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episode17『NO SIGNAL』




PiPiPiPiPiPiPiPiPiPiPi


「のわぁ!」


 激しいアラームの音と共に男はベッドから転げ落ちた。


「おーいクソアニキ、迎えが来てるぞ? ってなにやってんのよ」


「えーと……新しい筋トレとか?」


 男、白木京平は上下逆さまの状態で部屋のドアを見た。


 ドアのところには妹が呆れ顔で立っている。


「…………。はあ、赤葉さん来てるよ。早く支度しないとまずいんじゃないの?」


「ましろが? やばい!」


 京平はあわてて支度を始める。


 今日は部活の朝練がないからと完全に油断していた。


 制服に身を包み、洗面所で歯を磨く。


「アニキ、先に行ってるから鍵かけてってね」


「モガモガ!」


 朝ごはんは基本的に行きしなに買って行くため、かばんを抱えてリビングへ。


「悪いましろ、寝坊した!」


 リビングでは女の子が一人、本を読みながら待っていた。


 彼女は赤葉ましろ、京平の幼なじみだ。


「京平君遅いよ?」


「すまん、メロンパンおごるから!」


「京平君……私がメロンパンで釣られるとでも?」


「ジュース付きで!」


「うぅ……」








SIDE 白木京平


『えー、次の環状モノレール学園前方面行きは1番乗り場から発車します』


 私立厳想学園の周囲は大きな学園都市になっている。


ら とある富豪が日本一の高校を作るということを目標にして作った高校らしく、今でもその校風が残っている。


 京平も剣道の選手として推薦でこの学園に入った。


「そういえば京平君、聞きました? 早朝から何人かの生徒が病院に運ばれてるらしいです」


「は?」


「眠ったまま目を覚まさず、なんでも昏睡状態だそうです」


「ふーん」


 ふと、今朝の夢を思い出す。


 特に何の変哲もない夢だったような気がするが一つだけ覚えていることがある。


「眠り……夢、か」


「どうかしましたか?」


「いや、なんでもない。そういや夕べ変な夢を見たなとおもってな」


「変な夢? 奇遇ですね、私もですよ」


「ましろも?」


「はい。夢の内容は覚えてないですけど、おかしな夢だったなと」


「奇妙なもんだな。あ、また救急車……」


『えー次は学園前、学園前です。お出口は左側に変わります。扉にご注意ください』


 学園前駅は少し変わった駅の作りをしている。


 学校と駅が隣接しており、その都合上学生証がそのまま定期券になっているのだ。


 生徒が使う学生証にはたくさんの機能がある。


 電子端末の形状をしたこの学生証、出欠確認はおろか配布物や学校側からの生徒の呼出し等の学校で使える機能の他、電子マネー、インターネット、家の電化製品の制御。


 と、まだまだ挙げだすときりがないほど高性能だ。


『オハヨウゴザイマス、シロキさん』


 学生証をポートにかざして駅を出る。


 が、二人はそこで異変に気付いた。


「京平君……」


「ああ。誰もいない……」


 普段なら駅に程近いこの場所にもたくさん生徒がいるはずなのだが今日に限って一人もいない。


 教室までの道のりにも少数しか生徒がおらず、それが余計不安を煽る。


「なんでだ? いつもならもっといるはずだが」


「聞いた話では何人かだったはずなのにこれは……」


 ぽかんと周りを見回す二人。


 だがチャイムが二人を現実に引き戻す。


 人がいなくても授業はいつも通り始まるのだ。


 急いで教室に入る。


 案の定教室もガラガラだ。


 まずクラス委員長の御湖崎怜奈、その自称ライバルである伊万里小夜、クラスではあまり目立たないが化学オリンピックで好成績を残した関凪千鳥。


 そしてあと一人。


「おっはようございまーす!」


 京平とましろはすっかり油断していた。


 カメラのフラッシュが二人に向けて焚かれる。


「やめろ文名、朝から目がチカチカする」


「いやぁ、朝からアツアツなことで。一大事が起きているにも関わらずギリギリの登校とは」


 烏丸文名、京平と仲の良い情報通だ


「一大事? この集団サボりのことか?」


「今朝からこの学園都市はそのニュースで持ち切りですよ」


 文名は学生証端末を取り出すと、ニュースの画面を開いて暗いカーテンに投影した。


 カーテンに映し出された画面には今朝の状況が克明に映し出されている。


「謎の集団昏睡、厳想学園の70%が昏睡状態か」


「学園都市内の病院はどこも一杯で、あふれた人は都市の外まで搬送されているみたいです」


「おかしいな。なんでうちの学校だけピンポイントに……」


「理由は不明です。でもうちだけなんで理由の解明はすぐにわかるでしょう」


 学生証をしまってため息をつく文名。


 そこでちょうど担任が教室の中に入ってきた。


「出席を……でもこの人数だとその必要はなさそうね」


 担任、境由香里はタブレットタイプの端末を教卓に置いて俯く。


「みんな次の授業の準備を……あ、でも次の数学は先生がお休みなのよね」


(先生まで?)


