episode7『幻想の戦士達』
夢、それは人が望んだ世界のカタチ
願えば、努力すれば叶う
だが今となっては自らを悟り、夢を諦める者が多い
ならば私が与えよう
夢を、未来への希望を
「夢想封印っ!」
霊夢のスペルカードが光を放ち、カード兵を一掃する。
その周りでは名だたる妖怪達が肩を並べて戦っていた。
「おい巫女! 片付かないぞ!」
「それぐらい頑張りなさいよ勇儀。あんた鬼でしょ?」
「ったく……あ、パルスィ! 前、前!」
地獄から増援に来た鬼や妖怪達は確かに強かった。
だがこういう戦闘に慣れてないせいで統率がとれていない。
「里の人間達は大丈夫なんですよね桔梗さん」
霊稀は刀を収めて刃を休めながら桔梗に近づく。
人間の避難は完了したが、人里はカード兵に制圧されつつあった。
善戦した霊夢と霊稀、鬼達だったがカード兵のあまりの量に押し返されつつある。
「大丈夫だ、地下は前の戦いの時も建物が崩れた程度で済んだからな」
桔梗は虎鉄を地面に突き立てると、握りしめた両手に妖力をためていく。
「今は目の前の敵に集中しな霊稀、次が来るぜ!」
「は、はい!」
霊稀も桔梗と同じように握り拳に霊力をためていく。
「行くぞ霊稀、拳技!」
「無頼滅霊拳!」
「無頼滅霊拳!」
ためた力を同時に解放する二人。
二つの力は混ざり合い、正面のカード兵を完全に消し飛ばした。
「ま、こんなものか」
まだ煙の出ている手を振って煙を消すと、桔梗はまた刺しておいた虎鉄を握りしめる。
「押し返すぞ! みんな気を抜くなよ!」
幸い人間の里まで入り込んだカード兵はそこまで多くない。
この人数と戦力なら押し返すことも容易だ。
(心配し過ぎだったか……)
だが確実にダメージが残ってしまった。
これだけの数だ、皆の顔に疲れの色が見えだしている。
特に病み上がりのカンナはつらそうだ。
「大丈夫かカンナ、やっぱりまだ完治してないんじゃないか?」
「大丈夫よ! 少し……疲れただけだから……」
近づく桔梗を押し返すカンナ。
だがその手にはあまり力が篭っていない。
「カンナ、お前やっぱり……」
「桔梗さん! 上を!」
カンナが心配ではあるが霊稀に言われて空を見上げる桔梗。
そこには見覚えのある砲台が結界を突き破って伸びていた。
「ワールドブレイカーっ! いつの間に!」
以前は爆風だけでもかなり吹き飛ばされたが、真上からの一撃では直撃は免れない。
「くそっ、間に合ってくれ! スペルカード発動、衛技『飛鳥美人の守り人』っ!」
スペルカードを取り出して発動させる桔梗。
防御結界が展開し終わるのが先か、ワールドブレイカーが発動するのが先か。
桔梗は無意識のうちに目を閉じていた。
「咲夜」
「はい、お嬢様」
咲夜はレミリアの手を握ると、もう片方の手で懐中時計を懐から引き出す。
「行きます」
咲夜が懐中時計を握りしめると同時に周囲の世界の色が反転した。
咲夜の能力は時間停止、今『この瞬間』を自由に動けるのは咲夜と手を繋いでいるレミリアだけである。
「じゃあ行きますよ、手を離さないでくださいね」
「わかってる、この間の二の舞はごめんよ」
「途中で離したせいで計画が台なしにな……」
「咲夜」
「す、すいません」
今回二人に任された仕事は暗夜天の主力武器であるワールドブレイカーを破壊すること。
時間を停止出来る咲夜の能力があればこその作戦だ。
咲夜が時間を止め、レミリアがグングニルで確実に仕留める。
二人は紅魔館のベランダから飛び立つと、まずは紅魔館から近い湖の上にあるワールドブレイカーに近付いた。
魔術のような技を多用する暗夜天に対してワールドブレイカーは機械の固まり。
近付くと金属の装甲の隙間からケーブルやパイプのような物が見える。
「これね」
レミリアは背中に背負ってきた槍を片手で構えた。
スペルカードで作り出す偽物ではない。
本物の神槍グングニルだ。
「まずは一基!」
レミリアの投げたグングニルはワールドブレイカーの砲身を貫通、再び手元に戻ってきた。
