧音に向かって突進していた。


「くひひひひ」


 慧音のような影はレミリアを見るなり姿を変えて襲って来る。


 まさに慧音が変身したハクタクの姿だが少し違う。


 狂暴な爪がレミリアに向かって伸びていき、翼をかすめた。


「誰だお前!」


 レミリアもグングニルを振り回して爪をよけると、へたり込むチルノを抱えて距離を取る。


「違うよレミリア」


「何が!」


「あれが本物の慧音先生だよ」


「はあ?」


 思わずレミリアはチルノを凝視した。


 今目の前にいる人物はレミリアには黒い瘴気をまとった狂人にしか見えていない。


「レミリアもあのときあたいが助けなかったらああなってたんだよ?」


「まじか」


「まじ、まじ」


 二人はそれぞれ武器を構えて慧音を睨んだ。


「なるほど、あんたはこんな事をずっとやってたのね」


「ここまで酷いのは初めて見たけど」


 まずチルノが剣を担いで素早く背後に回り込み、そちらに気を取られて背中を見せたところでレミリアが慧音に切り込む。


「もらった!」


 確実に不意を突いた一撃。


 その時だった。


「はあ?」


 レミリアが驚くのも無理はない。


 レミリアのグングニルは背中に突き立てられる寸前にあるはずのない三本目の腕によって阻まれた。


 背中から出たそれは慧音から這い出て来ると、レミリアの前に本来の慧音の姿で立ち塞がる。


 だが明らかに見た目が薄い。


 こちらは実体こそあるものの本体ではないようだ。


「分裂とか聞いてない!」


 あわてて距離を取るレミリア。


 分身体は弾幕で、本体は巨大な爪と頭の角でレミリアとチルノに襲いかかる。



『私は……もう疲れていた』


(やめればいいじゃない)


『でも子供達にそんな姿は見せられない』


(ガキがどうしたっていうの?)


『私が自分で始めた事だ。責任がある』


(そんなこと知ったことじゃない)


『もう、もう疲れた』


(全部やめちゃえ)


『ごめん、妹紅』


(さようなら、せ ん せ い)


 慧音の攻撃は激しく、苦戦を強いられる二人。


 どちらかといえばレミリアもチルノも接近戦を得意とするが、二人の慧音は遠近をうまく使い分けてくるため、厄介なことこの上ない。


「レミリア、ちょっと」


「何?」


「良いことを思い付いた」


「あんたに任せるわ」






SIDE:???