 伏せて授業開始まで寝ているつもりだったが京平は思わず頭を上げた。


 生徒だけかと思っていたが教師までとは想定外だ。


 京平は学生証端末を取り出してもう一度文名に見せられたニュースを確認する。


 今こうしているうちにもきっと犠牲者は増えているのだろう。


(学校関係者だけのかかる伝染病?)


 そしてこの日は授業は行われず、皆不安を抱えながら家路につくのだった。







SIDE:御湖崎怜奈


「おはようございますお嬢様、今朝は特にお早いお目覚めで」


「うん……早くに目が覚めてから眠れなくて……」


 怜奈はパジャマ姿のまま眠たそうに朝食の席につく。


 今朝の朝食は焼きたてのパンとスープ、野菜のサラダにベーコンエッグ。


 それをふらふらと頭を振りながら食べていく。


「ところでお嬢様、今朝は学園の方で何かあったようですが」


「学園で?」


「はい。詳しくはまだ情報が入っておりませんが、学園の生徒が何人も昏睡状態になっているそうで」


「ふーん」


 興味なさそう、というよりまだ眠たいのだろう。


 怜奈は身支度するためにまたのそのそと自分の部屋に戻る。


 部屋では数人のメイドがかばんや服を用意して待っていた。


 そう、怜奈の家はいわゆるお金持ちだ。


 御湖崎の家は財閥とまではいかないものの、いくつもの会社を持つ巨大グループだ。


 だが怜奈はこのお嬢様扱いがあまり好きではない。


 贅沢な悩みかもしれないが、怜奈のコンプレックスでもあるのだ。


 メイド達の無駄の一切ない動きで身支度を終える頃には怜奈の目も冴えてきて、怜奈はようやく学生証端末のニュースを確認した。


「ふぅん……なるほどね」


 そのまま執事が運転する車に乗り込んで一路学校へと向かう。


「今朝は色々大変そうね……」


「今日はどうされますか?」


「んー、早く帰らされる事になりそうかな」


「私は車を学校の駐車場に止めて待機しております。お帰りの際はご連絡を」


「わかってる……ったく……」


「口が悪いですよ、お嬢様」


 やがて学校の校門につくと、運転手は窓を開けて外をうかがった。


 いつもなら徒歩で登校している生徒がいるはずだが、今日に限って誰もいない。


「おかしい……」


 運転手は車のダッシュボードから拳銃を取り出して外に出る。


 だがそんな心配をよそに怜奈は勝手に外に出て登校しようとした。


「ちょっ……お嬢様!」


「大丈夫よ、なんとでもなるわ」


 すたすたと歩き去る怜奈に気圧された運転手は拳銃をスーツの懐にしまって車に戻る。


 使用人ならこれについていくべきだがそうすると次は理不尽な蹴りが待っているのだ。


 それは以前に彼も身を持って体験している。


 同じ愚を二度もする彼ではない。


 おとなしく車を学校の駐車場に入れ、ポケットから携帯端末を取り出して電話をかける。


「私だ。お嬢様の送迎が終わったのだが……ああ、やはり人が明らかに少ない。ああ、ああ、わかった」







SIDE:白木京平


 家に帰り着いた京平はリビングの椅子に腰掛けてじっと時計を見つめていた。


 登校して早々に帰宅することになって自由な時間が増えたが、特にすることもなくただただぼーっとしている。


 筋トレをしようにも気が乗らないし、今手元にあるゲームも遊び飽きた。


 何もしないまま1時間が無情に経過していく。


 その時だった。


ピンポーン


 不意にドアベルがなって京平は立ち上がる。


 訪れて来たのは文名とましろだ。


 学生寮の部屋が近いため二人は暇があると上がり込もうとする。


「ハイハーイ、文名ちゃん参上!」


「…………。」


「京平君?」


 無言で扉を閉じて頭を抱える京平。


「あれ? ちょっとちょっと! 京平くーん? もしもし? HELLO?」


「ああ……さよなら俺の平穏……」


 観念して扉を開ける京平。


 ここで無視すると後日の教室が怖い。


「で、何の用だ? お前らも暇だな」


「それがそうも言ってられないんですよ」


 何も許可を取らずに京平の家上がり込んだ文名は持ち込んだ機材を勝手に広げだした。


 彼女は両親が記者であると共に、少しではあるがハッキングの腕もある。