「グングニルの力には耐えられそうですか?」
「わからない。元の姿に戻ってもまだ手がひりひりする」
レミリアはグングニルを使うためにリミッターを外して元の姿に戻っているが、多少の時間稼ぎにしかなっていない。
「確認した数はあと5つ、急ぎましょう」
足元の紅魔館周辺では美鈴やフランが戦っている姿が見えた。
それにそこを突破したとしてもパチュリーと小悪魔達が張った何重もの結界がある。
紅魔館の守りは盤石だ。
次に近いのは魔法の森上空にあるワールドブレイカー。
二人は一直線にそこへ向かった。
「これで二つ目!」
順調にワールドブレイカーを破壊していく二人。
このまま迷いの竹林、人里、博麗神社の物も破壊した。
が、最後の一基、妖怪の山上空のワールドブレイカーに向かう道中でレミリアより先に咲夜に異変が起きる。
「咲夜?」
咲夜は胸を押さえて息を荒げている上、口元から血が滴っていた。
「すいません……お嬢様……もう……限か……い……」
咲夜が気を失うと同時に世界の色調が元に戻る。
そして世界は再び動き出してしまった。
「まずい!」
時間をかけ過ぎたせいで咲夜の能力使用可能時間を超過していたらしい。
「間に合え!」
レミリアは咲夜の手を握ったままワールドブレイカーに向かう。
しかしグングニルが届く範囲まで接近するには時間が足りない。
「うわぁぁぁぁっ!」
少し遠いがレミリアはグングニルを大きく振りかぶって投げる。
今までにない遠投、肩がすっぽ抜けるのを覚悟して投げた。
当然飛距離の足りない槍はワールドブレイカーに届くことなく落ちて来る。
「だめか……」
どのみちそろそろグングニルの力に耐えられなかったレミリアはグングニルを放棄してワールドブレイカーに向かう。
そんなレミリアを嘲笑うかのようにワールドブレイカーはその砲身にエネルギーを溜めはじめた。
妖怪の山の結界は他と比べて弱い。
恐らくワールドブレイカーの砲撃には耐えられないだろう。
諦めずにスペルカードを抜くレミリア、使うのはもちろん神槍『スピア・ザ・グングニル』だ。
しかしレミリアがスペルカードを使う直前にワールドブレイカーの砲身は遠距離からの砲撃で真っ二つに破壊される。
「っ! どこから?」
射線の先、はるか遠くに見える小さな影。
光の反射から正体を察したレミリアはため息と共に苦笑した。
「遅すぎだ。魔砲使い!」
「ったく……どうなってるのよ!」
魔法の森上空を一人の少女が本を片手に飛んでいく。
七色の人形使い、アリス・マーガトロイドは幻想郷に異変が起きてることを察知し、一路博麗神社を目指していた。
(魔理沙もいなかったし……きっと異変なのよね)
途中、人里で戦う人影が見えたが気にせず通り抜ける。
足元に訪ねるはずの霊夢がいるにも関わらず……。
「霊夢! ちょっとこれどうなってるのよ!」
博麗神社に降り立ったアリスはふすまを開け放って怒鳴る。
しかしそこにいるのは当然霊夢ではない。
「…………。アリスか?」
二日酔いの魔理沙がいるだけである。
「っ!」
魔理沙の様子に気付いたアリスは魔理沙を外に投げ飛ばす。
あまりに突然の出来事だったので魔理沙は派手に飛ばされた。
「いったぁ……」
尻餅をついた魔理沙がアリスを睨みつける。
しかしそんなことお構いなしのアリスは魔理沙の顔目掛けて桶に入った水をぶちまけた。
「目、覚めた?」
「……あぁ」
そりゃあ誰でも顔から冷水をかけられれば嫌でも目が覚める。
魔理沙は少し不満げにエプロンの裾で顔を拭う。
「そんな悠長なこと言ってる暇はないの。異変よ異変!」
「そう言われても……私は人里の人間達と一緒に逃げるつもりだったし……」
まだ魔理沙の話の途中だが、アリスの平手がとんだ。
「逃げる? 冗談でしょ? 今じゃどこに逃げても地獄絵図よ」
アリスの言ってることは間違いではない。
博麗神社は霊夢の強力な結界で守られているが、一歩でも外に出ればたちまち戦火にのまれる。
