七話 沈黙は金と言うけれど
「…………」
「…………」
部屋は俺の住居と同じ形。
内装は本棚が多い印象かな。
「…………」
「…………」
沈黙。
静寂。
なぜ、俺をここに置いていきましたか、なずなさんや。
「…………」
「…………」
もう気まずいとかいう次元じゃない。
少し距離があった顔見知りの女子、それもあまり話さない女子。
そんな少女と二人きり。
「…………」
「…………」
切り出せる話はあるか。共通の話題とか。
あるにはあるが、直後に起こる大惨事が洒落にならなそうなので却下。
で、それ以外は何一つ浮かばない。……記録結晶の印象が強すぎて。
「…………」
「…………」
なずなは隣からご飯を持ってきていっしょに食べようと提案、実践中。
帰ってこい、なずな。
どれだけ時間をかける気だ。
「…………」
「…………」
いや、なずなに任せるのもおかしい。
自分の主体性のなさを忘れたか。
よし、いこうか俺。
「「あの」」
かぁあぶったぁああ!
「「……お先にどうぞ」」
またかぁぶったぁあ!
どんな息の合方だよ。餅つきとかで目を瞑ってやれそうなくらい息ぴったりじゃないか。……いや、これだと両方いっぺんに動作して大惨事になる。むしろ合っていない。
とりあえず、打開しよう。自力で。
「えっとさ」
「……うん」
「夜遅くにごめん」
「……良いよ」
「ご飯食べた?」
「……ううん。まだ」
ふるふる。小動物っぽいなこの子。なずなより身長は少し高めなのに。
「晩飯の話だけどさ。迷惑じゃなかった?」
「……ううん。……ありがたいよ?」
「そりゃ良かった」
俺なんにもしてないけど。
「あのさ、俺が隣なの知ってた?」
「……ううん」
意外と早く話が進む。こう、噛み合うと相性良いのかも、って気もするな。
「なずな、遅いな」
「……うん」
「なずなとはいつ友達になったんだ?」
「……二週間前には……もう」
「切っ掛けとかは?」
「……話しかけられた」
やはり彼女も内気で受動的なのか。なずな活躍しすぎだな。
「あの……そっちは?」
どうだったか。えっと……最初は……
「初対面は襲われてたなずなと長久の救援だったな」
「……そう」
「それでちょこちょこ会ってたらなんか今に至る」
「……?」
首を傾げる様子。何か違和感でもあったんだろうか?
「なんか気になんの?」
「……うん。……私が知る限り、なずなさんは貴方が日常で何をしていたのか把握してたと思う。……ちょこちょこじゃなくて……週に一、二度は会ってるくらい」
ん?
「え? 何? ストーカー?」
冗談めかして言う。
「……そこまでじゃないけど……ただの知り合い、ってレベルじゃなかったと思う。……親しい友人の日程くらいには把握してたんじゃないかな?」
あれ? ちょっとホラー風味? いや、まあその手の子ではないか。
「それは怖いな」
「……単純に気にかけてただけだと思うけど……その人に危なそうなことが起こりそうなら、警告したり助勢したりするから……あの子」
うん。たしかに。
「今回のこれもその一環かね?」
「……多分」
「お節介なんだよな」
「……私もそう思う」
「将来子離れ出来ない母親になりそうだよな」
「……ふふっ、私もそう思う」
情景が安易に浮かぶ。
なんとなく、撫子ちゃんの方を見ると目が合った。なぜかくすりと笑いが出る。
話の切っ掛けが出来ないとか悩んでたけど、簡単じゃん。共通の話題、こんなものでも良かったんだ。緊張して損した。
それにしても、
「遅いなぁ」
「……うん」
ちょっと心配になってくる。
俺は椅子から立ち上がり、
「たしかめてくる」
「……待って」
向かいの彼女も立ち上がる。
「……私も行く」
部屋には明かりが点いていない。
「あれ? なずな?」
声どころか影もない。
ドアを開けて確認していく。撫子ちゃんも後ろをとことこついてくる。
全部の部屋を確かめ終えた。
「あれ?」
「……やっぱり、人の気配がない」
「え~と、どうゆうこと?」
彼女はそんな俺に返答する前にとことこ冷蔵庫の前に行き、開ける。
「……こんなに手の込んだご飯……作れる?」
そこにはなずなが今日作った夕飯が入っていた。……あれ?
「いや……」
そんな俺の反応を見て、
「……今日何かおかしなこと……あった?」
問いかけられる。
何があった?
変わった夢のこと?
それとも特訓でボコボコにされたこと?
……いや。
これだろう。
「先輩が……ストーカーされてた」
「……じゃあ多分、あの子はその先輩のところにいる」
その声を聞いた瞬間、俺の体が弾かれたように駆け出した! あの馬鹿ッ!
しかしすぐさま目の前の女の子に捕獲される。
「……冷静になって」
腕を捕まれる。勢いが削がれた。
「いや、無理だって!」
こちとら『ソウルイーターで大事なものなくすかもよ(予言的な何か)』って言われてるんだ! それを所有している邪教に関連する可能性がある時点で冷静さなんて期待出来るか!
彼女の手を振り解こうとする。思っていたのより力が強く、振り払えない。
「放せ!」
「うん」
即時放されてつんのめってヘッドスライディング。
床にワックスかけてたっけか? ああ、鈴木がこっそりしてたのかも。
「……分かった? ……冷静になって」
床を滑った果てに頭頂部を壁にぶつけて押さえながら悶える、そんな俺に上方より一言。
こんなことにも対応出来ないで実戦でなにが出来るの?
そんな非難する声。
俺だって分かってる。
でも一刻も早く駆けつけるべきじゃないのか。
さらに一言。
「……私も、行くから」
なずなの武哉に対して嘘をつかない、という点で微妙なものがあるので補足を。
彼女は知らないふりはしますし(最近だと隣室に住んでいた人物が誰か)、彼女の知識自体が間違っている可能性(事実が彼女の知っている常識と異なる場合)も存在します。
また武哉以外と話している時に嘘を吐く可能性はあります。
ただ要点の解説では嘘を吐きませんのでそこは安心して良いはずです。
このルールが破れていた場合、ほぼ間違いなく作者の責任です。
呼び方を間違えていた事例など前例がありますので、やらかしてましたら申し訳ありません。