 木漏れ日で目が覚める。


 草の匂い、穏やかに流れる風。


 ここは幻想郷、今日も平和だ。


「あら桔梗こんなところにいたの」


 ふと誰かに話しかけられた。


 巫女服に赤い陣羽織。


「よお霊緋、また異変か?」


 そうだ、俺は……。



 気が付くと俺の意識は元の保健室に戻っていた。


 ようやく思い出した、ずっと見ていたのに忘れてしまった夢の内容。


「天結桔梗……」


「やっぱりか、君があの白虎ね。そっちの二人はどうかしら?」


「思い出しました……」


「ましろ!」


「私も思い出しました」


「文名もか!」


 京平は婦警を不審の眼差しで見る。


「あんた何者だ?」


「私は安谷空。わかりやすく言うと暗夜天と言えばわかるか?」


「暗夜天だと!」


「まあ落ち着け。私は外部から君たちに干渉していた」


 空は静かに状況を説明していく。


「まず君たちの置かれた状況から説明してやろう。君たちの通うここ厳想学園についてだ。既に知っているだろうがここにはいくつも謎がある」


「外部の人間が厳想学園の七不思議について語るなんてね」


 文名は空に食って掛かる。


「いや、そうじゃないさ。そのうちの一つ、ここは学校にしてはあり得ない電力を消費している」


 俺達が発見した通りだ。


 警察も当然であるが感付いていた。


「理由はまだ不明だけどね。それ以外にも、君たちの使う学生証端末に、不審な装置がランダムで組み込まれている」


「不審な装置?」


 ましろがぽかんとした表情で首をかしげる。


「これは君たちにかなり密接に関係する事だから伝えておくけど、一種の催眠装置に近いものだ。君たちを強制的に眠らせて幻想を見せる」


「それが幻想郷?」


「そう、幻想郷は装置によって作られた空想の世界」


「なんでそんな事が? 一体誰が!」


「それを調べるのが警察の仕事……と言いたいがこれは我々の部署が独自に調べていてね」


 空は立ち上がって、保健室の窓から校庭に乗り入れている警察車両を眺めた。


「せっかく幻想郷を知っている子に会えたんだ、ここは一つ取引といかないか?」


「取引ぃ?」


「そんな顔するな文名。で、俺たちに何をしろと?」


「簡単だ、私たちの捜査に協力してほしい」


「その、私たちそこまで専門的な事なんかは……」


「そうだな、ましろの言うとおりだ」


「いやいや簡単だよ。君たちには明日から再開する学校生活内で幻想郷に関係しているであろう生徒を探して欲しい」


 空の頼みは要約すると人探しだ。


 幻想郷に関係する、つまり幻想郷で暮らしていたという記憶のある生徒を探せばいい。


「それぐらいならなんとかなりそうだな。でも肝心の見分け方がわからないが?」


「それなら簡単。名前をよく見るといい」


「名前?」


「君の幻想郷での名前は天結桔梗、現実では白木京平」


「あ!」


 何かに気付いたましろが思わず声をあげる。


「白木京平、名前の中に桔梗が入ってる!」


「ほんとだ……」


 他にも赤葉ましろは赤い葉から紅葉、椛と置き換えられて犬走椛、烏丸文名は烏、丸、 文から射名丸文、安谷空は名字の読み方を変えて暗夜、空を読み替えて天で暗夜天となる。


「幻想郷での名前は現実の名前を少しもじった名前になっているの。じゃあ、お願いするわね」





SIDE:犬走椛


「さて、今日も早めに動くとしよう」


 遼はリュックを担いで壁に立て掛けているパワードスーツのコンソールを叩く。


 するとパワードスーツは大型のドローンを模した形に変形した。


「おおお」


 椛はキラキラした目でパワードスーツを見ている。


「こいつは俺の後を遠くから追尾してくれるんだ。今日は闇市に向かおうと思う」


「闇市ですか……」


 椛は桔梗と共に何回か買い出しに出ているために場所は知っていた。


「そういえばあいつと一緒に買い物に行っていたな。闇市は閉鎖されているんだが、事件の後は……地獄だな」


「え?」


「地獄だよ、闇市に残された物資は閉鎖と同時にほとんど持ち出されたけど、残りはもう争奪戦さ」


「争奪戦?」


「殺し合いだ。まだ軍の抑圧が解かれてすぐだったからな、みんな必死に物資を巡って争った」


 二人は霧がかった大通りを北上して闇市の入口を目指して歩く。


「そうそう、何気なく歩いてるけど暴徒には気を付けろよ? いきなり襲ってくる」


「えええ! 私丸腰なんですけど!!」


『問題ない、いざという時は念じろ。お前が眠っている間に今の状況に合わせて機能を最適化し、我をいつでも召喚できるようにしておいた』


(あ、ありがとうございます)