「幻想郷がなくなったら生きていても意味ないでしょ。ほら!」
手を差し延べるアリス。
正直に言えば今にも逃げ出したい気分だ。
でもアリスの言い分ももっともである。
人里の人間達と一緒に逃げることが出来なかった今、魔理沙に出来るのは死なないために戦うことぐらいだ。
「それに……いざという時は私がま」
「そうだな、今さら何言っても遅いしな!」
「え?」
一度物事を決めた魔理沙の行動は早い。
すぐに帽子と箒を呼び出す。
今まで悩んでいたのが嘘のような行動の早さだ。
異常なまでの思い切りの良さ、それが魔理沙の良いところであり悪いところでもある。
「アリス、行くぞ!」
「あ、え、ちょっと!」
急いで魔理沙の箒の後ろに座るアリス。
まずは見えている砲台を叩き潰す。
幸いにも博麗神社近くの砲台は勝手に自壊した。
あと見えるのは妖怪の山上空の物だけのようだ。
(正直まだ怖い。でも……)
「急ぐぜ、あれは撃たせない!」
「間一髪、ってとこか」
魔理沙は妖怪の山の駐留場に降り立つと、天狗やレミリア達と合流した。
「霊夢から聞いていたけど、どうやら吹っ切れたようね」
レミリアは魔理沙に河童の作った通信機を投げる。
地底に異変解決に出かけたときの物よりもはるかに軽量化されているそれは、外の世界ではトランシーバーと呼ばれる通信機とほぼ同サイズまで小型化されていた。
「お前、誰?」
首を傾げる魔理沙。
その隣のアリスも同じ反応だ。
「そうか、こっちの姿の方が見慣れているんだったな」
レミリアは指先から紅い霧を出して身体を覆い、その中でくるりと一回転して見せる。
霧が晴れると、その中にはいつもの姿のレミリアが腕組みして立っていた。
「ああ、なんだレミリアか」
「誰かと思ったわよ」
「いや、白黒の方は気付いてたでしょ!」
「あ、ばれてた?」
「反応がわざとらしすぎ」
頭を抱えるレミリア。
三人は情報を共有しつつ次の襲撃に備える。
「人里は押し返し始めているわ。魔理沙を拾いに行く途中で確認したの」
「桔梗の言っていたワールドブレイカーは私と咲夜で全て破壊した。あれの脅威は去った、と考えたいわね」
戦況はワールドブレイカーを破壊したことで大きく変わった。
これで幻想郷を破壊しうる兵器は暗夜天の手元にはなくなったことになる。
「あとはなんとかして前線組にもこの通信機を届けたいところだけど……」
レミリアは南西の空を指差す。
そこには空を覆い尽くすほど大量のカード兵が見えた。
一団は妖怪の山を目指して飛んで来ているように見える。
「私は咲夜を置いてここを離れるわけにはいかないし、二人は貴重な対空戦力だから離れて欲しくない」
ここに残った天狗は少ない。
その中で適任者は一人しか見つからなかった。
「私が、ですか?」
椛はレミリアから通信機を受け取ると、三人の顔色を伺う。
「確かに椛はどちらかと言えば妖夢みたいな接近戦タイプだし、ここに残るメリットはあまりないな」
レミリアの人選に納得した魔理沙は大きく頷く。
「ちょうど良いわね。椛、前線に行くならこれを持っていってちょうだい」
話を聞き付けた医療班の彪奈は椛に駆け寄ると小さなかばんを渡した。
「中身は私の調合した傷薬と包帯よ」
「わかった」
椛は受け取ったかばんの中に通信機を押し込んで背中に背負う。
「じゃあ、行ってくるよお姉ちゃん」
剣と楯を抜く椛。
彪奈は椛をギュッと抱きしめると、足早に医療班のテントに戻った。
「なんだか悪い気がするわね。家族がいるなんて」
山を出る直前、アリスが椛を呼び止める。
「大丈夫、私だってお姉ちゃんみたいに役に立つところを見せたいから」
「…………。じゃあこれも持って行きなさい」
アリスの影から普通のサイズから一回り大きめの上海人形が顔を出す。
「試作品だけど自立式の上海人形よ。あなたの援護をさせるわ」
上海人形は椛の背中に飛び乗ると、椛に笑いかける。
「わかりました、ありがとうございます!」
「いいから、行きなさい」