「あれから救急車の緊急無線やネットワーク上のカルテの流れを追ってみたおかげで面白いものが見れましたよ」


 簡易プロジェクターで部屋の壁に映し出されたのは文名の集めたデータマップ。


 今朝だけでもかなり大量の緊急通報があったようだ。


「で、ここから学校のデータベースにアクセスして名簿と照らし合わせたんですが……」


 文名がキーを操作すると同時に名簿から名前が次々リストアップされる。


「面白いことに卒業間近の学年からは一人も倒れた者がいませんでした」


「どういうことでしょうかね……なんで卒業生だけ」


「私たち高等部だけじゃなくて中等部もです。あの事件は色んな世代に起きているようです」


「ん……」


 腕組みをして首を傾げる京平。


 名前の配列や学年が何か関係あるかと思ったが、ほぼまんべんなく被害に遭っているようで当てが外れた。


「ところでお前、このデータはどうやって手に入れたんだ?」


「実はヒメちゃんからもらっていたハッキングツールを使いました。私もハッキングの心得はありますがここまでの情報はとてもとても」


「そうか」


 京平はまたデータに目を移す。


 気になるデータはもう一つ。


「うーん……ん? なんだこの数値は」







SIDE:伊万里小夜


「小夜姉ちゃん、そろそろ勉強切り上げて晩御飯にしようよ」


「うん……あとちょっと」


 小夜は弟の颯太が呼ぶのも聞かずに2階の部屋でノートを書いていく。


 万年二位と言われる成績を持つ小夜を支えているのはこの努力だ。


 天才肌の怜奈と違い、小夜の成績は努力によって作られたもの。


 ノートの端まで書き進んで、シャーペンの芯が折れたところでふと我に返る。


「ふぅ、今日の分は終わりか」


 頭をボサボサとかくと机を蹴って椅子を転がした。


 暗い部屋の中、ちびたろうそくの明かりだけが小夜の顔を照らしている。


 このオール電化の時代にろうそくの明かりで勉強するのは貧しい家庭の名残だ。


 時計は8時を少し過ぎたところを指している。


 アルバイトの時間までは夕飯を食べてもまだ少し余裕がありそうだ。


「お姉ちゃん? 怜奈さんが来たけど」


 急に2階に声をかける颯太。


 同時にパタパタと階段を上がる音がする。


「またろうそくで勉強?」


「ほっとけ、このくらいの薄暗さが好きなんだよ。おい電気着けんな!」


 急に明るくなって目を細める小夜。


 そんな小夜を見て呆れた表情の怜奈は小夜の腕を掴んで部屋から引きずり出した。


「ほら、どうせ夕飯まだなんでしょ? うちで一緒に食べましょう」


「…………。」


「何よ。ご飯ぐらいいいじゃない。まだあの事根に持ってるの?」


「いやそういうわけじゃ」


「今日は話もあるの。今朝の集団昏睡の件」


 それを聞いて小夜もさすがに反応する。


「何かわかったとかか?」


「んー……それは……ないかな……あはは」


「…………。」


「な、なによ」


「……ニヒヒ」


 と、ここで何かに気付いた小夜は怜奈の顔を見つめてニヤニヤする。


「寂しいなら寂しいって言ってくれればよかったのに」


「いや、その……そういうわけでは……」


 察した小夜は肩をぽんぽんと叩いて部屋を出て行った。


 ふと気になって部屋を見回す怜奈。


 無造作に積まれた参考書とノート、それにしては綺麗にたたまれた布団。


 壁には2ヶ月前のカレンダーに壁掛け時計。


 そんな中、本棚の上に倒された写真立てが目に入った。


 小夜がいないことを確認してからそっと写真をうかがってみる。


 そこにはビリビリに破いた後に貼り直した家族写真が飾ってあった。


 小さい頃の写真だろうか、無邪気な笑顔の小夜と颯太。


 でも肝心の両親の顔が写った部分をなくしたのか、そこだけ綺麗に虫食いになっている。


「…………。」


 しばらくそれを見つめてからそっと写真立てをたたむ怜奈。


 小夜の過去は怜奈もかなり貧しい家庭だったということぐらいしかよく知らない。


「おーい、今日私バイトあるからそんなに時間ないんだけど?」


 そこでちょうど下から小夜の呼ぶ声がして階段を下りていった。







SIDE:???


