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トゥルーエンドはまだ遠く

作者: 但馬ほずみ

転生乙女ゲーの作品がはやっているようなので、触発されて書いてみました、ら、こうなった。あれ?

 終業式の後、呼び出された場所に彼が待っていた。

 緊張した面持ちの彼が、来てくれてありがとうという。ううん、という私に彼は告げた。


 好きです、付き合ってください。


 私は、恥じらいながら、うなずいた。


 光が私たちを包み、世界は真っ白になる。そして、浮かび上がるEndの文字。




 やった、やったよぅ~!

 遂に、全ルートコンプリートだよぅ!!

 これで乙女ゲーこの世界から、抜けられる!


 私は、転生の輪に入る前のほんのわずかな瞬間にそう喜んだのだった。




          ◇          ◇           ◇



 そもそも、私はごくふつーの日本人女性だった。

 もうよく覚えてないけど、OLだったような気がする。ある日気がついたら、この世界に来ていた。

 舞台はある高校。入学式から始まる一年間。私は、色々な男の人と知り合いになって、終業式で告白されて、それに応える。

 それだけ。

 一応友達とか、幼なじみとかの絡みもあるけど、基本男の人たちとのやり取りで一年が終わる。そして、また入学式に戻るんだ。


 どれ位繰り返したんだろう。ある時、これ、前にも経験があるって、気がついた。そしたら、その晩夢に神様(!)が出てきて、ここは神様が楽しんでる乙女ゲーの世界だって言うじゃない。こんな世界に永遠に閉じこめられるなんて、イヤだって泣き叫んだら、あとちょっとで隠しキャラまでコンプリートできるから、そしたら転生の輪に戻すって約束してくれた。まあ、神様だから約束はやぶらないだろう。

 それから、必死で攻略したよ。残りのキャラのすべてのエンドを。元OLの根性なめるな。


 で、ついに最後の隠しキャラの最後のエンドを終え、私は、転生の輪に戻ったわけ。


 転生した私は、前世の記憶もなく、極ごく普通の子で、普通に成長していった。幼稚園ではお友達もいっぱい出来た。小学校は楽しかった。中学生になっても、男女仲良く遊んでた。


 で、高校の入学式。私は雷に打たれたごとく、急にすべてを思い出した。


 これ、あの乙女ゲーぜんせの舞台じゃねぇ?


 衝撃にへたりこんだ私を、隣の家の幼なじみ(男)が、保健室に連れて来てくれたんだけど…。

 なぜに、私は幼なじみに壁ドンされてるんでしょーか?


「思い出したんだよね?乙女ゲーのこと」


「な、な、なんで、あんたがそれ知って…」


「僕も乙女ゲーそこにいたからねぇ、幼なじみとして」


「え、あ、え…?」


 あたしは頭がうまく働かない。近い、顔が近い!


「君が何十回も、違う男とエンドを迎えるのを嘆いてたら、神様が哀れんでくれたんだよ。僕を、トゥルーエンドの相手役にしてくれるって」


「とぅ、とぅるーえんど?でも、相手が決まるのは、終業式のはず――」


「それは、神様のゲームのエンドの終わり方だろ?トゥルーエンドはこれから始まるんだ」


 耳元で、彼がささやく。ああ、嫌な予感がする。背中がゾクゾクするよ。


「は、始まるって、じゃあ、終わりはいつ…?」


 彼が目の前で、艶然と微笑む。うわ~ん、わんこキャラどこいった~!!


「君と付き合って、あ~んなことやこ~んなことして、結婚して子どもができて、そうだな、孫もできて、もう思い残すことないってくらい人生楽しんで、死が二人を分かつまで――だよ」


 ひえぇぇ~~!!神様、なんて事してくれたのよ~!トゥルーエンドも、高校の一年間でいいじゃない!!あたしの人生丸ごとゲームにしやがってぇ~!!!


 ああ、人生のトゥルーエンドは、まだまだ遠いようです。

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