アリスはそっぽ向いて歩きだす。
「はい!」
椛もアリスに一礼すると、上海人形の位置を少しずらして走り出した。
「家族は大事にしなさいよ……私みたいに後悔することになるから……」
「おうおう、アリスが他人に優しくするなんて珍しいな!」
突然の声に驚くアリス。
木陰から出て来たのは魔理沙だ。
「あ、や、ちがっ、これは……」
顔を赤らめて全力で否定するアリス。
魔理沙はニヤニヤしながらアリスの肩をぽんぽんと叩いた。
「ほらほら、敵のお出ましだ」
カード兵は互いに手を繋ぎ、やがて人間より少し大きいサイズになる。
「おっと……こいつは想定外だぜ」
「どうとでもなるでしょ」
「だな」
魔理沙は八卦炉を、アリスは複数の上海人形を取り出した。
「なんとか助かったな」
防御結界を解除した桔梗はワールドブレイカーの破片の一つを蹴り飛ばす。
付近にいたカード兵はどうやらワールドブレイカーの爆発と破片で一掃されたらしく、いつの間にか周囲は静かになっていた。
「まずは第一関門クリアですね」
霊稀も刀を収めて周囲を見渡す。
「こりゃ復興が大変だ。見ろよパルスィ、家にあんなでっかい瓦礫が突き刺さってやがる」
「…………。」
「パルスィ?」
パルスィの反応がない。
それもそのはずだろう、衝撃波で飛ばされた勇儀が上からのしかかったのだから。
「ぱ、パルスィ! 大丈夫か!」
「勇儀、あんまり揺らすとパルスィが……」
肩を掴んで揺さぶる勇儀を止める霊夢。
案の定パルスィは白目を剥いて泡を吐きだす。
特に外傷はないようだが、これでパルスィの戦線の離脱が確定した。
「そういやカンナは、カンナはどうした!」
桔梗は急いで周囲を見渡す。
確かに防御結界の中には収まったはずだ。
それでもいないということは……。
「ここ……ゲホッにいるわよ……」
近くの瓦礫が崩れ、下敷きになっているカンナが出てきた。
さっきから動きは鈍かったが、衝撃波で完全にダウンしたようだ。
比較的軽い瓦礫だったが、もはやそれを一人で押しのける力は残っていない。
「パルスィとカンナはもうダメだな。霊夢、神社までいったん後退するぞ」
桔梗はカンナを瓦礫から引きずり出すと、背中に抱えて立ち上がる。
「確かに、敵もある程度引いたしいったん下がるべきね」
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
ちょうど引き上げようとした時、後ろから一人走って来た。
妖怪の山から降りてきた椛だ。
「お、ちょうど補給も来た。よし、撤退だ」
椛も合流した桔梗達は博麗神社に向かって飛び立つ。
同じ頃、各地でも敵の排除が完了しつつあった。
傷薬や湿布薬等の増産を進めていた永遠亭では建物が迷いの竹林奥にあり敵が少なかったことと、実戦経験がある優曇華や途中参戦した妹紅の活躍もあり早々に戦いが終わる。
最後のカード兵を撃ち抜くと、優曇華はブレザーの衿を正して空を見上げた。
もうじき夜が明ける。
そうすれば敵はより視認しやすくなるし、戦闘の負担は減るだろう。
「妹紅さん、お疲れ様でした」
「ああ……うん」
妹紅はしゃがみこんで脇腹を押さえたまま立ち上がらない。
「……ちょっとすいません!」
「な、お前!」
不審に思った優曇華は妹紅の手を振りほどいて脇腹を確認する。
案の定そこには紫色に変色した大きな傷があった。
傷はたいしたことないが、恐らく毒物の類に侵されているのだろう。
いくら不死身でも毒は身体に堪える。
「い、今すぐ治療を!」
妹紅の肩をかつぐ優曇華。
振りほどこうとする妹紅だったが毒で力が入らず、優曇華に担がれたまま気を失った。
かという優曇華も実はぎりぎりの状態、しばらく休まないと戦えそうもない。
「鈴仙!」
走ってきたのはずっと永琳のアシスタントをしていたてゐだ。
帰りが遅い優曇華を心配して永琳が寄越したのだろう。
二人は妹紅を永遠亭に担ぎ込んで次の戦いに備えた。
「どぉだぁ~まいったかぁ~」