「安心しな、もし何かがあれば俺のストライクアーマーが俺達を守ってくれる」


 遼は上空を追尾してきているパワードスーツを指差した。


「さて、着いたが既にドンパチやってるな」


「え?」


 ようやく闇市に着いた二人は中から聞こえる銃声に耳を傾ける。


 怒号と鳴り止まない銃声は中でまだ戦闘が続いている事を意味しているのだ。


「よし、俺が行く。椛はここで待ってろ」


 遼はパワードスーツを呼び戻すと、コンソールを操作して待機状態にした。


 待機状態になったパワードスーツは乗り込むためのコックピットを遼に向けてしゃがみこんでいる。


「行くってどこに……まさか!」


「俺が直接乗り込んで終わらせる。なぁに、いつものことだ」


 慣れた動きでパワードスーツを素早く着込むと、遼はハープンライフルで武装して中に突入していった。


「行っちゃいましたね」


『お前は行かないのか?』


「待ってろって言われたので」


『中にかなりわずかだが同郷の妖怪の反応がある』


「え?」


『恐らく今回の珍事の犠牲者だろう』


「い、行きます!」


 椛も遼の後を追って闇市に入る。


 以前来たときにはなかった立ち入り禁止のテープが巻かれた扉を開けて銃声の響く階段を一段飛ばしにかけおりた。


 中では遼が狭い闇市の中をパワードスーツで飛び回りながら制圧している。


 時折聞こえる悲鳴はカウンターの後ろから聞こえてくる。


 逃げ遅れた誰かが流れ弾に怯えているのだろう。


「あそこに……!」


 足元に落ちていた鉄板を楯にカウンターに近づく。


 が、カウンターに隠れていた影には別の人間が手を差し伸べた。


「やれやれ、ここは未だにこんな感じなのか」


 そいつは執事らしく背筋を伸ばすと、腿に挿していたナイフを三本取り出してまだ抵抗していた男に向けて投げる。


「ぐ……」


 ナイフは見事に命中したのだが……。


「あ!」


「お久しぶりですねMs.モミジ。またMs.アヤが探していましたよ」


「文様! やっぱりここに!」


 興奮のあまりわずかに声が裏返る。


 この執事の事は忘れるはずもない、以前この世界に飛ばされた際、桔梗の救出を助けてくれたナハトだ。

 そこに遼も降りてきた。


「待ってろって言っただろ椛……」


 だがナハトの姿を見るなりあからさまに言葉のトーンが落ちる。


「なんでてめぇがここにいるんだ!」


「それはこちらの台詞ですが」


「え? え?」


 状況が飲み込めない椛はナハトと遼の間に挟まれてただおどおどするだけだ。


「よおクソ野郎。抜きな、その背中の刀をさ」


「いつかの決着か」


 示し合わせたかのように離れる二人。


 ある程度離れたところで互いに得物を構える。


 決してふざけているわけでもなく、明確な殺意がそれぞれに向けられていて椛は動けないでいた。


(どうしよう、動けない。蛇に睨まれた蛙の気分……)


 二人の呼吸も聞こえてきそうなほど張り詰めた空気が漂っている中、ナハトは刀を少し抜いて居合いの構え、遼もハンドガンに持ち替えて早撃ちの体勢を取っている。


 そして、その時は来た。


 水のしたたる音に二人が同時に反応したのだ。


 そしてそれに合わせて椛も反応した。


 意識したわけでなく身体が勝手に動いたのだ。


 二振りの透明な虎鉄を両手に召喚、目にも留まらぬ早さで二人の間に割って入ってそれぞれの攻撃を防ぐ。


「な!」


「椛、どういうつもりだ!」


「やめてください! 二人の間に何があったのかは知りませんがこんなの間違ってる!」


 少しして二人は椛から離れて武器を収めた。


 それを見て椛も虎鉄を消して二人の様子をうかがう。


「チッ、わかったよ。今は武器を収めてやる。けどな椛、もしそいつと行くなら俺はここでお別れだ」


「遼さん!」


「お前にも苦手なやつって一人はいるだろ? だがこの問題はそんなあまっちょろい話じゃない。だめなんだよ、そいつだけはな」


 パワードスーツを脱ぎ、素顔をさらした遼。


 その表情は殺気と憎悪に満ちていた。


 普段は温和なナハトも遼を見るなり明らかな嫌悪感を見せている。


「…………。」


「じゃあな、椛」


 遼は椛に背を向けて去っていった。


 その背中を椛は見送るしかなく、ただ呆然と見送る。


「Ms.椛……」


「仕方、ないんですよね……行きます。文様に会わせてください」


「すみません、この問題は少々複雑で」


「……いいですよ、聞かないことにしておきます」


「そうしてくれれば助かります。聞いてもあまり気のいい話じゃないですからね」


 こうして椛は遼と早々に離れる事になった。


『よかったのか?』


(仕方ないですよ。こればっかりは私の一存では決められませんから)


 椛とナハトは闇市の奥、反対側の出入口を目指して歩いていく。

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