 ここはどこまでも暗い、暗い世界。


 何も見えないし何も聞こえない。


「ここは……」


 レミリアはグングニルを構えて注意深く周囲を見回す。


 桔梗と黄龍が激突した際に光に飲まれたところまでは記憶があるが、気が付くとこの場所にいた。


「その声、レミリア?」


「霊夢! よかった……」


 聞き慣れた声に思わず胸を撫で下ろすレミリア。


 一人では少し心細かったのだ。


「ここは一体どこなのよ……真っ暗で何も見えないし手足の感覚もない……」


「え?」


「このまま消えちゃうのかな……私たち……」


 レミリアは声がするであろう方向に手を伸ばす。


 だがその手には何も触れず、ただ虚しく空を切った。


「霊夢! どこよ霊夢!」


「…………。」


 ついには霊夢からの返事も聞こえなくなる。


「霊夢……?」


 その声音は明らかに弱々しい物に変わった。


 それでも霊夢からの返事はない。


「嫌だ……嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!」


 うろたえるレミリアをひどい喪失感が包む。


 また一人になってしまった。


 いつしか自分も消えてしまうんだろうか?


 嫌でもそう考えてしまう。


 握りしめたグングニルの放つ温もりもだんだんと冷め、今にも闇に取り込まれてしまいそうだ。


「嫌だ……せっかく……私にも居場所が出来たのに……」





「あたいが一人になんてさせないよ!」


 手をギュッと握りしめられる感覚と共にチルノの声。


 握られた瞬間にカリバーンから放たれた光で闇が晴れていく。


 しかし声が聞こえていたはずの霊夢の姿はない。


「あれ……霊夢は……」


「みんな無事だよ。幻想郷は壊れちゃったけど」


「……………。」


 何も言えなかった。


 何かを言おうと口がぱくぱくと動くが声にならない。


 そう、幻想郷を崩壊の危機から救うことは出来なかった。


 チルノに連れられて白く、四角い部屋に入るレミリア。


 そこには見知った面々が集まっていた。


 泣いている者、死んだ目をしている者、壁にもたれ掛かってうなだれる者。


 生き残ったはいいがもはや皆死んだも同然な状態だ。


「ここは……」


「あの最後の瞬間にあの白虎が奪った能力でこの空間を作って転送してくれたんだよ」


「あの一瞬に? こうなることも予測済みだったってことか」


「そう。でも一部は救えなかったみたいだけどね」


 チルノは泣き腫らした藍を指差す。


 いつも一緒の橙がいない。


 他にもちょくちょくといないようだ。


「私はそんな救えなかった人を助けるために動いている。この剣がね、私に教えてくれるんだ」


 チルノがカリバーンを頭上に翳すと剣全体がほのかに光る。


「お嬢様……お嬢様!」


 誰かがこちらに気付いて走って来る。


 紅魔館の門番、紅美鈴だ。


「美鈴!」


「よかった!……本当に……エグッ……よかった……」


「泣かないで美鈴、私もまた会えてうれしい。フランや咲夜、パチュリーは?」


「うぅ……ごめんなさいお嬢様……ここには私以外……」


「……そう……か……」


 俯くレミリア。


 その隣をチルノが歩いていった。


「チルノ?」


「あたいにまかせて、助けに行ってくる」


 普段バカ丸出しのチルノの背中がなぜか勇ましく見えた。


 レミリアは少し迷った表情をしたが、すぐにグングニルを握りしめてチルノの後を追う。


「私も一緒に行く」


「この箱の外はとても危険だよ?」


「忘れたのチルノ。私はあなたに勝っている」


「そういえばそうだった。安心して背中を預けられそうだ」


 カリバーンを担いで壁に触れるチルノ。


 その壁はドアのように開いて外の空間を見せた。


 外はさっきレミリアがいた虚無空間が広がっている。


「さあ、みんなを助けに行こう」




システム再構築中...57/100

 不正なデータの流出を確認

C:\gensokyo\cirno.exe

C:\gensokyo\remilia_scarlet.exe

高セキュリティエリアへのアクセスを確認

アクセスは許可できませn.....


アクセスキーを確認、アクセスを許可

不明なプログラムを実行しようとしています

C:\universal\weapon\caliburnの実行を許可しますか?<Y/N>...|Y|

破損したデータの復元を開始します



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