6夜目
お題:彼女と投資 制限時間:15分
就寝までのひとときを明日のプリント作成へと充てる。
この仕事をしていると就業時間以内に全てをこなすことは難しい。元々終わりのない仕事なのだ。
楽をしようと思えば随分と手抜きもできるのだろうが、俺はこの仕事にやりがいを感じている。以前は遅くまで職場に残って作業をしていた。
今では彼女に会うために夜遅くまでの残業はやめている。
作成の合間にインターネットを開きお茶について検索する。予想外に大量の検索結果が出て、それらを一つ一つ確認しているとあっという間に時間が過ぎてしまった。
我に返って時計を見れば、もう深夜帯になっている。俺は慌ててめぼしいホームページのいくつかをブックマークすると、プリント作成を再開した。
彼女にお茶会をしようと提案した手前、俺はお茶にそこそこ詳しくなっておく必要がある。
昨夜のように安売りのティーバックばかりじゃ駄目だ。しかもあれは俺個人のものではなく職員室の共有戸棚から二つずつ抜いてきたものだ。
彼女と飲んだ紅茶は、正直美味いのかまずいのかさえよく分からなかった。
だが、女性というものは味にうるさいというではないか。あんな、50パック298円の紅茶じゃ口に合わなかったかもしれない。
考えた挙句、俺はいろんなお茶を彼女に出してみようと思った。
浅知恵かもしれないが、珍しいお茶を出せばそれについて少しは話がはずむかもしれないし、きっと彼女も喜ぶに違いない。
そんなわけで、こうして茶といえば普段ペットボトルの日本茶かコーヒーメーカーで温まりっぱなしのコーヒー程度しか飲まない俺が、茶について学習する羽目になったのだ。
プリント作成が終わりデータを記録しながら彼女の横顔を思い出す。
彼女は確かにさほど美人ではなかったが、どこか目を惹く顔立ちだった。小さな鼻にはそばかすが浮いているのが夜の外灯でも分かって、それもとても可愛いと思った。
そう思うのは、きっと俺だけではないのだろう。
相手はいるのだろうか。