目を回した空は右腕の制御棒を振り回しながら叫ぶ。
空の放った一撃は周囲にいた全てのカード兵を消し炭にし、全ての妖怪達を爆風で吹き飛ばした。
「まったく、地獄の烏はハンパないな」
銀牙はその凄まじい威力を見て呆れ返る。
周りにいる天狗達は閃光と地面にたたき付けられた衝撃で戦闘不能、しばらく立ち上がることすらままならない。
「あんたんとこの、ありゃなんなんだ?」
ひっくり返った状態で木に引っ掛かった天魔は下の枝に正座しているさとりを木の枝でつつく。
「いやぁ、昔はもうちょっとおとなしい子だったんですけどね」
とにかく幻想郷の空はこれで一安心だ。
失ったというより誤爆で倒れた天狗は数知れないわけなのだが。
ようやく動けるようになった早速銀牙はまだ戦える仲間を探して整列させる。
何人か減ったが被害はそこまで大きくない。
「よし、いったん怪我人を山に運んで休もう。みんなご苦労だった!」
点呼が終わったところで天魔が木から降りて来る。
さとり達も天狗に混じって撤退を始めた。
「飛風、まだ飛べるか?」
天狗達の背中を見送る天魔は銀牙を呼び止める。
銀牙もあちこちかすり傷があるが、他の天狗に比べればかなり軽傷だ。
「各施設の様子を見てきて欲しい。特にあの紅い館だ、主戦力が今山にいると聞いた」
「各施設の被害報告、及び助太刀ってところっすかね」
「まあそんなところだ。お前も疲れているだろうし、早く帰って来い」
「了解、行ってくる」
銀牙は雷をまとって飛び立つ。
恐らく5分も経たないうちに帰ってくるだろう。
「皆無事ならいいんだが」
各地で戦闘が終わる中、唯一終わらない場所が一カ所。
周りに障害物がなく、目立つ色の紅魔館は攻め入りやすいのかカード兵が大量に集まって来ていた。
「妹様!」
主戦力のフランを筆頭に美鈴、ルーナリアが前線で戦い、パチュリーや小悪魔が結界で侵入を防いでいる。
「当たれっ!」
フランが持つ炎の剣、レーバテインがカード兵を薙ぎ払う。
だが薙ぎ払ったところで数はいっこうに減らない。
それどころか他から撤退したカード兵まで集まって来ていた。
「スペル!」
ルーナリアは翼を大きく広げてスペルカードを取り出す。
何故外から来たルーナリアがスペルカードを持っているのか誰も突っ込まないが、カードは正常に発動した。
光の渦がルーナリアを中心に巻き起こり、カード兵を巻き込んで空高く伸びる。
「神託『ジャッジメントストーム!』」
広げた4枚の翼を羽ばたかせるたび、巻き上げられたカード兵が消えていく。
「まったく、これだからあのお方の崇高な考えが理解出来ないクズ共は……」
「悪態付いてる暇は無いですよ」
隙だらけのルーナリアに背後から接近するカード兵を気功ではたき落とす美鈴。
「あははははは!」
久しぶりに暴れ回れるのが楽しいのか、フランに関してはだんだんと暴走してきている。
「真面目にやるのが面倒になって来るなあ……」
「腐るなよ、助っ人が来たぜ」
ため息をつく美鈴の元に雷が落ちた。
稲妻の中から出て来たのは銀牙だ。
状況を見るや否や長引かせるのは不利と判断、スペルカードを抜いて発動させた。
「韋駄天『蹴偵愚守人頼躯[シューティングストライク]』!」
銀牙の剣の先から放たれた無数の電撃が周囲のカード兵を一掃する。
残った少数の敵もフランのレーバテインが薙ぎ払った。
「すごい……あれだけの敵を一撃で……」
目の前に立つ男の力を目の当たりにして絶句する美鈴。
事実銀牙は烏天狗の中でもスピードとパワーが抜きん出ている。
「ここはこれで終わりだな」
「はい、ありがとうございました……」
「気にするな。幻想郷がなくなるかの瀬戸際なんだ、お互い助け合わないとな」
大きく頷く美鈴の後ろでハイタッチするフランとルーナリア。
やがて周囲が明るくなり、太陽が顔を出す。
「い、妹様!」
ぷすぷすと煙を出すフランに慌てて日傘をさす美鈴。
銀牙は通信機を置くと、次の場所へと羽ばたいた。




