4夜目
お題:煙草と小説練習 制限時間:15分
マンションに帰宅しても、いまいち気分が落ち着かなかった。
もやもやを吹き飛ばすため、じっくりと熱いシャワーを浴びる。
風呂上がりのビールでも飲みたい気分だったが、それではジョギングが台無しに――いや、ジョギングは一周もしていない。これでは帳消しどころか贅肉が増えてしまう。
仕方なく煙草の箱を手に取りベランダに出た。
ヘビースモーカーというわけではないが、手持無沙汰な時に便利だという理由で煙草は持っている。
吸う癖に、部屋にヤニがついたり煙の臭いが付くのは嫌なため、俺はいつもベランダに出る。冬場は身体が冷えるため風呂上がりに出ることはあまりないのだが、今夜はそれが却って良かった。
キン、と濡れた髪が凍え、一気にクールダウンする。
柵にもたれかかり一服しながら、さて、どうしようかと考える。
こんなにも彼女が気になるってことは、好きになりかけてるんだな。
違いない。
だが、見るからにあんなに大人しくて臆病そうな相手は初めてだった。
どちらかといえば俺は華やかで甘い香りがする女がタイプだ。
気があればそれと分かる合図を互いに出す。そうして後は酒の席にでもこちらから誘えば、後は大抵上手くいく。
がりがりと頭を掻きながら、はーっ、と煙交じりの溜息をついた。
分かってるんだよ、ああいうタイプはめんどくさい。
本気になってがっつけば、彼女は引いてしまうだろう。
――まだ、二夜だ。
「よく来られるんですか?」
短い会話の後、しつこくしても印象が悪いだろうと俺は立ち上がりつつ訊いてみた。
「はい。時々」
彼女の声は耳を澄まさないとよく聞こえなかった。
無性にもやもしてきたため、ケータイをタップしメール欄を開く。
そうして綴ってみたのは、自分でも鼻で笑ってしまうほどに陳腐なポエムだった。
くだらねえ。
ガラじゃないっつの。
煙草をもみ消し、俺は部屋へと入った。